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本編

婚姻の儀(前)③

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「お二人とも神々しいほど愛らしく尊くあらせられて、ポプラはこの場に立ち会えたことが幸せでなりません‼ 精霊姫であるケイト様のお側にいられるだけでも光栄至極だというのに……。今日という日にお側にあることが出来る喜び‼ もう思い残すことはありません‼」

 今にも鼻血を吹き出してぶっ倒れるんじゃないかというくらい興奮したポプラさんが、対外的クールビューティーが信じられないほどに頬を緩めて、大袈裟にそう言うものだから思わず笑ってしまった。

「いや、ポプラさんww そんなもう死んでも良いみたいなセリフ止めてくれよ。これからもずっと俺の側にいてくれるんだろ?」

「はい! 勿論です! ケイト様がこのポプラが必要ないと仰っても決してお側を離れません! この命が続く限りケイト様のお側でケイト様の剣と盾となりましょう!」

「ありがとう。ポプラさんこれからもよろしくな」

 俺が握手を求めて手を差し出すと、その手をフルフルと震えながら見つめてからガバッと勢いよく握ると、跪いてまた額に押し当てて騎士の誓いっぽいことをしてきた。
 さすがにもう勝手に騎士の誓いとか魔法の誓いとかは止めてくれって、ポプラさんにもルシアンにも言ってるから形だけだけど、いきなりやられるとドキリとする。

「ポプラ様だけズルいです。私も姫様のお側にずっといさせてください」

 拗ねたような声を出してポワソン少年がそう言って俺の前に跪くから、思わず涙腺が崩壊してしまった。
 ポワソン少年はこっちの世界に来て初めて出来た味方だ。
 俺の方からお願いしたいくらいだというのに、そう言ってくれる優しさに救われる。
 怖い思いも、不自由な思いもさせてしまったのに……。

「ポワソン! そんなのこっちからお願いしたいくらいだよ! いつも俺の側で支えてくれてありがとう! これからも側にいてください」

 感極まって思わず跪くポワソン少年に抱き着くと、ポプラさんが羨ましそうに見ていたけど無視だ。
 弟のような親友のようなこの少年の存在にどれだけ助けられたか。
 ポワソン少年も俺につられて号泣しちゃって、ほんとカオス状態だ。
 なだめるためなのか、混ざりたかっただけなのかは分からないけど、さりげなく俺とポワソン少年をまとめて優しく抱きしめてきたポプラさんが可笑しくて何とか気持ちを落ち着かせることが出来た。

 儀式の前だっていうのに、俺もポワソン少年も瞼が腫れているから、慌ててポプラさんが冷却魔法で冷たくしたタオルを用意してくれて、泣いて喉とかを傷めている俺たちに回復魔法を掛けてくれた。

「姫ちゃん! そろそろ立太子式終わるって! ルシアン王太子になったよ~」

 セインの合図で、いよいよ俺とルシアンの婚姻の儀が始まるのかと、今頃になって緊張してきた。
 さっきまでは何かまだどこか他人事って感じだったから、ちょっと楽しみとか言えてたのに、これからルシアンと結婚するんだと改めて自覚してきて、心臓がバクバク鳴動して落ち着かない。

 婚姻の儀は神殿で行われるんだけど、その様子を魔法で周辺国の王族たちに生中継するんだって。
 それが実質的に精霊姫おれのお披露目になるのだそうだ。
 婚姻の儀が無事に済んだら、各国の代表を迎えてお披露目パーティをするらしい……。
 正直なところ、この間のエリザベス王女の時の立食パーティもしんどかったし、ああいう雰囲気の催しは苦手なんだけど、王太子と結婚するということはそういう機会も増えることだって宰相のおじさんも言っていたし、覚悟を決めるしかない。
 幸い、そういう場面でもポワソン少年やポプラさんは目の届くところにいてくれるらしいから、心強いし頑張れるだろう。

「じゃあ姫ちゃん、そろそろ行こうか~」

 百十センチ位しかないセインに手を引かれて、王太子妃の部屋を出ると王宮の神殿にある転移の魔法陣に乗った。
 緑色の優しい光に包まれて思わず目を瞑ると、セインに目を開けるように言われる。
 魔法陣なんて召喚された時以来だからおそるおそる目を開くと、そこには真っ白で綺麗な建物があった。
 どうやらここが精霊王の神殿らしい。

 俺とセインの後にポワソン少年とポプラさんが転移してきて、神殿の扉を開けてくれた。
 扉を開くと、そこには赤くて長い絨毯が敷かれていて、元の世界でいうところのバージンロードのようだった。
 まあ実際そうなんだけど。
 その絨毯の先には祭壇があって、俺の着ている衣装のヒラヒラを取って、エメラルドグリーンの色の部分が黒に変わっただけの、ほぼお揃いの衣装に包まれたルシアンが待っていた。
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