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第3章 勇者たちの行方
3.
しおりを挟む「ふっ、そんなことか」
佐々木が鼻で笑う。
「そんなことかって、、どう言う意味だよ」
「その魔王とやりあって死ぬなんて、転移した時に、既にあの姫さんに言われてたようなもんじゃねーか。」
薄々気づいていた、いや気づきたくなかったことを佐々木は突いてくる。
「魔王討伐なんてここは魔法とかある世界だぞ。それをわざわざ勇者召喚してまでやるってことは、たとえ魔王と相討ちになったとて、自国のものではないから俺たちは死んでも構わないってことだろ??」
「そんな、そんなことは…」
「たしかに俺の思い込みかもしれない。けど、そうじゃないってことも今は証明できない。そうだろ?おい、遠藤。俺らはいつ死ぬんだ?いや、死ぬ予定なんだ?」
「具体的な日にちはわからない。けど、俺たちは2回に分かれるような形で死ぬ」
「それだけじゃ、わかんねーだろ。詳しく喋れよ」
「俺たちはある程度の訓練を積んだ後に、魔王討伐に行かされるんだ。その途中で魔物の軍団に襲撃にあってクラスの1/3が死ぬ。だが、残りのヤツは魔王討伐で死ぬんだ。褒美だのなんだの言ってたが、誰1人としているそれを受け取るものはいないんだ」
「なるほどな、、、」
「それと併せて、深見と和田の映像も頭の中に流れてきたんだ。間違いなく彼らは生きている」
…………………。
佐々木の言うこともわかる。
このままだと、きっと俺らは死ぬだろう。
遠藤の話も本当のことなんだろう。
2人は生きている。
「俺は、この国から逃げて2人を探す旅を考えている。正直このまま死を待つなんて嫌だから」
「私も雄一に賛成。こんな縁もゆかりもないところで死にたくない。真っ平御免よ。私は元の世界に戻るためにもここから逃げるわ。」
「俺もお前らの意見には賛成だが、なんか方法があんのかよ。何も考えずにいるわけじゃねーよな??」
「それは正直言って、ない。今はない」
「チッ、本末転倒じゃねーか。」
遠藤と佐々木がヒートアップする。
「俺も2人を探したい」
健二郎が2人に水を差すように話す。
「ただ、今すぐには難しい。あの姫さんの事も分からないまま、この世界のことも知らないままの俺たちに何ができる。運良く国から逃げれたとて、国の外にいる魔物とか敵を蹴散らす程の力がないのが現状だ。」
俺はみんなを見る。
「だから、姫さんが俺らを利用しようとしているのを逆手にとって俺らが彼女を利用する。幸い、魔王討伐は、明日出発では無さそうだし、そうでないとしても基礎的な力を訓練という名目で付けてもらおう。それからでも遅くはないと思うけど、どうかな?」
「健二郎の言う通りだな。俺らも自身のステータスについての理解もねぇし。貰えるもんは貰わねーとな」
佐々木はのってきてくれそうだ。
「私もいづれ此処からでれるなら、協力するわ」
遠藤は考えていた。そして安藤の方をチラッと見る。
「………わかった。健二郎の意見に賛成するよ」
「そして、俺たちはここで結束を固めるべきなんだろうが、訓練中はなるべく別々に行動しよう。姫さんにバレちゃどうしようもないからな」
たしかにあの姫様には何かある。それが分かってない、対応策が取れない以上、変にかたまっていると、怪しまれてしまう。
「あとは、協力者を探そう」
「協力者なんて見つかる可能性あるのかよ」
「分からない。ただ、この国全てを知るわけではないが、共通するのはどこにいっても、反発する人はいるだろう?」
「ふっ、皮肉なことだな。探し方はどうするんだよ」
「それは今後考える…」
佐々木は察したのか、これ以上突かれることはなかった。
「遅くまでここにいると他のクラスメイトから怪しまれる。バラバラに戻ろう」
俺はぶった切るような形で一旦解散させた。
----------
(とんでもないことを聞いてしまったのかもしれない…)
健二郎たちが話し合っている頃、
三橋 恭子は物陰に隠れてその様子を聞いていた。
直ぐにでも飛び入り、彼らの仲間になれば良かったのだろうが、恭子には度胸がなかった。
(遠藤くんの話が本当なら、和田さんが生きている…)
恭子にとってはとても嬉しいニュースだった。生きていたんだ、良かった。
(けど、エリーゼ姫の話が本当なら私たちはただ犠牲となって死ぬだけの人形ってこと?エリーゼ姫はそんな感じではなかった気がするだけど…)
たしかに魔王討伐なんて、本の世界であっても険しい修行や、特別なスキルを持つもの出ないと難しい話なのに。
(転移されてきただけの私たちに本当に倒せるの?)
恭子が色々考えてる間に
彼らの集まりは終わったようだ…。
(あれ、みんないない…)
いつのまにか終わっていた集まりは恭子を残していた。
----------
その日の夜、恭子は寝れずにいた。
先ほどのことが頭から離れないのだ。
エリーゼ姫が用意してくれた部屋は
病院の6人部屋を広くしたような感じだった。
それでも、壁や棚などに装飾があるだけで病室と思わずにいられるのかもしれない。
恭子のベットは奥の窓際のベットだった。
たまたまジャンケンで勝ったのだ。
正直勝った時には、周りの目を気にして内側のベットにしようかとも思ったが、やはり思い切って窓際を選んで良かった。
(空が綺麗…)
和田さんも深見くんも生きている。
その希望があるのなら、私は………しがみついてみたい。
(また和田さんとお話ししたいな)
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