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本編

☆【最終話】初夜を迎えて(前)☆①

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 夕食も食べ終わり、俺はポワソン少年によって全身を念入りに洗われた。
 さすがに元の世界のにわかな男同士の知識の様な腸内洗浄はされなかったけど、これでもかっていうほど隅々まで洗われて、舐めても大丈夫だという香油を塗りこめられた。
 塔に籠る前のルシアンの夜這いで浄化魔法があることを知っているから、行為の前に後ろの穴の中は綺麗にしてもらえるんだと思うけど、意識して臨むとなると途端に恥ずかしくなる。

 ――マジに今夜が初夜なんだよな……。

 ポワソン少年が用意してくれた少し薄い生地のワンピースは膝丈で、前かがみになるとパンツが見えてしまうのではと思うほど心許ない。
 しかも穿かされたパンツが、これまた布面積が小さくて……防御力はゼロに等しい。
 堪え兼ねた俺は、思わずいつもの下着が良いと言ったんだけどポワソン少年は「これが初夜の下着ですから!」と言って一歩も譲ってくれなかった……。
 ――何で男の俺がこんなレースの付いた少し透け感のあるエロいパンツを穿かねばならんのか……。
 後ろの部分なんてTバックなんじゃないかってくらい細くて本当に恥ずかしい。
 何ならもう食い込んでいるから、ケツ丸出しなのとほぼ一緒だろう。
 平凡な男の俺がこれを穿いても需要なんてないだろうと思うんだけど、ポワソン少年は良い笑顔で「殿下なら絶対に喜んでくださいます!」と言うし、ルシアンの変態ぶりを思い出せば嬉々として喜びそうだから否定も出来ない。

   ポワソン少年が部屋を出ると取り残されたのは俺一人で、ルシアンが来るのをベッドに座って待つのは、いかにも期待しているみたいで落ち着かない。
 だから、ソファーで座って待とうかと部屋の中をウロウロしながら考えていると、王太子の部屋との続き扉が開いてルシアンが入ってきた。
 入って来たルシアンの服装は、薄手のシャツとラフなズボンといった感じで、俺の恰好と違い過ぎて少しムッとした。
 これは、俺がこの世界で言う『畑』、いわゆる女役だからなのか?
 それでも俺は男なんだから、もう少し考慮して欲しいところだ……。
 今日は……初夜だし我慢するけど、明日以降は断固拒否の意思を示さなければと、密かに心の中で決意を固める。

 いつもの如何にも王族という感じの服装もサマになっているけど、飾りの付いていないシンプルな服を着ても、格好いいというかキラキラしていて思わず見惚れてしまう。
 元の素材がいいから、何を着ても似合うのかもしれないなと感心すらする。
 そんな俺の思考に構うことなく、色気駄々洩れな王子様王太子様は熱の籠った視線を向けてくる。

 ――俺はこれからこいつと初夜を迎えるのか。
 ルシアンのねっとりとした色を感じさせる視線で、改めて意識してしまい顔に熱が集中する……。
 赤面した顔が恥ずかしくて、見られないようにルシアンに背を向けた。

「姫、お待たせして申し訳ありません」

 そう言って近くに来たルシアンに後ろから抱きしめられて、思わずビクリと肩が跳ねてしまった。
 意識しているのがバレたかと思うと、羞恥心がすごくて振り向くことが出来ない……。
 ルシアンは、俺を抱きしめたまま肩口に唇を寄せると軽く吸い付いた。
 ピリッとした痛みを一瞬感じて、キスマークを付けられたのだと気付く。
 そのまま首筋に舌を這わせて耳を優しく食まれた。

「んっ……」

 自然と吐息が漏れてしまうし、背筋がゾクゾクとして膝に力が入らなくなりしゃがみ込んでしまいたくなった。
 今にも腰が抜けてしまいそうになっている俺をルシアンは、膝の裏と背中に腕を回して横抱きにすると危なげもなくベッドの方へ歩き出した。
 俺も健康な男だしそれなりに重いと思うのだけど、ルシアンは重さを感じさせないほど軽々と俺を運び、そっとベッドに降ろしてくれた。

「姫、この日をどれだけ夢に見たことか……。――もう我慢出来そうもありません。どうか私に姫を愛させてくださいませんか?」

 ベットに座るように降ろされた俺の前で跪くと、懇願するように俺の手の甲に唇を押し当てた。
 ――こんなにも俺のことを欲してくれているということが嬉しい。

「ふはっ! ふふふっ」

 少し震えながら必死に懇願するルシアンが愛しくて思わず笑ってしまった。
 俺が声を上げて笑うとルシアンは、真面目に愛を乞う姿勢のどこに笑う要素があったのか分からないと言ったようにポカンとしていた。
 緊張しているのは俺だけじゃないんだと思ったら気が抜けて、やっとルシアンの顔を見ることが出来た。
 潤んだ瞳に見つめられて、俺は口を開いた。

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