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本編

訓練所に行ってみたら専属騎士が出来た①

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 訓練所は思っていたよりも大きく運動場も広かった。
 俺の通ってた小学校も中学校も高校もグラウンドが狭かったから、少し興奮した。
 ちょっとだけ栄えた街に住んでいたから、広い土地を確保するのが難しかったんだと思うけど、運動会なんかもギリギリ出来るかな? くらいの狭さだったんだ。
 目の前にある騎士団の運動場は、俺の母校たちの運動場の軽く倍の広さはありそうだ。

 ここを思いっきり走ったら気持ちいいだろうなぁ。
 これだけでもすごくワクワクしてきた!
 ウジウジ考えていてもどうにもならないし、今は体を動かすことだけを考えよう。

「こちらが精霊姫様であらせられるケイト様だ。本日はルシアン殿下の許可のもと、鍛練に参加なさる。姫様には魔力はなく魔法を使うことは出来ないので、その辺りを踏まえた上で訓練に参加させて差し上げてほしい。剣は危険なので触れさせないようにとの殿下のご指示がでているので、くれぐれも姫様には触れさせぬように!」

 ロイさんが騎士団の人たちを集めて俺の紹介をしてくれたけど、すごい過保護な感じの紹介をされて、なんか恥ずかしかった。
 しかも魔法が使えないのは事実だけど、危ないから剣に触らせるなとかさ、めっちゃ子ども扱いされてる気がする。
 まあ、剣なんて触ったこともなければ本物を見たこともないんだけど。
 それでも騎士団の人たちは快く俺の参加を受け入れてくれた。

「では、くれぐれも頼みましたよ!」

 騎士団の人たちに色々な注意事項を伝えて念押しすると、ロイさんは「殿下ルシアンの元に戻ります」と言って訓練所から出て行った。

 俺の鍛練に付き添ってくれることになったのは、騎士団長のハロルドさんだ。
 ハロルドさんは二メートルはありそうなほど大きくて、見上げないといけないのが辛い。
 見た目とは裏腹にすごく親切で、優しく訓練所の中を案内してくれた。

 まず何がしたいか聞かれたから、最初の目的である『思いっきり走りたい!』ということを伝えた。

 運動場に着くと、ロープに括られた大きなタルを腰に結び付けて走っている人が数人いた。
 何か熱血漫画とかで見た、タイヤを括りつけて走っている絵を思い出すと自然と顔が綻ぶ。
 それを見たハロルドさんが「やってみますか?」と聞いてくれたから、出来るかどうか自信はないけどチャレンジしてみたいとお願いした。
 騎士の人たちよりは小ぶりなタルを腰に結び付けて、ポワソン少年と一緒に走ってみた。
 このタルがまた凄く重くて、ハロルドさんにどうしてか訊ねると、中にぎっしり砂が詰め込まれていると教えてくれた。
 それにどこからどう見ても木製のこのタルを、引きずって走ったりしてタルは壊れないのか聞くと、タル自体に強化魔法を掛けているから大丈夫らしい。

 やっぱり魔法って凄いなぁ!

 タルを引いて走るのは無理だったけど、歩いてだけど何とか向こうまで行って元の場所まで戻ることは出来た。
 スタート地点に戻ると、俺はポワソン少年と一緒に運動場に寝転がった(倒れたともいう)!
 俺たち二人ともハアハア息が荒くて、必死に呼吸をしている姿がおかしくて、お互い顔を見合わせて笑ってしまった。
 いつも髪の毛も服装もきっちりセットして涼しげなポワソン少年の、汗だく姿なんか初めて見たから珍しくて面白い。
 さすがに運動不足の俺たちが、いきなりこんな動きをしたら今日の夜くらいから筋肉痛になりそうだな。
 もうすでにふくらはぎがパンパンだし!
 そう思っていたら、ハロルドさんが回復魔法を掛けてくれて、体のダルさが嘘のように楽になった。

「ありがとうございますハロルドさん。おかげで元気になりました!」

 俺がお礼を言うとハロルドさんは、初めの頃の使用人の人たちと同じように、お礼なんて勿体ないとか『さん』は付けずに呼び捨てをして欲しいと言った。
 だから俺も、以前と同じように説明して納得してもらった。

 ちょうど模擬戦をやるということで、剣の訓練を見学させてもらうことになった。
 俺たちがハロルドさんに連れられて剣の稽古場に入ると、中にいた騎士さんたちが一斉に跪きだしたから、そういうのは止め欲しいとお願いした。
 騎士道的には、王族と同じ立場の俺に忠誠を示すのは当然のことだってハロルドさんは言うけど、俺的にはまだその立場に慣れていないから普通にしてもらいたいということを伝えた。
 じゃないと一緒に過ごしていても気を使っちゃうし。

 剣には触るなと言われているから俺たちは見ているだけだけど、さすが騎士さんたちは皆凄い迫力だった。
 模擬戦では訓練用の刃を潰した剣を使っているらしい。
 それだったら少しくらい触らせてもらえるかと思ったら、ハロルドさんに「ダメですよ?」と先に言われてしまった。

 早速戦っている様子を見せてもらうことにした。
 ただ剣で打ち合ってるように見えて、魔法で肉体強化したり打ち込むときに魔力を籠めて打ったりしているらしく、魔法が使えない俺にはさっぱり分からなかったけれど凄い迫力だった。
 剣と剣が触れ合った瞬間に、お互い弾かれて距離を取ってすぐにまた攻撃に移る。
 目の前で行われている剣の訓練は、俺の想像を遥かに超えて凄い物だった。
 やっぱり魔法って凄い! 
 それを剣術に組み込んで自在に操りながらの訓練は、迫力満点でつい夢中に見入ってしまった。

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