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本編
鍛練の鬼ポプラ①
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――ルシアンが食堂に来なくなって三日目の朝を迎えた。
俺の側にはポワソン少年とポプラさんがいてくれるおかげで、一人ではないけれどほんの少しだけ物足りないような気持になる。
でも王女様との関係が上手くいっているのなら、それに越したことはないんだから、俺がとやかく考えることではないんだ。
あれだけ男同士に抵抗があったし拒否していたんだから、これでルシアンが離れるなら良かったじゃないか。
マリオンが朝食の席でポプラさんの姿を見ると、「副団長を専属騎士にするなんてすごいなお前」と言われた。
うん自分でもそう思うし、未だに不相応だと思ってる。
マリオンの話すポプラさんの話は、最初に感じたクールビューティなイメージの通りで、俺の前でのポプラさんとは全然違うようだ。
ポプラさんは自分にも他人にも厳しくて、高位貴族の子息だというのに飾ることなく、地道に努力して異例のスピードで副団長まで登り詰めたそうだ。
本当に完璧な人で、俺の護衛なんてさせちゃって良いのか心配になる。
だって、騎士団の副団長の方が絶対に忙しかっただろうしやり甲斐もあったと思うんだ。
俺に付いていたところで特にやることもないし、人材の無駄なんじゃないかな?
マリオン曰く鍛練の鬼だとか、笑顔を誰も見たことがないとか、冗談が通じないとか散々な言われようだった。
ポプラさんとは昨日からの付き合いだけど、結構終始ニコニコしている気がするし、気遣いの出来る優しいお兄さんという印象だ。
でも言われてみれば、ポワソン少年と話す時なんかは確かに無表情だったかもしれない。
朝食が終わった俺は今日も特にやることがないから、騎士団の訓練所に行くことにした。
動きやすい恰好をしてポプラさんとポワソン少年と一緒に歩いていると、会いたくない相手にまたしても会ってしまった。
今日もルシアンに腕を絡ませて引っ付いて歩いている王女は、これでもかと胸を強調したドレスを着ている。
王女は俺たちに気が付くとさらに強く腕を絡めたように見えた。
そこまでしなくても、二人の邪魔はしないのにと少しムッとしてしまった。
チラリと隣にいるルシアンの方を伺い見ると、一目で分かるほどに窶れていて、疲れが溜まっているのだと思った。
すっと王女様の相手をしていて気疲れでもしてしまったのだろうか?
もしかしたら、また寝られなくなっているんじゃないか?
ポワソン少年にロイさんから食事のこととかを聞き出してもらったところによると、ルシアンは王女様が一緒な手前、自分だけ食べないわけにはいかないから、いつもよりは量は少ないけどしっかり食べているらしい。
食べられているのなら大丈夫かもしれないけど、明らかに疲労が蓄積されているようだし、また倒れたりしないと良いけど……。
ルシアンがこっちに気が付いて近付こうとするんだけど、それを王女様がさり気なく引き留めて阻止している。
俺たちの方から二人の方に行くことは出来るけど、王女様があからさまに来るなオーラを出しているから、不用意に近付くことは出来そうにない。
俺はせめてもの激励で、ルシアンにこっそり口パクで「頑張って」と伝えるとその場を離れた。
ルシアンの捨てられた子犬のような表情には後ろ髪を引かれる。
ルシアンには悪いけど、相手は女の子の方が良いんじゃないかという気持ちは変わらないから、二人を連れてその場を離れると足早に訓練所へと向かった。
「ケイト様、本日はどの様な鍛練をなさいますか?」
「どうしようかな? 俺は体さえ動かせたら何でも良いんだけど、ポワソンも一緒に楽しく出来るようなものが良いかなと思って。あっ! でもポプラさんは自分の鍛練を優先してくれよ?」
「いえ、私はケイト様の護衛ですのでお側におりますよ」
「え~!? でもそれじゃあ、ポプラさんの鍛練にならないんじゃないの?」
「御心配には及びません。私は寝る前に自室で筋力訓練や素振りをしておりますので、問題はありません」
「そう? ポプラさんが良いって言うなら、一緒にいてもらおうかな」
俺がそう言うとポプラさんはにっこり笑って、どんなことをしたいか聞いてくれた。
う~ん、どうしようかな?
昨日は思いっきり走ったから、今日はちょっとボール遊びでもしたいかな。
サッカーみたいな感じでボールを蹴りたいかも。
でもこの世界にボールなんてあるのかな?
身の回りの物を見る限り、ゴム製品とかは存在してなさそうだし、もしかしたらないかもしれないな……。
そう思ったけど、念のためポプラさんに聞いてみる。
中に綿が詰まっている革製の球体に強化魔法を掛けた、良い感じの弾力のボールがあるらしい。
サッカーみたいに細かいルールはないみたいだけど、ボールを奪い合う遊びはあるんだって!
