41 / 52
第3章 勇者たちの行方
6.
しおりを挟む何故こんなところに三橋が?
「てめぇ、密偵か!?」
佐々木が脅すような形をとる。
「ち、違うの!話しを聞いて!」
「コソコソしてるような奴の話なんて聞けるかよ」
まずは落ち着くことが必要だな。
「佐々木落ち着け。三橋なんでお前がここにいる。正直に話してもらおうか」
(まさかこんなにも早くバレるなんて思ってなかった…)
三橋としては単に昨日の今日で彼らが集まるのではないかと思ったからだ。
安藤がこんなにもスキルの習得が早いとは思っても見なかったのだ。
「あたし実は昨日もここにいたの。
たまたま宴会後の暑さを冷ましたくて、歩いてたらここにみんなが集まるのを見て…」
「それでエリーゼ姫にでも情報売って、自分は安泰な地位に行こうってか??」
「ち、ちがう!」
三橋が自身の服装を握り締めながら話し始める。
「私も和田さんに逢いたいの。あの時のことありがとうって伝えたくて…。初めここに転移した時、和田さんと深見君がいなくて、ありがとうも言わずにさよならだって思ってた……。けど、昨日遠藤くんが2人とも生きてるって、私は和田さんに逢いたい。みんなの邪魔はしないようにするから、どうか私も仲間に入れて欲しいの!本来ならこんな形じゃなく、ちゃんとした申し入れが出来れば良かったんだけど、安藤さんのスキルの成長がこんなにも早いなんて思わなかったから…」
正直信じるか信じないか半々だった。
安藤は自分のスキルのすごさに驚いていた。
「俺らが国外逃亡した時には、同じ戦士グループである俺とお前が前衛だ。言ってることわかるか?」
「分かるわ。私も戦う」
「一ついいか。三橋は姫様の言葉はどう思う?」
俺たちが集まったのは、遠藤の予言もあるがみんな姫さんの言葉に違和感を感じたからだった。
三橋もそれが感じ取れるのか、、、
「正直私は姫様の言葉に影響される側だと思う。現に昨日の宴会後まではそうだったから……」
「んじゃ、足-----」
「引っ張ることになるかもしれない!だとしても私はみんなに認めてもらうまでついていくわ。それは変わらない!」
「だとしても、俺らのメリットがねぇ」
佐々木は呆れたようなリアクションを取る。
「俺らは確かに国外逃亡した後は、和田と深見を探す。けどそれは単に会いに行くだけじゃねぇ。俺の予想だが、和田と深見も仲間にして、改めて魔王を倒す」
俺も驚いた。
けど、そうだ。魔王とやらを倒さないとどこで生きていくにしろ俺たちは命を狩られることに怯えて生きていかなければならない。
和田と深見、どちらもどんなステータスを持っていてもあの2人なら、俺らにとって味方になってくれるとそう思ったからだ。
「お前にその覚悟があんのかよ」
それは俺らにも突きつけられている覚悟だった。
------------
三橋のことは一旦保留として
俺たちはとりあえず訓練にこのまま精を出す事にした。
そして、佐々木と遠藤が言っていたガルデリオ先生にも接近する必要があった。
安易に俺らに協力してほしいと言っても多分難しいだろうからなぁ。
そもそもガルデリオ先生自体がエリーゼ姫と繋がっていたらどうする。
本末転倒じゃないか。
正直俺たちは詰まっていた。
それでも何かあるのではないかと思い、2日に1回は集まるようにしたが、進展がないのが現状だった。
------------
「私、この後図書館に行くから今日は集まりに行けないの」
いつのまにか仲間になっていた三橋が言った。
「わかった」
そもそも三橋は剣を振るうほどの体力も筋力もない。持たされている剣も1番細くて軽いものであった。
正直騎士団の先生方も、彼女に対して諦めていた。
それでも彼女は諦めることはなかった。
「私は和田さんに会いたいって気持ちだけでみんなの仲間になったのは本当なの。只の私情。でも、私は諦めたくない。今ここで諦めてしまったら、和田さんに会うことも、その後魔王を倒すことも、何もできなくなっちゃう。。。」
《--勇気に大きいも小さいもないと思うわ。あなたが私に話しかけたのだって立派な勇気だもの。やるだけやってみて、落ち込むのはそれからでもいいんじゃない?そんな三橋さんを私は笑うことはできないよ。--》
恭子は悠理が以前くれた言葉を思い出していた。
(やれることはやらないと。和田さんに顔向けできない…)
恭子は城の中にある図書館へ向かう。
正直、騎士団の先生方に呆れられているのは認識していた。けど自身のスキルに《魔力向上》がある。
(このスキルを使って、魔力を剣に付与できたりしたら。……力をカバー出来るかしら)
魔力の扱い方の本を探す。
恭子は元々図書委員だったので本を探すのは得意だった。
図書館はいたって静かだ。
司書の方がいるのかも知れないが人気はないのは分かりきっていた。
けど、その静かさが恭子は好きだった。
(魔力の使い方…魔力の使い方…)
「何をお探しですか?」
声をかけてきたのはガルデリオ先生だった。
