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本編

魔石の相性②

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 魔石にも相性があって、相性が悪ければ一切魔力を発することが出来ないらしい。
 そして俺に渡した魔石は王子自らが魔力を籠めた物らしくて、それを使いこなせる俺は王子と相性が良いということになるらしい。

 何だよそれ!
 知ってたら拒否したぞ!
 ちょっと嵌められた気がするしムカつくけど、実際問題これがないとトイレだって自分で流せないから、今更手放すことは出来ないけど。
 俺が魔石を握り締めて唸っていると、王子はクスリと笑った。

「魔石の色が薄くなってきたら、また魔力を込め籠めますので遠慮せず仰ってくださいね」

 そう言う王子は悪くはないんだけど、何故か理不尽な敗北感を覚えた俺は、コイツに頼って生きていかなければならないのが悔しくて、無言で席を立つと部屋に戻った。

 この魔石は美しいエメラルドグリーンをしているけど、元々は真っ白い石なのだそうだ。
 魔力を籠めた者の瞳の色が反映されて、魔力が少なくなってくるとどんどん色が薄くなる。
 完全になくなれば元の白い石に戻るらしい。

 言われてみればこの色はアイツの目の色だった。

 ポワソン少年に、この魔石に他の人が魔力を籠めることは出来ないのかと訊ねれば、即答でNOと答えられてしまった。

 真っ白い石に戻れば可能かもしれないけど、色の残った状態で他者の魔力を注ぎ込んでしまえば反発しあって魔石が砕け、最悪暴発したりして危ないらしい。

 それに相性の悪い魔力の籠った魔石だった場合は、反応しないのは勿論だけど体調面にも影響が出てくるらしいから、俺は王子の魔石を使うべきなんだって。

 じゃあセインは?
 セインの魔力なら大丈夫なんじゃないか?
 だって生まれてからずっと一緒にいるんだし。

 セインを呼び出して聞いてみるけど、やっぱり答えはNO。

 お前NOしか言えないのか?

 セインが言うには、精霊の魔力は特殊で魔石に籠めたりは出来ないんだって。

 諦めてこの魔石を使うしかなさそうだ。
 そもそも俺以外の人間は魔石なんかなくても生活出来る訳だから、そこまで魔石の種類も多くないんだって。

 まだ上手く魔力を流せない小さい子どもに(トイレとか電気とかあるからね)親が魔力を込めた魔石を持たせるくらいしか使い道はないらしい。

 あとは夫婦になった二人がお互い魔力を籠めた魔石を加工して指輪にしたものを交換しあって愛を誓い合うんだって。

 ロマンチックか。

 思考がゴチャついてきたけど、俺はこの王子の魔石がないとポワソン少年やセインにトイレを流してもらわないといけないということだ。

 悔しいけど、これは有り難く受け取っておくことにしよう。

 部屋がノックされポワソン少年が対応する。
 ノックの相手はあの執事さんで、俺の体調が良かったら王子と庭の散歩でもどうか聞かれた。

 ずっと部屋に引きこもっているのも退屈だし、この世界で生きていかなければならないなら、色々知るべきだと思うし、王子と一緒っていうのは嫌だけど了承した。

 執事さんの名前はロイさんと言うらしい。
 二十代半ば程だろうか、すごく落ち着いた雰囲気で仕事の出来る男って印象だ。

 もう少ししたら王子が迎えに来るから、外に行く支度をするように言われたから、ポワソン少年に身支度をお願いした。

 服は肌触りの良い綿のチュニック的な物から、艶のある素材の(多分これがシルクって奴だと思う)カッターシャツに着替えて、下もダボッとした物から体にフィットしたストレッチ素材の細身のパンツに穿き替えた。
 室内用の柔らかい皮の靴から膝下までの長い編み上げのブーツに履き替えて身支度は完了。

 身支度が終わるとポワソン少年は「今度はお髪を整えますね」と髪の毛をいじり始めた。
 たかが散歩くらいでそこまでしなくても良いだろうと言うと、悲しそうな顔をするからそれ以上拒むことが出来なくて、諦めた俺はポワソン少年の好きなようにさせることにした。
 耳の上辺りの毛を器用に編み込んでサイドに流している。
 元々前髪はアシンメトリーで片側が長いからその反対側を編み込んでピンで纏めてくれた。
 このピンに付いている石も緑色で、まさかと思うとやっぱり王子の魔石だっと言う。
 ポワソン少年に「愛されてますね」なんて言われても、微塵も嬉しくない。

 緑を身に付けることで、王子の大切な者だということを他者に分からせる効果もあるんだって。
 大切も何も俺は受け入れてないから、こういうのは迷惑でしかない。

 それにそこまでしなくても、こんなどこにでもいるような男にわざわざちょっかいかける様な奴は王子くらいだと思うから必要ないだろ……。
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