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第1章 プロローグ

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【悠理の予知夢】


ここ数日私は同じ夢を見ている。


とある昼休みのクラスに、突然魔法陣が現れて異世界へ飛ばされる。
クラスごとだ。
飛ばされた先は宮殿のような景色の部屋。
そして魔王討伐を王様から言われるのだ。
君たちは勇者であり、この国を守るものたちだと。褒賞はたんまり用意している。帰ってきた暁には美人の姫様、皇太子様、貴族達との結婚、そして国民からの光り輝く眼差し、華やかな毎日が待っていると。

それを聞いたクラスメイトたちは最初は疑うも、まんまと国王の煽てに乗っかり魔王討伐へ向かう。

何も知らない私と真司もクラスメイトたちと同様に魔王討伐へ行くのだが、行く道で魔物たちの襲撃にあい、何人ものクラスメイトが死んでいく。
それでも歩みを止めるなと魔王討伐には犠牲はつきものであると、お前たちは我らの用意する褒美が欲しくないのか。
国王は責め立ててくる。
疲れもあってか、反対する感覚が薄れ、みんな進んでいくことになる。

やっとの事で魔王の元へ向かうもクラスメイトの半分は亡くなっていた。
それでも力絶え絶えに戦い、私は真司を失う。

目の前で、だ。
魔王が攻撃として打ってきた氷柱の大きいもので心臓近くを刺された真司。私は治癒を試みるも時すでに遅し。

最後に真司は私の頬に自分の手を当てる。私はその手を自分の手で覆いかぶす。そして、私の目を見て何かを伝えるように口を動かすも、その言葉は私は分からなかった。

口から血を吐いて真司は亡くなる。
頬に当てていた真司の手もいつのまにか冷たくなって、私は涙を流しながら真司に謝るのだったーーー


そう、これは夢。夢なのだ。

だが今回の夢は今までと違う。



≪この未来を…未来を変えて…≫

誰かの声がする。女の人のようだ。

誰、誰なの??

≪貴方ならできる。未来を守って…≫

未来って何?

誰の未来を守れと言うの…?

真司のいない未来なんて、、、真司のいない…?

≪時は満ちた……、あとはオウマガヤ国王が唱えるだけ…≫

うるさい、うるさい…!

私に世界を守ることなんか出来るわけない。
こんな落ちこぼれに出来るわけないじゃない。

≪リービッヒを止めて、彼らは操られている……≫

なんなのよ。操られてるって。

リアルな映像よこしてきて、どんな嫌がらせよ。



まって、、、リアルな映像、、!
もしかして、これは予知夢…?

だとして、
もしも本当になるのなら、真司はどうなるの?

もしかして真司はーーー…


「真司は死なせない……!」

布団から飛び起きるような形で目を覚ます。

それはとある朝4:30のこと。

私は冷や汗を大量に流して目が覚めた。

「こんな未来が待っているというの……?」

ここは自分の部屋。
毎日見ている部屋だ。

夢の中は違う景色だった。
草原や森、中世ヨーロッパを思わせる城や街並みを夢の中では見ていたからだ。
そして私たちの服装も普段の服装ではなかった。
あからさまに夢の中で身につけていた素材が普段の服装と違うという感覚があった。


どういうこと??

悠理には理解しがたい夢だった。


けど確かにわかったのは、真司が予知夢の世界では死ぬということ。
あの死にそうな真司を抱きかかえた感触も、どんどん冷たくなる体温も、血を吸って服が赤く滲む光景も被せるように掴んでいた真司の手も全部リアルに感じたのだ。

自分の目の前で、

「真司が…死んでしまう…」

私の頭はこの事をはっきりと理解した。

もしも今まで通りに私の予知夢が実現する前提だとしたら、私たちはこの世ではない世界でとんでもない体験をする。

私の頭は理解した、そして。

真司を守らないと。
死なせてはいけない。

そう、解釈したのだ。

誰だかわからないが、夢の中で
時は満ちたと言っていた。

もう、時間はない。
真司が死ぬまでのタイムリミットが始まっている。

私は布団から起きて
勉強机に置いてある自分のPCを起動させる。
なぜPCを起動させたかはわからない。 
直感だ。

(はやく、はやく立ち上がってよ。)

心が急かすのとは反対に
PCの立ち上がりはいつもより遅く感じた。

いつもならすぐ起動して、
デスクトップに行くはずのPCが
真っ黒の画面で止まっている。

(どういうことなの!?)

すると
[月が満ちるとき、未来は変わる]

デスクトップに浮かび上がる文字。

私は思わず尻餅をついた。

もしかして、これが。。。


私はすぐにカレンダーで確認した。

自分の部屋のカレンダーには月の満ち欠けが書いてある。

次の満月はいつ…??

今日は月の頭の頃、次の満月までは

「あと10日間…!!」

私と真司とクラスメイト達は異世界に転移する。


真司だけは、真司だけは。。。


あと10日、できることをする。

そのまんまの未来なんて起こさせてたまるか。




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