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2章

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夢を見た。懐かしい人が出てくる夢。

中学3年の体育祭。3学年女子のダンスはチアリーディングで、家庭科の授業で作ったコスチュームをお揃いで着ていた。

更衣室には大量に人が溢れてたから、私は自分の教室に向かった。体操着に着替えて、最後のリレーに行かなきゃならないし。
あの時の私は焦ってたんだよね。
背中のファスナーがブラに引っ掛かって、でも背中の見えない私は降りないファスナーにバタバタしていた。

急いで入った教室に、すでに人が居たことも日当たりの良い窓側の床に寝転んでいたことも。バタバタする私の気配に気付いて起きて、私の背後に来たことも。

突然塞がれた口。背中に触れる他人の身体。耳の辺りに人の気配があって、耳元に直接言葉を囁かれた。
「騒ぐなよ、外してやるから」
縦に頷くと、口を塞いでいた手のひらは離れて行って、背中で手がもぞもぞして、コスチュームが滑りだした。すぐに胸元を手で押さえていたら、右肩に口を押し付けられてた。
でもそれは一瞬で、その人はそのまま教室を出た行った。


体育祭が終わって日常が戻ったけど、私には大変な日常だった。
着替えを助けて?くれた人は隣のクラスに居た。じゃあなんでうちのクラスに居たのが謎だけど、このクラスは端にある。
隣のクラスは渡り廊下から丸見えになるから、うちのクラスでサボってたんだろうか。
とにかく隣のクラスだ、廊下に出るとうっかり遭遇する。
背中を見られた恥ずかしさで無意識に顔が赤くなる。
でも、向こうはこちらも見やしない。
意識してるのは私だけ。
私も意識しないように、意識しないように、姿が見えると知らん顔してたけど、不意討ちに遭遇するとダメだった。
一気に顔が赤くなるのが自分でもわかった。
意識してる、なんて思われたくない。
向こうは意識してないのに、こっちだけ、なんていや。

残りの中学生活は、用がある時だけ廊下に出るようにして、廊下に居る時は居るか居ないか緊張を強いられていた。



高校に入って、もちろん学校は違うし、自宅も離れてるし遭遇することもなかった。
高校に行ってから出来た友達に誘われて同じバイトを始めて、その友達は、バイトしてからテストの点が下がって辞めちゃったけど、私はそのままバイトを続けてた。
高校からの帰り道にあるファミレスは、少しお値段高めなメニューで時給も良かったから辞める理由もなかったし。


だけど、バイトを始めて5か月目、入り口にお客様が居たから案内に動いて、私は固まった。
手前に居た女性2人の後ろに男性2人居て、何名か訪ねると、前の2人が「4名です」って可愛く答えてくれた。
テーブル席に移動して、メニューを渡しながら震える声で「ご注文がお決まりましたら、こちらのボタンでお知らせ下さい」と伝えて、早足で下がる。


なんで?なんで?なんで!?
中学からは遠いのに。
駅から近いとか、理由がない。偶然来るにはおかしいじゃん。
心臓はドキドキして、足は震えてる。
とでもじゃないけど、注文聞いて提供なんて出来ない。
同じスタッフの子に休憩時間を変えてもらって逃げたつもりだけど。
休憩終わっても4人は居た。
それから数時間居て、彼らの近くを通るのが苦痛だった。


そして困ったことに彼らはほぼ毎週、酷い時は週2日ペースで来店していた。
2回目にはとうとう「長谷川ここでバイトしてたんだ~」と話掛けられ、「久しぶりだね」なんて返事をするはめになっていた。
それ以上の会話は求められなかったけど、知り合いなんてほぼ来ないファミレスでの毎週来店は異様だった。
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