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本編
塔の晩餐会(後)①
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「何で兄貴がケイトの部屋から出て来るんだよ。一人だけ先に来て抜け駆けでもしてたんじゃないだろうな!?」
俺が部屋に入ると先に席に着いていたマリオンが文句を言ってきた。
その言葉でついさっきルシアンにされた不意打ちな手の甲へのキスを思い出して、迂闊にも顔が少し赤くなってしまった……。
その原因であるルシアンは、何事もないような澄ました顔で席に着いていたけど、俺のこの反応から怪しんだらしいマリオンは声を荒げた。
「ケイトの顔が赤いじゃないか! 兄貴と何があった!? 俺だってケイトに触りたいのに!」
「はぁ……、ただ話していただけで特に何もされてないよ。そんな風に変な方向に勘繰るマリオンが爛れてるんだぞ!」
手にキスされたくらいでいちいち赤面していたら先が思いやられるな……。
「本当に何もなかったんだな? ちぇっ、残念~。兄貴がケイトにやらしいことしたんだったら俺もしようと思ったんだけどな~」
明け透けもなく当然のようにマリオンはそう言い放った。
確かコイツ、前に俺の意思を尊重してくれるようなことを言ってなかったか?
まあそれでもやらしいことされちゃったから、結局こいつの本質は俺様で、俺の意思よりも自分の欲が優先なんだろう。
「マリオン、その辺でやめなさい。精霊姫も席に着くが良い。食事を始めようではないか」
王様に窘められたおかげで、流石にマリオンも黙ったから、俺も一呼吸置いてから席に着いた。
最初はいつもの晩餐の様に和やかに食事をしていたんだけど、やっぱり気になって仕方ないのかマリオンが話を蒸し返してきた。
――本当にこの男は自分の欲望に忠実だな……。
「マリオンしつこいな。何にもなかったって言ってるじゃないか! ルシアンが少し早く来たからちょっと喋ってただけだ」
「それならわざわざケイトの部屋に行かなくても、ここで話していたら良かっただろ?」
「はぁ……。普通に考えて、ここは夕食の準備とか配膳とかで邪魔になるじゃないか」
「そんなの構わないだろ! 兄貴とケイトが二人きりになる方が問題だ!」
「何が問題だよ。それに別に二人きりじゃなくてセインも側にいたし、お前が考えているようなことは何にもなかったんだ! 俺はお前のそういう考え方が好きじゃないんだ!」
「俺の考え方?」
何にも分かってないマリオンに俺は説明した。
俺がマリオンに絡まれている間も、王様とルシアンは気にせず食事を続けていて、マリオンのこの感じはいつものことなんだろうなと思った。
俺も流せたらいいんだけど、絡まれてるのが自分だから仕方ない。
「考え方っていうかな、一生懸命働いてくれている人がいるおかげで、俺もお前も快適に生活が出来ているんだってこと、ちっとも分かってないだろ。この夕食だってそうだ。作ってくれる人がいて、運んでくれる人がいて、並べて準備してくれる人がいるんだ」
「そんな当たり前のこと分かってるに決まっているだろ‼」
俺の言葉に腹を立てたらしく、大きな声で叫ぶようにそう言った。
……子供かっ!