でも皆本気で奪い合うから結構危険で、ケガする人が多いという。
一瞬テンションが上がったけど、ケガ人が続出するような競技は遠慮したい。
取り合えずボールだけでも用意してもらえたら嬉しいと言ったら、ポプラさんは「すぐにご用意します」と近くにいた騎士の人に持ってくるように指示を出していた。
俺の側にはポワソン少年とポプラさんがいてくれるおかげで、一人ではないけれどほんの少しだけ物足りないような気持になる。
でも王女様との関係が上手くいっているのなら、それに越したことはないんだから、俺がとやかく考えることではないんだ。
あれだけ男同士に抵抗があったし拒否していたんだから、これでルシアンが離れるなら良かったじゃないか。
マリオンが朝食の席でポプラさんの姿を見ると、「副団長を専属騎士にするなんてすごいなお前」と言われた。
うん自分でもそう思うし、未だに不相応だと思ってる。
マリオンの話すポプラさんの話は、最初に感じたクールビューティなイメージの通りで、俺の前でのポプラさんとは全然違うようだ。
ポプラさんは自分にも他人にも厳しくて、高位貴族の子息だというのに飾ることなく、地道に努力して異例のスピードで副団長まで登り詰めたそうだ。
本当に完璧な人で、俺の護衛なんてさせちゃって良いのか心配になる。
だって、騎士団の副団長の方が絶対に忙しかっただろうしやり甲斐もあったと思うんだ。
俺に付いていたところで特にやることもないし、人材の無駄なんじゃないかな?
マリオン曰く鍛練の鬼だとか、笑顔を誰も見たことがないとか、冗談が通じないとか散々な言われようだった。
ポプラさんとは昨日からの付き合いだけど、結構終始ニコニコしている気がするし、気遣いの出来る優しいお兄さんという印象だ。
でも言われてみれば、ポワソン少年と話す時なんかは確かに無表情だったかもしれない。
朝食が終わった俺は今日も特にやることがないから、騎士団の訓練所に行くことにした。
動きやすい恰好をしてポプラさんとポワソン少年と一緒に歩いていると、会いたくない相手にまたしても会ってしまった。
今日もルシアンに腕を絡ませて引っ付いて歩いている王女は、これでもかと胸を強調したドレスを着ている。
王女は俺たちに気が付くとさらに強く腕を絡めたように見えた。
そこまでしなくても、二人の邪魔はしないのにと少しムッとしてしまった。
チラリと隣にいるルシアンの方を伺い見ると、一目で分かるほどに窶れていて、疲れが溜まっているのだと思った。
すっと王女様の相手をしていて気疲れでもしてしまったのだろうか?
もしかしたら、また寝られなくなっているんじゃないか?
ポワソン少年にロイさんから食事のこととかを聞き出してもらったところによると、ルシアンは王女様が一緒な手前、自分だけ食べないわけにはいかないから、いつもよりは量は少ないけどしっかり食べているらしい。
食べられているのなら大丈夫かもしれないけど、明らかに疲労が蓄積されているようだし、また倒れたりしないと良いけど……。
ルシアンがこっちに気が付いて近付こうとするんだけど、それを王女様がさり気なく引き留めて阻止している。
俺たちの方から二人の方に行くことは出来るけど、王女様があからさまに来るなオーラを出しているから、不用意に近付くことは出来そうにない。
俺はせめてもの激励で、ルシアンにこっそり口パクで「頑張って」と伝えるとその場を離れた。
ルシアンの捨てられた子犬のような表情には後ろ髪を引かれる。
ルシアンには悪いけど、相手は女の子の方が良いんじゃないかという気持ちは変わらないから、二人を連れてその場を離れると足早に訓練所へと向かった。
「ケイト様、本日はどの様な鍛練をなさいますか?」
「どうしようかな? 俺は体さえ動かせたら何でも良いんだけど、ポワソンも一緒に楽しく出来るようなものが良いかなと思って。あっ! でもポプラさんは自分の鍛練を優先してくれよ?」
「いえ、私はケイト様の護衛ですのでお側におりますよ」
「え~!? でもそれじゃあ、ポプラさんの鍛練にならないんじゃないの?」
「御心配には及びません。私は寝る前に自室で筋力訓練や素振りをしておりますので、問題はありません」
「そう? ポプラさんが良いって言うなら、一緒にいてもらおうかな」
俺がそう言うとポプラさんはにっこり笑って、どんなことをしたいか聞いてくれた。
う~ん、どうしようかな?
昨日は思いっきり走ったから、今日はちょっとボール遊びでもしたいかな。
サッカーみたいな感じでボールを蹴りたいかも。
でもこの世界にボールなんてあるのかな?
身の回りの物を見る限り、ゴム製品とかは存在してなさそうだし、もしかしたらないかもしれないな……。
そう思ったけど、念のためポプラさんに聞いてみる。
中に綿が詰まっている革製の球体に強化魔法を掛けた、良い感じの弾力のボールがあるらしい。
サッカーみたいに細かいルールはないみたいだけど、ボールを奪い合う遊びはあるんだって!
でも皆本気で奪い合うから結構危険で、ケガする人が多いという。
一瞬テンションが上がったけど、ケガ人が続出するような競技は遠慮したい。
取り合えずボールだけでも用意してもらえたら嬉しいと言ったら、ポプラさんは「すぐにご用意します」と近くにいた騎士の人に持ってくるように指示を出していた。
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