上 下
38 / 52
第3章 勇者たちの行方

3.

しおりを挟む

「ふっ、そんなことか」
佐々木が鼻で笑う。

「そんなことかって、、どう言う意味だよ」

「その魔王とやりあって死ぬなんて、転移した時に、既にあの姫さんに言われてたようなもんじゃねーか。」

薄々気づいていた、いやを佐々木は突いてくる。

「魔王討伐なんてここは魔法とかある世界だぞ。それをわざわざ勇者召喚してまでやるってことは、たとえ魔王と相討ちになったとて、自国のものではないから俺たちは死んでも構わないってことだろ??」

「そんな、そんなことは…」

「たしかに俺の思い込みかもしれない。けど、そうじゃないってことも今は証明できない。そうだろ?おい、遠藤。俺らはいつ死ぬんだ?いや、死ぬ予定なんだ?」

「具体的な日にちはわからない。けど、俺たちは2回に分かれるような形で死ぬ」

「それだけじゃ、わかんねーだろ。詳しく喋れよ」

「俺たちはある程度の訓練を積んだ後に、魔王討伐に行かされるんだ。その途中で魔物の軍団に襲撃にあってクラスの1/3が死ぬ。だが、残りのヤツは魔王討伐で死ぬんだ。褒美だのなんだの言ってたが、誰1人としているそれを受け取るものはいないんだ」

「なるほどな、、、」

「それと併せて、深見と和田の映像も頭の中に流れてきたんだ。間違いなく彼らは生きている」

…………………。

佐々木の言うこともわかる。
このままだと、きっと俺らは死ぬだろう。

遠藤の話も本当のことなんだろう。
2は生きている。

「俺は、この国から逃げて2人を探す旅を考えている。正直このまま死を待つなんて嫌だから」

「私も雄一に賛成。こんな縁もゆかりもないところで死にたくない。真っ平御免よ。私は元の世界に戻るためにもここから逃げるわ。」

「俺もお前らの意見には賛成だが、なんか方法があんのかよ。何も考えずにいるわけじゃねーよな??」

「それは正直言って、ない。今はない」

「チッ、本末転倒じゃねーか。」

遠藤と佐々木がヒートアップする。

「俺も2人を探したい」
健二郎が2人に水を差すように話す。

「ただ、今すぐには難しい。あの姫さんの事も分からないまま、この世界のことも知らないままの俺たちに何ができる。運良く国から逃げれたとて、国の外にいる魔物とか敵を蹴散らす程の力がないのが現状だ。」

俺はみんなを見る。

「だから、姫さんが俺らを利用しようとしているのを逆手にとって俺らが彼女を利用する。幸い、魔王討伐は、明日出発では無さそうだし、そうでないとしても基礎的な力を訓練という名目で付けてもらおう。それからでも遅くはないと思うけど、どうかな?」

「健二郎の言う通りだな。俺らも自身のステータスについての理解もねぇし。貰えるもんは貰わねーとな」
佐々木はのってきてくれそうだ。

「私もいづれ此処からでれるなら、協力するわ」

遠藤は考えていた。そして安藤の方をチラッと見る。

「………わかった。健二郎の意見に賛成するよ」

「そして、俺たちはここで結束を固めるべきなんだろうが、訓練中はなるべく別々に行動しよう。姫さんにバレちゃどうしようもないからな」
たしかにあの姫様には何かある。それが分かってない、対応策が取れない以上、変にかたまっていると、怪しまれてしまう。

「あとは、を探そう」

「協力者なんて見つかる可能性あるのかよ」

「分からない。ただ、この国全てを知るわけではないが、共通するのはどこにいっても、反発する人はいるだろう?」

「ふっ、皮肉なことだな。探し方はどうするんだよ」

「それは今後考える…」

佐々木は察したのか、これ以上突かれることはなかった。

「遅くまでここにいると他のクラスメイトから怪しまれる。バラバラに戻ろう」

俺はぶった切るような形で一旦解散させた。

----------

(とんでもないことを聞いてしまったのかもしれない…)

健二郎たちが話し合っている頃、
三橋 恭子は物陰に隠れてその様子を聞いていた。

直ぐにでも飛び入り、彼らの仲間になれば良かったのだろうが、恭子には度胸がなかった。

(遠藤くんの話が本当なら、和田さんが生きている…)

恭子にとってはとても嬉しいニュースだった。生きていたんだ、良かった。

(けど、エリーゼ姫の話が本当なら私たちはただ犠牲となって死ぬだけの人形ってこと?エリーゼ姫はそんな感じではなかった気がするだけど…)

たしかに魔王討伐なんて、本の世界であっても険しい修行や、特別なスキルを持つもの出ないと難しい話なのに。

(転移されてきただけの私たちに本当に倒せるの?)

恭子が色々考えてる間に
彼らの集まりは終わったようだ…。

(あれ、みんないない…)

いつのまにか終わっていた集まりは恭子を残していた。

----------

その日の夜、恭子は寝れずにいた。
先ほどのことが頭から離れないのだ。

エリーゼ姫が用意してくれた部屋は
病院の6人部屋を広くしたような感じだった。
それでも、壁や棚などに装飾があるだけで病室と思わずにいられるのかもしれない。

恭子のベットは奥の窓際のベットだった。
たまたまジャンケンで勝ったのだ。
正直勝った時には、周りの目を気にして内側のベットにしようかとも思ったが、やはり思い切って窓際を選んで良かった。

(空が綺麗…)

和田さんも深見くんも生きている。
その希望があるのなら、私は………しがみついてみたい。

(また和田さんとお話ししたいな)





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~

骨折さん
ファンタジー
 なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。  どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。  そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。  世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。 「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」  来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。  このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?  壁だぜ!? 無理なんじゃない!?  これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である! ※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。 ※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

処理中です...