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本編
鍛練の鬼ポプラ②
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運動場の一角を借りて、俺とポワソン少年とポプラさんの三人は、輪になって順番にボールを蹴ってパスを回すことにした。
二人には手を使わずに足で蹴ったり受け止めたりするという基本ルールだけを教えた。
別に俺はガチな試合がしたいわけではなくて、楽しく体が動かせれば良いだけだからパス練だけで充分だろう。
念のため、俺は魔法が使えないから、魔力を籠めたりするのはなしでとお願いした。
そしたら間髪入れて「当然です‼」という返答が返ってきて、分かってくれているなら安心だと、さっそくパス練をすることにした。
用意してもらったボールは、空気が入っているわけでもないのによく跳ねて蹴り心地も良くて、元の世界のボールとは違うけど楽しく遊べそうだった。
他の騎士たちが鍛練しているのに、端っことはいえ遊んでいても良いのかな? とちょっと思ってしまい、ポプラさんに訊ねれば、「気にしなくて大丈夫です」という返事が返ってきた。
なんでも、このくらいのことで集中力が途切れて鍛練に支障をきたすようでは、騎士として弛んでいるから、さらに鍛練のメニューが追加されるだけであり、俺が気に掛ける必要はないそうだ。
ポプラさんの後任の副団長が決まるまでは、俺の専属騎士と兼任で騎士たちを指導することになっているらしい。
だから、俺たちがいることで気が散っているような騎士たちには「容赦なくペナルティを課しますので!」と爽やかな笑顔で結構エゲツナイことを言っていて、悪いけどちょっとだけ引いた……。
ポプラさんが俺の部活の顧問とかじゃなくて良かったって言う感じだな。
気を取り直して俺たち三人は、さっそく順番にボールを蹴ってみることにしたんだけど、ものすごく楽しかった。
最初は順番にパスを回しただけなんだけど少し慣れてきたから、ランダムで二人のうちどっちに蹴るかは分からないって感じでやったら、二人とも俺にばっかりパスを回すから、もう少し人数が欲しいなと感じた。
それにしてもポワソン少年はともかく、ポプラさんも楽しそうで俺も嬉しくなった。
蹴る時も、「ケイト様! いきますよ~」ってニコニコしているから、目の前のにこやかなこの人が鍛練の鬼と呼ばれているということは、俄かに信じ難い。
そんな俺たちの様子を見た騎士たちがポプラさんの笑顔を見て固まっていて、容赦なく「運動場十周!」と言われていた。
それを聞いて、やっぱり鍛練の鬼というのは事実だったんだなと改めて思った。
グラウンド十周くらい大したことじゃないと思うかもしれないけど、あの砂がぎっしり詰まったタルを腰に括りつけた状態でだからな?
俺とポワソンは小さめのタルで、直線距離でも往復で歩くだけでいっぱいいっぱいだったんだ。
それが曲線距離での十周だもん、相当ヤバイ……。
「貴様ら! 止まってこちらを見る位余裕があるようだな! 今すぐにタルを引いて運動場十周! 文句は受け付けない」
ポプラさんは、俺に話す時の声とはまるで違う人のように低く迫力のある声で、俺たちを見て固まっていた騎士たちに向かってそう言った。
言われた騎士たちは大きな声で「はい!」と返事をすると、すぐにタル引きを始めた。
上司としてのポプラさんってちょっと怖いかも……。
そんなことを考えていたのが顔に出ていたのか、「怖がらせてしまって申し訳ございません」と頭を下げて謝ってきたから、ポプラさんは真面目に仕事してるだけだから、謝る必要なんてないよと伝えて頭を上げてもらった。
そしたら「ケイト様はお優しいですね!」って物凄く感動していて、ポプラさんの俺に対する評価のハードルが異様に低い気がして吃驚した。
じゃなくてもまだそんなに長い付き合いではないけど、ちょっと過保護かも? と思うことが何回かあったし……。
ポプラさんは良かれと思ってしてくれていることだし、俺自身がそれを嫌だと思ったわけでもないから、そのままお礼を言ってスルーしているんだけど。
俺は姫と呼ばれていても健康な十八歳男子なんだし、そんな過保護にしてもらわなくてもいいんだけど……。
でもポプラさんは精霊姫の専属騎士に強く憧れるあまり、過去の精霊姫の専属騎士の自伝なんかを熟読したとかで、信念を持って仕えてくれているみたいだからあんまり強く拒否は出来ない……。
十八歳男子なんて、丈夫だし雑に扱っても全然大丈夫だと思うんだけど、ポプラさんの今までの努力を踏みにじることになりかねないしから何も言えない。
それに何より、俺がちょっとでも抵抗の姿勢を取ると、ありもしない耳と尻尾が下がって見えるんだよ。
俺といえば、ポワソン少年にどことなく雰囲気が似ているチャッピーを飼っていたくらいの犬好きで、犬味のある相手に冷たくなんて出来ないのだ……。
本当に嫌なこと以外はなるべく受け入れてあげたいなんて、七歳も年上の大人相手に思うのも失礼なことだけどな。
俺たちは昼食の時間まで運動場でパス練をしたり、ドリブルしながらパスをしたりして楽しんだ。
食事が終わると、午後はどう過ごすか聞かれたから、久しぶりに厨房にでも入ろうかなと答えると、「では厨房の扉の前で護衛致しますね」と笑顔で言われた。
