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4 聖人候補の領地経営
719 組分け試験
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719
アーティファクトを使った強い暗示による子供たちへの度重なる洗脳が終了すると、そこからいよいよ魔法教育が始められることになった。
そこでまず、現在の能力を確認する試験が行われた。
とはいっても、実際試験を受けたのは私ひとりきりだったが……なぜなら、他の子たちは普通の家の子なので、魔法力があっても魔法を習うような環境にはなく、魔法力はあってもいまはまだ何もできないからだ。
だが、私は貴族の末端にいたため、少々の魔法教育は受けているという設定なので、最初から試験を受けることになったわけだ。〝魔法力宿る髪〟という優秀な魔法使いの象徴のような緑の髪色に加え、魔法力二千五百という触れ込みの私に対する期待値は高いようで、多くの先生たちが試験をする私を見にきていた。
ちなみに、ここでは詰襟の黒服を来た男たちを〝先生〟と呼ぶ。女性もいるが、彼女たちはシスターのような服装をしており彼女たちのことは誰でも〝お母様〟と呼ぶよう言われた。
誘拐してきた子供たちを洗脳した上、見知らぬ女たちを母と呼ばせる……そんな疑似家族のようなことをさせる彼らに私は虫唾が走り、その欺瞞に震えるほどの怒りを覚えていたが、かろうじて耐えていた。彼らの洗脳教育の最低さに苛立ちが募る私の後ろでは、いつも見えないよう隠れながらセーヤとソーヤが《念話》を使い、
〔メイロードさま、顔がこわばっていますよ〕
〔メイロードさま、演技……無垢な子供の演技中でございますよ〕
〔はい、私は女優!〕
〔はい、私はすっかり過去を忘れた子供!〕
と、私が我を忘れて爆発しないよう励ましてくれていた。本当にふたりには感謝だ。
まずは定番の〝的当て〟から試験は始まった。
ここでは、私が優れていることを見せる必要があるため、きっちり当てていきたいが、さすがに私の開発したピストルのような《流風弾》は強力すぎて使えないので、《氷槍》という氷の槍を打ち込む魔法を使うことにした。氷属性の攻撃魔法としては《氷球》の上位魔法となるこの魔法を、十歳の子供が使えるのはかなり珍しいらしいので、あえてこれを選んだ。
私は《的指定》で正確に、一呼吸置きながらひとつずつ確実に置かれた十二本の的の中心を射抜いて見せた。
「これは素晴らしい、実に素晴らしい!」
試技が終わると、いつの間にか最前列で見ていた〝院長先生〟が少し興奮気味に私のそばに駆け寄り、とろけるような笑顔で私に向かいこう言った。
「あなたは〝聖騎士〟になるべく生まれてきた特別な子供です。あなたには異例ですが五の組での修行から始めてもらいましょう。十分にその力があると思いますよ。あなたは今日から〝五の十二〟と名乗りなさい」
その言葉に周囲の〝先生〟たちが沸き立つ。
「おお! これは大変名誉なことですよ。最初から五組に配属されるとは! この稀有な才能を十二分に伸ばさねばなりませんよ!」
「〝五の十二〟といえば、五組でも十二席という高い地位です。個室も与えられるのですよ。院長先生に感謝して、更なる高みを目指すのです」
どうやら私は先ほどの魔法で〝期待の新人〟というポジションをなんとか手に入れられたようだ。作戦が成功したことに安堵した私は、頭を下げ膝を少し折って貴族風に挨拶した。
「ありがとうございます。精進いたします」
そのあとも、いくつか試験を受けたが、ここでの設定では私は水・土系の魔法にしか適性がないことにしているので、すべてそのどちらかの系統の魔法を使って対処し〝先生〟たちを満足させる結果を出した。
(こちらの手の内はなるべく明かしたくないからね。全属性の基礎魔法をコンプリート済みなんてことは絶対に教えないよ)
そしてその日から、これまで一緒に過ごしてきた子供たちとも離れ、しっかりした清潔な寝具のベッドが備え付けられた小さな個室のある寮へと移動させられた。こちらの寮では食堂のメニューも味付けこそひどいものだが、果物や野菜といった副菜もちゃんとある体裁の整ったもので、サンクたちからの聞いていた通り、魔法力や技術によって明らかな待遇の差を感じさせるものになっていた。
私はその日、《地形探査》を使って慎重に寮内を捜索し、結界魔法などの使用に関して探知がなされているかどうかを探った。だが、やはり軍部などの大きな組織でないと、そうした常時発動の大きな広域魔法の維持は難しいのか、その形跡を見つけることはなかった。
そこで、私は自分の部屋に《物理結界》と《魔法結界》《音声遮断結界》を張り、《輝鳴玉》入りの人形を机の上に置くと《無限回廊の扉》を開き、久しぶりにマリス邸のキッチンへと戻った。
「あーーー!! ご飯、ご飯食べたい、作りたーい!!」
結局、ここのところほとんど食べることができなかった寮のマズ飯のせいで、かなり空腹の私はソーヤと一緒に盛大にお料理を開始。セーヤは慣れた手つきでサッと私の髪をアップにして、動きやすくしてくれる。
料理を始める前に私は《伝令》を使ってグッケンス博士とセイリュウにイスの自宅に戻っていることを伝えてから、張り切って料理を開始した。