溜息を吐きつつも、俺も我慢の限界だったからぶちまけてやった。
「はぁ……分かってないよマリオンは。分かってないから邪魔になっても構わないなんてことを言うんだ。俺もお前もたくさんの人たちのおかげで快適に過ごせているんだ。当たり前のものなんて何一つないんだぞ? 料理に使われる食材一つとってもそうだ。それを作っている人がいて、まとめて卸して売る人やそれを厳選して仕入れる人もいて、厨房に運ばれるまでにもたくさんの人間が関わっている。それは当たり前じゃないんだ。お前は王子として生まれてそれが当然だったのかも知れないけど、その当たり前はたくさんの人の努力や労力によって維持されているものであって、感謝こそすれど軽んじて良いものなんかじゃ決してないんだ。お前はそれを分かっていない!」
俺が一気に捲し立てるように言うと、マリオンは納得していない様子でムスッとしていた。
すると静かに食事をしていた王様が、ガハハハッといきなり笑い出した。
何かおかしいこと言ったかと思ったけど、俺は間違ったことは言っていないから堂々と王様の顔を見る。
俺が部屋に入ると先に席に着いていたマリオンが文句を言ってきた。
その言葉でついさっきルシアンにされた不意打ちな手の甲へのキスを思い出して、迂闊にも顔が少し赤くなってしまった……。
その原因であるルシアンは、何事もないような澄ました顔で席に着いていたけど、俺のこの反応から怪しんだらしいマリオンは声を荒げた。
「ケイトの顔が赤いじゃないか! 兄貴と何があった!? 俺だってケイトに触りたいのに!」
「はぁ……、ただ話していただけで特に何もされてないよ。そんな風に変な方向に勘繰るマリオンが爛れてるんだぞ!」
手にキスされたくらいでいちいち赤面していたら先が思いやられるな……。
「本当に何もなかったんだな? ちぇっ、残念~。兄貴がケイトにやらしいことしたんだったら俺もしようと思ったんだけどな~」
明け透けもなく当然のようにマリオンはそう言い放った。
確かコイツ、前に俺の意思を尊重してくれるようなことを言ってなかったか?
まあそれでもやらしいことされちゃったから、結局こいつの本質は俺様で、俺の意思よりも自分の欲が優先なんだろう。
「マリオン、その辺でやめなさい。精霊姫も席に着くが良い。食事を始めようではないか」
王様に窘められたおかげで、流石にマリオンも黙ったから、俺も一呼吸置いてから席に着いた。
最初はいつもの晩餐の様に和やかに食事をしていたんだけど、やっぱり気になって仕方ないのかマリオンが話を蒸し返してきた。
――本当にこの男は自分の欲望に忠実だな……。
「マリオンしつこいな。何にもなかったって言ってるじゃないか! ルシアンが少し早く来たからちょっと喋ってただけだ」
「それならわざわざケイトの部屋に行かなくても、ここで話していたら良かっただろ?」
「はぁ……。普通に考えて、ここは夕食の準備とか配膳とかで邪魔になるじゃないか」
「そんなの構わないだろ! 兄貴とケイトが二人きりになる方が問題だ!」
「何が問題だよ。それに別に二人きりじゃなくてセインも側にいたし、お前が考えているようなことは何にもなかったんだ! 俺はお前のそういう考え方が好きじゃないんだ!」
「俺の考え方?」
何にも分かってないマリオンに俺は説明した。
俺がマリオンに絡まれている間も、王様とルシアンは気にせず食事を続けていて、マリオンのこの感じはいつものことなんだろうなと思った。
俺も流せたらいいんだけど、絡まれてるのが自分だから仕方ない。
「考え方っていうかな、一生懸命働いてくれている人がいるおかげで、俺もお前も快適に生活が出来ているんだってこと、ちっとも分かってないだろ。この夕食だってそうだ。作ってくれる人がいて、運んでくれる人がいて、並べて準備してくれる人がいるんだ」
「そんな当たり前のこと分かってるに決まっているだろ‼」
俺の言葉に腹を立てたらしく、大きな声で叫ぶようにそう言った。
……子供かっ!
溜息を吐きつつも、俺も我慢の限界だったからぶちまけてやった。
「はぁ……分かってないよマリオンは。分かってないから邪魔になっても構わないなんてことを言うんだ。俺もお前もたくさんの人たちのおかげで快適に過ごせているんだ。当たり前のものなんて何一つないんだぞ? 料理に使われる食材一つとってもそうだ。それを作っている人がいて、まとめて卸して売る人やそれを厳選して仕入れる人もいて、厨房に運ばれるまでにもたくさんの人間が関わっている。それは当たり前じゃないんだ。お前は王子として生まれてそれが当然だったのかも知れないけど、その当たり前はたくさんの人の努力や労力によって維持されているものであって、感謝こそすれど軽んじて良いものなんかじゃ決してないんだ。お前はそれを分かっていない!」
俺が一気に捲し立てるように言うと、マリオンは納得していない様子でムスッとしていた。
すると静かに食事をしていた王様が、ガハハハッといきなり笑い出した。
何かおかしいこと言ったかと思ったけど、俺は間違ったことは言っていないから堂々と王様の顔を見る。
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