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4 聖人候補の領地経営
629 妖精の主
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629
そこから、数時間にわたって土地神様の解呪は続いた。
その間、私たちは解呪の済んだものたちを、段階的に開放していくことにした。一気に開放するより、徐々に魔物と動物も分けつつ開放していったほうが、混乱や危険が少ないと判断したからだ。
魔物たちの誘導は“守護妖精”たちがうまくやってくれた。魔物とはいっても、一部の凶暴性の強いものを除けば、呪いがなければのべつ幕なしに暴れまわるわけではない。それに解呪されたいまは、《聖魔法》の影響で非常に穏やかな状態だ。“守護妖精”たちは、魔物たちとも意思の疎通がある程度可能らしく、状況もわからぬままぼんやりとしている彼らを、それぞれの生息域へと、上手に誘導していってくれた。
先ほどまで目を血走らせて襲い掛かってきていた動物たちも、呪いを解かれたいまは、きょとんとしていて状況はまったくわかっていない状況。こちらもうまく“守護妖精”たちがサポートし、それぞれの住む本来の場所へと帰された。
そうやって捕縛されていたすべての生き物を返し終わり、最後の呪いを解いた土地神様とともに聖地の湖に戻ってきた。
〔お疲れさまでした、土地神様〕
〔妖精たちもメイロードも、よくやってくれたな〕
セイリュウも土地神様をねぎらう。
〔こちらこそご助力に感謝申し上げます。この土地を守る尊き方のお力を賜り、この困難を乗り越えることができました〕
〔とんでもございません。神の眷属であられる聖龍様のお力がなければ、あの邪悪な“厭魅”を封じるすべはございませんでした。深く深く御礼申し上げます〕
ほっとした表情でセイリュウに礼を言う土地神様は、ますますかわいらしく、思わず抱きしめたくなってしまう気持ちを抑えるのに私は大変だった。
〔そこな娘にも随分と助けられてしまったの。礼を言う〕
土地神様のお姿に癒されまくってポケ―ッとしていた私は慌てて、お礼を言われるほどのことはしていないと伝えた。
〔いえいえ、そんな……お気になさらないでください。私もこの土地に対して責任を負う領主なのです。むしろ、この窮地を教えてくださった土地神様には感謝しかありません〕
私がそういうと、土地神様はカカと笑って、そうだったな、と言う。
〔こんな娘が領主とはな……だが、メイロード、お主ならばこの土地を大事にしてくれよう。おお、忘れるところであった。そなたには礼をせねばならんな〕
なにか褒美をと土地神様は考えてくれたが、私は特にほしいものはないと答えた。お金はもう使いきれないほどあるし、もしもっと必要になるようなら稼ぐだけだ。
(これ以上のお金が必要な状況とか、考えられないけど……)
〔そうか、財宝もいらんか……〕
どうやら、どこぞの財宝の埋まった場所でも教えてくれるつもりだったらしい土地神様は、しばらく困っていたが、あるものを思いついたらしく、私に手を出すように言った。
すると差し出した手の上に、光とともに土地神様のかわいらしいペンダントヘッドのついたネックレスが現れた。
(うわぁ、か、かわいい!!)
手にすると、うっすらと光を放つ、小さな土地神様をかたどったキュート極まりないそのペンダントヘッドの可愛さに、私はメロメロだった。
〔……こんなものしか与えられんが、何かの役に立てておくれ〕
私はペンダントに夢中で、土地神様の言葉を正確に聞き損ねたが、あとからセイリュウに聞けばいいと思い、とにかくお礼を言った。
気が付けばもう一昼夜が過ぎようとしていた。さすがに帰らないと街の人たちが心配するだろう。
「レン、それじゃ私は帰るわね。これからはあなたが指導者となって“守護妖精”たちを導いていってね」
私の言葉にレンがキョトンとしている。
「なにをおっしゃられているのですか、メイロードさま。私たちの導き手はメイロードさまでございますよ」
「え? なんで?」
「湖で神様は私たちのことをメイロードさまにお頼みになりました。あの時から、私たちはメイロードさまの配下でございます」
確かに、あのときあの水の彫像の女神様に、頼んだとは言われたが、それがこれから先ずっとだとは思いもしなかった。
「いやいや、それは……」
困惑する私に、セイリュウが別にここに残れと言われているわけではないと説明してくれた。
「あの湖に降り立たれた方も、ここにいつもいるわけではないだろう? メイロードは彼らが困ったときに手を貸してあげて、たまに様子を見に行ってあげればいいんだよ」
(それぐらいなら私にもできるかもしれないけど……まぁ、レンとは《念話》もできるから、いつでも連絡はとれそうだね。まぁ、いいか)
もう私がこの森を守る妖精たちの上に立つことは、レンたちには決定事項のようなので、私はあきらめてその任務を受けることにした。これで、期せずして私は自前の妖精族の軍隊を持ってしまったことになる。
彼らは食事もできるが基本的には森の精気によって生きているので、兵糧の心配もいらず、神との契約によって結ばれているので、いつも変わらぬ忠誠を捧げてくれる、ある意味最高の兵士だ。しかも飛べるので、機動力が高い。
(まぁ、彼らには引き続き森の管理をしてもらいましょう。“厭魅”もいなくなったし、これからは安心して管理ができるよね)