「やっぱりこうでないとね!」
アーティファクトを使った強い暗示による子供たちへの度重なる洗脳が終了すると、そこからいよいよ魔法教育が始められることになった。
そこでまず、現在の能力を確認する試験が行われた。
とはいっても、実際試験を受けたのは私ひとりきりだったが……なぜなら、他の子たちは普通の家の子なので、魔法力があっても魔法を習うような環境にはなく、魔法力はあってもいまはまだ何もできないからだ。
だが、私は貴族の末端にいたため、少々の魔法教育は受けているという設定なので、最初から試験を受けることになったわけだ。〝魔法力宿る髪〟という優秀な魔法使いの象徴のような緑の髪色に加え、魔法力二千五百という触れ込みの私に対する期待値は高いようで、多くの先生たちが試験をする私を見にきていた。
ちなみに、ここでは詰襟の黒服を来た男たちを〝先生〟と呼ぶ。女性もいるが、彼女たちはシスターのような服装をしており彼女たちのことは誰でも〝お母様〟と呼ぶよう言われた。
誘拐してきた子供たちを洗脳した上、見知らぬ女たちを母と呼ばせる……そんな疑似家族のようなことをさせる彼らに私は虫唾が走り、その欺瞞に震えるほどの怒りを覚えていたが、かろうじて耐えていた。彼らの洗脳教育の最低さに苛立ちが募る私の後ろでは、いつも見えないよう隠れながらセーヤとソーヤが《念話》を使い、
〔メイロードさま、顔がこわばっていますよ〕
〔メイロードさま、演技……無垢な子供の演技中でございますよ〕
〔はい、私は女優!〕
〔はい、私はすっかり過去を忘れた子供!〕
と、私が我を忘れて爆発しないよう励ましてくれていた。本当にふたりには感謝だ。
まずは定番の〝的当て〟から試験は始まった。
ここでは、私が優れていることを見せる必要があるため、きっちり当てていきたいが、さすがに私の開発したピストルのような《流風弾》は強力すぎて使えないので、《氷槍》という氷の槍を打ち込む魔法を使うことにした。氷属性の攻撃魔法としては《氷球》の上位魔法となるこの魔法を、十歳の子供が使えるのはかなり珍しいらしいので、あえてこれを選んだ。
私は《的指定》で正確に、一呼吸置きながらひとつずつ確実に置かれた十二本の的の中心を射抜いて見せた。
「これは素晴らしい、実に素晴らしい!」
試技が終わると、いつの間にか最前列で見ていた〝院長先生〟が少し興奮気味に私のそばに駆け寄り、とろけるような笑顔で私に向かいこう言った。
「あなたは〝聖騎士〟になるべく生まれてきた特別な子供です。あなたには異例ですが五の組での修行から始めてもらいましょう。十分にその力があると思いますよ。あなたは今日から〝五の十二〟と名乗りなさい」
その言葉に周囲の〝先生〟たちが沸き立つ。
「おお! これは大変名誉なことですよ。最初から五組に配属されるとは! この稀有な才能を十二分に伸ばさねばなりませんよ!」
「〝五の十二〟といえば、五組でも十二席という高い地位です。個室も与えられるのですよ。院長先生に感謝して、更なる高みを目指すのです」
どうやら私は先ほどの魔法で〝期待の新人〟というポジションをなんとか手に入れられたようだ。作戦が成功したことに安堵した私は、頭を下げ膝を少し折って貴族風に挨拶した。
「ありがとうございます。精進いたします」
そのあとも、いくつか試験を受けたが、ここでの設定では私は水・土系の魔法にしか適性がないことにしているので、すべてそのどちらかの系統の魔法を使って対処し〝先生〟たちを満足させる結果を出した。
(こちらの手の内はなるべく明かしたくないからね。全属性の基礎魔法をコンプリート済みなんてことは絶対に教えないよ)
そしてその日から、これまで一緒に過ごしてきた子供たちとも離れ、しっかりした清潔な寝具のベッドが備え付けられた小さな個室のある寮へと移動させられた。こちらの寮では食堂のメニューも味付けこそひどいものだが、果物や野菜といった副菜もちゃんとある体裁の整ったもので、サンクたちからの聞いていた通り、魔法力や技術によって明らかな待遇の差を感じさせるものになっていた。
私はその日、《地形探査》を使って慎重に寮内を捜索し、結界魔法などの使用に関して探知がなされているかどうかを探った。だが、やはり軍部などの大きな組織でないと、そうした常時発動の大きな広域魔法の維持は難しいのか、その形跡を見つけることはなかった。
そこで、私は自分の部屋に《物理結界》と《魔法結界》《音声遮断結界》を張り、《輝鳴玉》入りの人形を机の上に置くと《無限回廊の扉》を開き、久しぶりにマリス邸のキッチンへと戻った。
「あーーー!! ご飯、ご飯食べたい、作りたーい!!」
結局、ここのところほとんど食べることができなかった寮のマズ飯のせいで、かなり空腹の私はソーヤと一緒に盛大にお料理を開始。セーヤは慣れた手つきでサッと私の髪をアップにして、動きやすくしてくれる。
料理を始める前に私は《伝令》を使ってグッケンス博士とセイリュウにイスの自宅に戻っていることを伝えてから、張り切って料理を開始した。
「やっぱりこうでないとね!」
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