護衛なんて仰々しいけど、万が一何かあったら大変だということで、直ぐに駆け付けられる距離にいてくれるんだって。
二人には手を使わずに足で蹴ったり受け止めたりするという基本ルールだけを教えた。
別に俺はガチな試合がしたいわけではなくて、楽しく体が動かせれば良いだけだからパス練だけで充分だろう。
念のため、俺は魔法が使えないから、魔力を籠めたりするのはなしでとお願いした。
そしたら間髪入れて「当然です‼」という返答が返ってきて、分かってくれているなら安心だと、さっそくパス練をすることにした。
用意してもらったボールは、空気が入っているわけでもないのによく跳ねて蹴り心地も良くて、元の世界のボールとは違うけど楽しく遊べそうだった。
他の騎士たちが鍛練しているのに、端っことはいえ遊んでいても良いのかな? とちょっと思ってしまい、ポプラさんに訊ねれば、「気にしなくて大丈夫です」という返事が返ってきた。
なんでも、このくらいのことで集中力が途切れて鍛練に支障をきたすようでは、騎士として弛んでいるから、さらに鍛練のメニューが追加されるだけであり、俺が気に掛ける必要はないそうだ。
ポプラさんの後任の副団長が決まるまでは、俺の専属騎士と兼任で騎士たちを指導することになっているらしい。
だから、俺たちがいることで気が散っているような騎士たちには「容赦なくペナルティを課しますので!」と爽やかな笑顔で結構エゲツナイことを言っていて、悪いけどちょっとだけ引いた……。
ポプラさんが俺の部活の顧問とかじゃなくて良かったって言う感じだな。
気を取り直して俺たち三人は、さっそく順番にボールを蹴ってみることにしたんだけど、ものすごく楽しかった。
最初は順番にパスを回しただけなんだけど少し慣れてきたから、ランダムで二人のうちどっちに蹴るかは分からないって感じでやったら、二人とも俺にばっかりパスを回すから、もう少し人数が欲しいなと感じた。
それにしてもポワソン少年はともかく、ポプラさんも楽しそうで俺も嬉しくなった。
蹴る時も、「ケイト様! いきますよ~」ってニコニコしているから、目の前のにこやかなこの人が鍛練の鬼と呼ばれているということは、俄かに信じ難い。
そんな俺たちの様子を見た騎士たちがポプラさんの笑顔を見て固まっていて、容赦なく「運動場十周!」と言われていた。
それを聞いて、やっぱり鍛練の鬼というのは事実だったんだなと改めて思った。
グラウンド十周くらい大したことじゃないと思うかもしれないけど、あの砂がぎっしり詰まったタルを腰に括りつけた状態でだからな?
俺とポワソンは小さめのタルで、直線距離でも往復で歩くだけでいっぱいいっぱいだったんだ。
それが曲線距離での十周だもん、相当ヤバイ……。
「貴様ら! 止まってこちらを見る位余裕があるようだな! 今すぐにタルを引いて運動場十周! 文句は受け付けない」
ポプラさんは、俺に話す時の声とはまるで違う人のように低く迫力のある声で、俺たちを見て固まっていた騎士たちに向かってそう言った。
言われた騎士たちは大きな声で「はい!」と返事をすると、すぐにタル引きを始めた。
上司としてのポプラさんってちょっと怖いかも……。
そんなことを考えていたのが顔に出ていたのか、「怖がらせてしまって申し訳ございません」と頭を下げて謝ってきたから、ポプラさんは真面目に仕事してるだけだから、謝る必要なんてないよと伝えて頭を上げてもらった。
そしたら「ケイト様はお優しいですね!」って物凄く感動していて、ポプラさんの俺に対する評価のハードルが異様に低い気がして吃驚した。
じゃなくてもまだそんなに長い付き合いではないけど、ちょっと過保護かも? と思うことが何回かあったし……。
ポプラさんは良かれと思ってしてくれていることだし、俺自身がそれを嫌だと思ったわけでもないから、そのままお礼を言ってスルーしているんだけど。
俺は姫と呼ばれていても健康な十八歳男子なんだし、そんな過保護にしてもらわなくてもいいんだけど……。
でもポプラさんは精霊姫の専属騎士に強く憧れるあまり、過去の精霊姫の専属騎士の自伝なんかを熟読したとかで、信念を持って仕えてくれているみたいだからあんまり強く拒否は出来ない……。
十八歳男子なんて、丈夫だし雑に扱っても全然大丈夫だと思うんだけど、ポプラさんの今までの努力を踏みにじることになりかねないしから何も言えない。
それに何より、俺がちょっとでも抵抗の姿勢を取ると、ありもしない耳と尻尾が下がって見えるんだよ。
俺といえば、ポワソン少年にどことなく雰囲気が似ているチャッピーを飼っていたくらいの犬好きで、犬味のある相手に冷たくなんて出来ないのだ……。
本当に嫌なこと以外はなるべく受け入れてあげたいなんて、七歳も年上の大人相手に思うのも失礼なことだけどな。
俺たちは昼食の時間まで運動場でパス練をしたり、ドリブルしながらパスをしたりして楽しんだ。
食事が終わると、午後はどう過ごすか聞かれたから、久しぶりに厨房にでも入ろうかなと答えると、「では厨房の扉の前で護衛致しますね」と笑顔で言われた。
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