そして五千以上の“守護妖精”たちに見送られ、土地神様とともに、私はソホスの祈祷所へと《無限回廊の扉》を通って戻ったのだった。
そこから、数時間にわたって土地神様の解呪は続いた。
その間、私たちは解呪の済んだものたちを、段階的に開放していくことにした。一気に開放するより、徐々に魔物と動物も分けつつ開放していったほうが、混乱や危険が少ないと判断したからだ。
魔物たちの誘導は“守護妖精”たちがうまくやってくれた。魔物とはいっても、一部の凶暴性の強いものを除けば、呪いがなければのべつ幕なしに暴れまわるわけではない。それに解呪されたいまは、《聖魔法》の影響で非常に穏やかな状態だ。“守護妖精”たちは、魔物たちとも意思の疎通がある程度可能らしく、状況もわからぬままぼんやりとしている彼らを、それぞれの生息域へと、上手に誘導していってくれた。
先ほどまで目を血走らせて襲い掛かってきていた動物たちも、呪いを解かれたいまは、きょとんとしていて状況はまったくわかっていない状況。こちらもうまく“守護妖精”たちがサポートし、それぞれの住む本来の場所へと帰された。
そうやって捕縛されていたすべての生き物を返し終わり、最後の呪いを解いた土地神様とともに聖地の湖に戻ってきた。
〔お疲れさまでした、土地神様〕
〔妖精たちもメイロードも、よくやってくれたな〕
セイリュウも土地神様をねぎらう。
〔こちらこそご助力に感謝申し上げます。この土地を守る尊き方のお力を賜り、この困難を乗り越えることができました〕
〔とんでもございません。神の眷属であられる聖龍様のお力がなければ、あの邪悪な“厭魅”を封じるすべはございませんでした。深く深く御礼申し上げます〕
ほっとした表情でセイリュウに礼を言う土地神様は、ますますかわいらしく、思わず抱きしめたくなってしまう気持ちを抑えるのに私は大変だった。
〔そこな娘にも随分と助けられてしまったの。礼を言う〕
土地神様のお姿に癒されまくってポケ―ッとしていた私は慌てて、お礼を言われるほどのことはしていないと伝えた。
〔いえいえ、そんな……お気になさらないでください。私もこの土地に対して責任を負う領主なのです。むしろ、この窮地を教えてくださった土地神様には感謝しかありません〕
私がそういうと、土地神様はカカと笑って、そうだったな、と言う。
〔こんな娘が領主とはな……だが、メイロード、お主ならばこの土地を大事にしてくれよう。おお、忘れるところであった。そなたには礼をせねばならんな〕
なにか褒美をと土地神様は考えてくれたが、私は特にほしいものはないと答えた。お金はもう使いきれないほどあるし、もしもっと必要になるようなら稼ぐだけだ。
(これ以上のお金が必要な状況とか、考えられないけど……)
〔そうか、財宝もいらんか……〕
どうやら、どこぞの財宝の埋まった場所でも教えてくれるつもりだったらしい土地神様は、しばらく困っていたが、あるものを思いついたらしく、私に手を出すように言った。
すると差し出した手の上に、光とともに土地神様のかわいらしいペンダントヘッドのついたネックレスが現れた。
(うわぁ、か、かわいい!!)
手にすると、うっすらと光を放つ、小さな土地神様をかたどったキュート極まりないそのペンダントヘッドの可愛さに、私はメロメロだった。
〔……こんなものしか与えられんが、何かの役に立てておくれ〕
私はペンダントに夢中で、土地神様の言葉を正確に聞き損ねたが、あとからセイリュウに聞けばいいと思い、とにかくお礼を言った。
気が付けばもう一昼夜が過ぎようとしていた。さすがに帰らないと街の人たちが心配するだろう。
「レン、それじゃ私は帰るわね。これからはあなたが指導者となって“守護妖精”たちを導いていってね」
私の言葉にレンがキョトンとしている。
「なにをおっしゃられているのですか、メイロードさま。私たちの導き手はメイロードさまでございますよ」
「え? なんで?」
「湖で神様は私たちのことをメイロードさまにお頼みになりました。あの時から、私たちはメイロードさまの配下でございます」
確かに、あのときあの水の彫像の女神様に、頼んだとは言われたが、それがこれから先ずっとだとは思いもしなかった。
「いやいや、それは……」
困惑する私に、セイリュウが別にここに残れと言われているわけではないと説明してくれた。
「あの湖に降り立たれた方も、ここにいつもいるわけではないだろう? メイロードは彼らが困ったときに手を貸してあげて、たまに様子を見に行ってあげればいいんだよ」
(それぐらいなら私にもできるかもしれないけど……まぁ、レンとは《念話》もできるから、いつでも連絡はとれそうだね。まぁ、いいか)
もう私がこの森を守る妖精たちの上に立つことは、レンたちには決定事項のようなので、私はあきらめてその任務を受けることにした。これで、期せずして私は自前の妖精族の軍隊を持ってしまったことになる。
彼らは食事もできるが基本的には森の精気によって生きているので、兵糧の心配もいらず、神との契約によって結ばれているので、いつも変わらぬ忠誠を捧げてくれる、ある意味最高の兵士だ。しかも飛べるので、機動力が高い。
(まぁ、彼らには引き続き森の管理をしてもらいましょう。“厭魅”もいなくなったし、これからは安心して管理ができるよね)
そして五千以上の“守護妖精”たちに見送られ、土地神様とともに、私はソホスの祈祷所へと《無限回廊の扉》を通って戻ったのだった。
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