恭子は思わず固まる。
「剣に魔力の付与が出来ないかどうかと思いまして、そう言った類いの本を探していました」
(どうしよう。。みんなに伝えた方がいいのかな…)
けどここで変な動きをして怪しまれるのも困る。まだ10日間しか経ってない、ここで作戦がバレてはいけないのだ。あくまで普通に、あくまで普通に…
「それでしたらこの本はいかがでしょう?」
差し出された本は
確かに魔力をものに付与して使う使い方が書かれていた。
「あ、ありがとうございます」
「君は正直戦士には向いてないが何故戦士として頑張るんだね?」
ガルデリオ先生が私に聞いてくる。
その顔は純粋な感情で聞いてきてるようだった。
「昔の私だったら諦めてたと思います。けど、今は背中を押してくれた子の為に頑張りたいんです。いづれあったときに胸を張って会えるように、私は私で出来ることをするまでです」
「なるほど、、、」
「ガルデリオ先生こそ何故こちらに?」
「単純な調べ物ですよ。人の事を乗っとることができる魔術があるのかどうかのね…私もまだまだ勉強不足ですから」
乗っ取る…?何言ってるのだろうか…?
(こ、こわい。早くここから出よう)
「本探してくれてありがとうございました。
早速読んでみます。失礼しました!」
恭子はその場を立ち去った。
------------
彼女も気づいている側の子だと思ったが、そうではないのかな?
それとも姫様が乗っ取られていることまでは気づいていないのかな?
うーん、、、まだ確証が得れないなぁ。
(僕のグループだと2名ほどたぶん気づいている子がいる。戦士のグループだと2名かな?…隠密者だと1名もしくは2名…、治癒はさっぱりだ、やはり姫さんの防御陣は強いな…)
いづれも早々に目をつけて、フォローできるように動いていかなければならない。
あと2ヶ月を切っている。
その時は迫ってきているのだから。
0
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
英雄に食べられました
まちゃまま
ファンタジー
私は王女ナディアと申します。この度TS転生しました。前世は早死にしましたが、大事な弟妹たちを成人まで無事育てられたので、悔いはありません。
色々はっちゃけた結果、王女という身分を隠し、男性として特殊騎士隊副隊長をしています。王女として出席した夜会で、英雄様に食べられてしまい…?
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
異世界 de ソウルコレクター
白水 翔太
ファンタジー
獅童海人《しどうかいと》は、ふとしたきっかけで命を落とす。死後の世界で神と出会い、あることを依頼された。というか懇願された。それは運命《さだめ》と呼ぶべきかもしれない。異世界に飛び散った自身の魂の欠片。それを回収しなければならなかった。異世界は魂でなければ渡れない。異世界を渡る度に年齢もレベルもリセットされる。スキルやアイテムの一部、そして記憶は持ち越すことができるようだ。俺の繰り返される異世界人生の始まりだった。
第一世界は魔王討伐。第二世界は学園ものとコンテンツが大きく変わっていきます。
世界を幾つ渡れば旅は終わるのか。それは誰にもわからない……。
(旧タイトル:異世界をチートで渡り歩いて魂の欠片を集めよう!)
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
【TS転生勇者のやり直し】『イデアの黙示録』~魔王を倒せなかったので2度目の人生はすべての選択肢を「逆」に生きて絶対に勇者にはなりません!~
夕姫
ファンタジー
【絶対に『勇者』にならないし、もう『魔王』とは戦わないんだから!】
かつて世界を救うために立ち上がった1人の男。名前はエルク=レヴェントン。勇者だ。
エルクは世界で唯一勇者の試練を乗り越え、レベルも最大の100。つまり人類史上最強の存在だったが魔王の力は強大だった。どうせ死ぬのなら最後に一矢報いてやりたい。その思いから最難関のダンジョンの遺物のアイテムを使う。
すると目の前にいた魔王は消え、そこには1人の女神が。
「ようこそいらっしゃいました私は女神リディアです」
女神リディアの話しなら『もう一度人生をやり直す』ことが出来ると言う。
そんなエルクは思う。『魔王を倒して世界を平和にする』ことがこんなに辛いなら、次の人生はすべての選択肢を逆に生き、このバッドエンドのフラグをすべて回避して人生を楽しむ。もう魔王とは戦いたくない!と
そしてエルクに最初の選択肢が告げられる……
「性別を選んでください」
と。
しかしこの転生にはある秘密があって……
この物語は『魔王と戦う』『勇者になる』フラグをへし折りながら第2の人生を生き抜く転生ストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる