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第3章 勇者たちの行方
7.
しおりを挟む魔術師のグループは基本的午前中は基礎体力と武術訓練、午後は魔術師の訓練をしている。
基本的に加算方式を採っており、1時間ごとに点数が足りないものは午後の訓練後にペナルティ判断を受けた時間×15分間のペナルティが発生する。
「おい、遠藤。お前気づいてるか?」
「いやが応にも気づかざるおえない。」
ここ数日、佐々木と遠藤2名とも圧倒的にペナルティが多いのだ。
別に2人とも出来損ないというわけではない。むしろ佐々木は呪い関係、遠藤は時間に関しての魔術に優れていた。
「おまえは初日に煽ったせいで先生から気に入られてないのはわかるが、俺までも同様のペナルティがあるのはおかしい」
遠藤は特に目立ったことはしていない。むしろ真面目を絵に描いたような訓練を受けている。
(もしかして、俺らが計画していることがバレてたりして…)
佐々木は嫌な予感がしていた。
だがそれならもっと色んなやり方があると思うのもある。
あたかも、俺たち2人の能力を上げるようなペナルティばかりだ。。。
現にレベルだけで言ったら、俺と遠藤は他のやつより頭一つ分抜き出ている実感がある。
「少しは、身につきましたか?」
ガルデリオ先生が俺らに問いかける。
遠藤と俺は、念のため無視した。
「あぁ、そうだ。君たちのクラスメイトで三橋 恭子さんいるでしょ?仲良しなんですか??」
(気にしない、気にしない…)
「ちょうど僕が図書館で人を乗っ取る魔術を調べているときに会ったんですよ。とても勉強熱心だと思いましてね。」
(人を乗っ取るだと、何言ってるんだ…)
惑わされてはいけない…敵の罠かもしれない。。
「もしも人を乗っ取れるとしたら、皆さんはどうします??」
俺らを挑発してきてる。
(めんどくせぇ、先生だな)
佐々木は正直イラついていたが、自身の一時のイラつきでこの計画を台無しにさせるわけにはいけない。
遠藤も目をつぶりペナルティに集中する。
(中々に手強いですね…)
何百年もいきているガルデリオからしたら、
たかが10なん年なんてもはや誤差としか感じていなかったが、
(ここまで意志が強いなんて、もっといじめたくなりますね…)
ちょうどペナルティ4時間分の1時間が終了した。
「今日はここまででいいでしょう。お疲れ様でした」
ガルデリオはにっこり笑う。
(くそ、この計画がなきゃ真っ先に殺したい気分だぜ)
(佐々木、それはダメだ。この人についていき力を身につけるまでは…)
佐々木と遠藤は目配せをし、ガルデリオがいなくなったのを確認して、ゆっくりと芝生に倒れこんだ。
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「----ってことがあったんだ」
佐々木も今までのイライラか溜まっていたのか口調が強くなっている。
「私も一昨日だけどガルデリオ先生と接触したよ。魔術の本を探してた、なんか人を乗っ取るって…、正直何言ってるんだろうと思って怖くてその場から逃げるように出て行っちゃった。ごめん。」
まさか三橋のところにも接触があったとは…
「それ!俺らに対しては人を乗っ取れるとしたらって聞いてきやがった。俺らに何かするつもりだぜ」
本当にそうなのだろうか?何か引っかかる。
「そーいえばその先生私にも接触?してきたよ?」
「な、何かされたのか!?」
思わず遠藤が前のめりに聞く。
「人の気配を消すスキルを極めなさいって…すれ違い様に言われたから接触も何もないんだけど、、、」
「な、なんだ、、、」
遠藤が安心している。
案外、分かりやすいやつだな。
他の生徒への接触があるのかどうかにもよるが、それがないとすればあからさまに俺らを狙ってるとしか思えない。
「それとも何か気づいて欲しいとか…?」
思わず考えていたことが言葉に出てしまった。
「なんだそれ…」
「いや、よく分からないんだ。もしも俺たちが邪魔なら、なんらかの手を使って俺達を殺すか訓練不可能にすればいいだけだ。けど、あくまで言葉で俺たちを挑発したりしてきてる。言葉…」
俺の中で何かが繋がった。
けど、まだみんなには話せない。
もっと何か確信がないと…
「あ、こんなところにリスがいる。可愛い」
三橋が思わず駆け寄る。
リスはやけに従順に三橋の方へ近寄ってくる。
(こんなところにリス。夜のタイミングで?)
遠藤はふと思い出したのだ。
《--相手の動向を探るときの方法として、相手のもとにあたかもそこに居そうな動物や物を置くことで、動物の目や物を通じて相手の動向を探るのです。これは初歩的なーーー》
教えてくれたのはガルデリオだった。
「三橋、リスに触るな!!!」
遠藤のことば虚しく、恭子はすでに触っていた。
「え?」
するとリスが小さく爆発した。
沙織が恭子に駆け寄る。
どうやら爆発した際に手を離していたのか怪我はなかった。
爆発したリスを見てみると、煙から紙が出てきた。
《計画する者たちよ
明日20時に地下闘技場にて
我、そこにて待つ。
見守る者より 》
「これって、、、」
「あぁ、確実にバレたな」
「しかも、闘技場ってことは、戦うってこと?」
「ガルデリオにしろエリーゼにしろ、俺らじゃ全員で向かっても死ぬだけだぞ」
「どうするんだ、健二郎?」
俺たちは覚悟を決めざるおえなかった。
メンバー全員を見渡す。
「明日、、、対峙する。
戦う必要はない、話し合えればベストだが、そうでなければ強攻突破しかない。幸い明日は休息日だ。訓練はない。各自集められるだけの荷物を持って集まろう。」
「だと思ったぜ。やっぱりお前はそうでなきゃな」
「変に震えてきた…私おかしいのかな」
「武者震いってやつだろ、俺も同じだ」
「例えどんなことがあろうとも、気持ちでは負けない…」
「俺たちならできる。短い期間だが俺たちはやってきたんだ。立ち向かう勇気はあるはずだ。」
(そして必ず和田と深見に…)
各自拳を握り前に突き出す。
「「「「「俺たち/私たちは生き延びる」」」」」
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リスを送り込んだのはガルデリオだった。
(遠藤君は気づきましたか…)
もともと彼は真面目を絵にしたような出席態度だったからな。
こちらとしては佐々木くんと安藤さんに気づいて欲しかったが、まだまだ訓練が足りてませんね。
とりあえず思っていたより
まともな子達が気づいていた。
だが、姫様が乗っ取られていることまでは気づいていないようだな。単に姫様が悪人となっているようだ。
(明日はどこまで話すか…)
正直悩ましいところであった。
まさか魔人に支配されているなんて知られたら、この国の品位がー…という考えはない。
単純に彼らがパニックにならないか、それだけだった。
まぁ、5人もいれば上出来と考えていたガルデリオは明日全てを話すことを決めた。
少しでも希望を残さねばならない。
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