上 下
24 / 52
第2章 俺と幼馴染と異世界

13.

しおりを挟む

エルミンさんとは、ここでお別れだ。

このあとは日用品メインだから
流石にそこまで付き合わせるのはおこがましい。

「付き合ってもらっちゃって、すみませんでした。ありがとうございました」
「助かりました」

「大丈夫ですよ。今度来るときのお姿が楽しみです。ではまたギルドで」

エルミンさんはギルドに戻っていく。

俺たちは地図を見て近い〔アルシーブ〕に向かう。

カラン、カラン

「いらっしゃいませ~」

小柄な女性が出迎えてくれた。

「あの、カンパレリのシュリアさんからの紹介でこちらにしました。化粧品とか洗剤とか日用品類を買いに来たのですが…」

「シュリアさんからのご紹介ですね!お安くさせていただきますよー!ご希望の品物でしたら、右側の棚がメインになりますね。品名のタグを触って頂くと効能とかわかりますのでご参考ください。」

俺は洗濯用の洗剤や歯磨きとかを
悠理は化粧品類、スキンケアとかを吟味していく。

カラン、カラン

「こちらに、ローリエ殿はいるか。」

しっかりとした体格の男が入ってきた。

「店長は今作業中です。何か御用でしょうか?」

「《リービッヒ国により召喚された勇者御一行向け》に治癒ポーション、魔力増幅ポーションが欲しくてな。この店にある品全て頂こう!」

「それは困ります。この国には、他の冒険者さんもいるのです。買い占めはご遠慮ください」

「お前は魔王討伐に行かれる勇者殿の足を引っ張ると言うのか、たかが小娘が!」

男は彼女に手を挙げる。

「影踏み!」

俺も彼女も殴られる!?そう思った時に、男の動きが止まる。

「な、なんだ!?」

「ここで聞いてたらなんとも理不尽だったので思わず使ってしまいました。今回は、彼女の方がごもっともだわ。勇者だかなんだか知らないけど、自分たちが召喚したなら自国で対応しなさいよ。それに安易に暴力を振るうなんて、人として最低だわ!」

悠理が暗殺者のスキルから《影踏み》を使って男の動きを止めだのだ。いかにも喧嘩が始まりそうな雰囲気が漂う。
俺はとっさに店員である彼女をお店の後ろの方に誘導する。

(どうすれば平和的解決が望めるんだ…)

相手がどんな人なのかもわからない状況で俺は頭をフル回転させていた。



「お店が騒がしいと思ったら、一介の冒険者に聖職者が動き止められてるなんて滑稽だねぇ」

キセルをふかしながら彼女は奥の部屋から出てきた。

「ロ、ローリエさん」
店員の彼女が彼女に抱きつく。

「私がこの店アルシーブの店長、ローリエだけど?私になんの御用だい?聖職者殿」

「勇者殿のためにポーション類を頂きたいのだ。いくらになる。金ならあるぞ」

いまだ悠理が影踏みしているため男は顔のみ動かせていた。

ローリエがキセルをふかして男に問う。
「ポーションを売るのは構わないけど、全品持ってかれちゃこっちも商売が続かなくなっちまうよ。それに、勇者御一行の中には治癒を使えるものもいるんじゃないのかい??そこまでポーションも量が必要になるとは思えないけどねぇ」

「治癒を使えるものもまだレベルが高くないため、保険として用意をすることとなったの
だ!早くこの術を解いてもらおうか!!」

「お前さんたちがここ2-3日で買い占めているのは知っていたが、ここまでとは。そこまでしてお前さんのところの治癒能力者は頼りないのだな。聞いててため息がでるわ。そんなんで魔王討伐に行って勝てるのかい?」
ローリエが鼻で笑う。

ローリエは悠理のところまで歩いて行き、小声で「まだ踏ん張れるかい?」と聞いた。悠理は首を縦に振った。

「私はね、、これが全てだと思っている。あんたが欲したものの代価としては、勇者御一行殿の器は小さすぎる。申し訳ないが帰ってもらおうか」

「なん……だと……」

「中級のポーションくらい、お前の国にも作れるやつがいるだろう?お前さんたちはそれで十分だ。それともお抱えの魔術師たちがリービッヒ国からというのは本当なのかな?」

聖職者である男は唇を噛んでいた。
もしかして、ローリエさんは言ったのか??

「お前らに頼らずともほかにアテはある。失礼する。」

悠理は影踏みを解除した。
男が攻撃をしてくることはなかった。

やっと落ち着いた。

「変なところを見せちまったよ。すまないねぇ。」

「い、いえ。けど、追い出して大丈夫でしたか?あとで報復とか。。」

「あぁ、あとで防御の術式をこの建物に入れておくから大丈夫だよ。お前さんたちシュリアの紹介だろ、今回の迷惑かけた分も兼ねてさらに値引きするようにするから、好きなの選びな」

ローリエさんはまたキセルをふかして奥の部屋にこもった。

俺たちは、必要な品を揃えて会計を済ます。

「悠理、どうした?」
「ローリエさん、本当になのかな?」
「どうしてだ?本人が言ってだろ、魔術師だって」
「なんか、さっき肩に触れられた時に魔力を感じたんだけど、あの人の魔力はなんか感じがした」
「俺にはよくわかんねぇけど、それって個性とかと同じで、一人一人違うんじゃねーの?」
「分かんない。。けど、違ったのは確か。」

そういうもんなのかね。

とりあえず俺たちは一通りの買い物を済ませて、カンパレリに戻った。

時間はもう17時になろうとしていた。
夕飯にちょうどいい時間だろう。

---------------

あの子彼女の肩に手を置いた際に、あの子は私の魔力を感じていた。

(気づかれちまったかな…)

ローリエは魔女である。しかも純潔だ。
魔女の中でも純潔か否かで魔力のが異なる。
魔女は基本的に子をなす訳ではない、むしろ魔力によって性欲というものは皆無に等しいのだ。
ただ、唯一の方法として魔女の元で修行を積み、大魔神アルカナとの契約によって死んだものがという存在になれるのだ。

あの子も純潔の魔力は認識したことがないだろうから、違和感はあっても魔女だとは思わないだろう。

(勘がいい子じゃないことを願うだけだね…)

今日はカンパレリの夕飯が食べたい気分だ。
早々に仕事を終わらせて宿へ戻るとするか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

英雄に食べられました

まちゃまま
ファンタジー
私は王女ナディアと申します。この度TS転生しました。前世は早死にしましたが、大事な弟妹たちを成人まで無事育てられたので、悔いはありません。 色々はっちゃけた結果、王女という身分を隠し、男性として特殊騎士隊副隊長をしています。王女として出席した夜会で、英雄様に食べられてしまい…?

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

豪傑の元騎士隊長~武源の力で敵を討つ!~

かたなかじ
ファンタジー
東にある王国には最強と呼ばれる騎士団があった。 その名は『武源騎士団』。 王国は豊かな土地であり、狙われることが多かった。 しかし、騎士団は外敵の全てを撃退し国の平和を保っていた。 とある独立都市。 街には警備隊があり、強力な力を持つ隊長がいた。 戦えば最強、義に厚く、優しさを兼ね備える彼。彼は部下たちから慕われている。 しかし、巨漢で強面であるため住民からは時に恐れられていた。 そんな彼は武源騎士団第七隊の元隊長だった……。 なろう、カクヨムにも投稿中

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...