上 下
19 / 52
第2章 俺と幼馴染と異世界

9.

しおりを挟む

真司の足音が1階へ向かっていくのを確認して
シンシアの方へ体を向ける。

「そんな顔をしなくとも、いいじゃないですか。
あなた達は僕らの仲間なのですから」

シンシアはにっこりと笑ってはいるが、
(この人、目が笑っていない…)

悠理には分かるのだ。
現実の世界で小さい頃に見ていた笑顔にそっくりだったから。

「冒険者は誰にでも平等と聞いてます。良くも悪くも。
先程の理由くらいじゃ、シンシアさんから話すことないと思いますけど」

「私が呼び止めた理由は、あなたがよくわかっているでしょう」

空気が変わった。いや、シンシアが変えたのだ。

女神の加護を知られてしまっている以上、
いろんなルートを考えたとて結果は最悪だった。

あの時の迂闊だった自分のバカ。

「結論から申し上げると、
その力我々の為に使うという選択肢はありますか?」
「ないですね」
悠理は間髪入れずに答えた。

この力は真司のためにと女神に要求したのだ。
そもそも他の人のために使うほど悠理は優しくはなかった。

「まぁ、いいでしょう。いずれ使がくるかもしれませんからね。
その時を素直に待つといたしましょう」

シンシアはにっこり笑った。

もう部屋を出てもいいかな。。。。
真司を待たせている。はやく帰りたいのだ。

それに気づいたのか、シンシアが
わざと思い出したかのように続けた。

「あぁ、そういえばこの国この街にはがいるそうですよ。
お会いできるといいですね」

「魔女を知っているの!?」

悠理には願ってもない情報だった。
魔術は自力でも能力を高めることができるが
魔術師か魔女に師を仰ぐことで習熟スピードが高まるのだ。
魔術師は自身の得意とする項目を持つ者に限られるが
魔女はオールラウンダーであり、師弟契約を結んだ弟子に
自身の魔力を与えて育てていくことになるため、感覚で学ぶ部分の魔術の技能が
スムーズに身につけられると女神から聞いてた。

闇の魔術は、正直会得している人は少ないなかで
それでも早くに闇の魔術を会得しなければならない悠理にとって
冒険者ギルドの次に優先事項として欲していた情報だった。

「私もだいぶ昔ですが魔女と師弟契約を結び魔術を会得した人間です。
たしかは、、、、まぁいいや。
をお持ちのあなたなら案外容易く出会えるかもしれないですしね」

どうやらこれ以上の情報は教えてはくれなさそうだ。

「加護がなくとも、出会ってみせますので
ご心配は無用です」

悠理は強く扉を閉め、部屋から出て行った。

(ジュベルさん、あなたって人は、、、、、
本当に凄い子たちが来てしまいましたよ)

シンシアは笑ってみせた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「案外早かったのな、もっとかかるかと思ったよ」
「セクハラとかの話だったから、早々に切り上げてきた」

真司は椅子から立ち上がり
悠理の後ろに回り込む。

そして、、、、、
「じゃ、じゃーん」

後ろから冒険者のプレートをつけたのだ。

〔冒険者 ユーリ   ランクE級〕

「これでお揃いだな!」

真司の屈託のない笑顔が悠理の癒しになった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エルミンさんからギルドのルールを教えてもらい。(俺は2回目)

今日宿泊する予定の宿をどうするか相談していた。
正直この街の中で転々とするのはめんどくさい。
ある意味その宿を拠点として生活の基盤を築いていきたいのだが
なんせこの世界に来たペーペーがそんな宿を知る由もなかった。

「それなら、カンパレリは如何ですか?」
エルミンさんが提案してくれた。

「初級冒険者さんには結構優しい宿だと思いますよ?
ご主人はちょっと気難しい方ですが料理が美味しくて
泊まらないけど食事を食べていく行商さんとかもいるくらいです」

よし、そこにしよう!

「基本宿は前払いですが、お金はありますか?」

「村から持ってきたのがここに…」

悠理、女神様からお金をそんな風に言うのか。。。

「これだけあれば十分、むしろどれだけ貯めていたんですか…」

悠理が四次元ポケットから取り出した巾着には
ずっしりと金貨が入っていた。

え、この金貨すごい価値なの??

「正直、俺ら価値がわかっていなくて
金貨1枚どれくらいの価値があるのでしょうか。」

エルミンがびっくりしていたが
丁寧に教えてくれた。

《お金の価値》

銅貨1枚 = 日本円         1円
銀貨1枚 = 銅貨1000枚   日本円 1000円
金貨1枚 = 銀貨      10枚   日本円10,000円
白金貨1枚 = 金貨 1000枚 日本円10,000,000円

うひゃーすげえ額。。。。

まぁ、エルミンが問題ないと言っていたし
巾着から溢れていたお金を戻して
俺たちは宿屋カンパレリを目指した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~

骨折さん
ファンタジー
 なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。  どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。  そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。  世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。 「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」  来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。  このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?  壁だぜ!? 無理なんじゃない!?  これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である! ※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。 ※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

処理中です...