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4 聖人候補の領地経営
625 呪いの集落
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625
「セイリュウと私がいれば何とかなるよね?」
私の言葉に、いつものようにのんびり微笑んでセイリュウが答えてくれる。
「ああ、大丈夫だよ、メイロード。奴は僕が必ず封じるから心配しないで……」
先ほどの怒りを解いて、すっかり普通にしているセイリュウだが、今回の〝厭魅〟のやり口には、かなり怒っているようで、もう臨戦態勢なのが見て取れる。
「とは言っても、このままの状態じゃ、ヤツに近づくのは面倒だね。おそらく〝厭魅〟の瘴気に蝕まれた魔物や動物はヤツに近づけば近づくほど増えるし、そのすべてが襲ってくるだろう。でもね……彼らの多くは〝厭魅〟から離せば、遠からず《狂化》は解けるし普通に戻れるんだから、無闇に殺してしまいたくはないんだ」
セイリュウと私、それに湖に現れた神様が増やしていってくれた数千に膨れ上がった〝守護妖精〟たちがかかれば、おそらく、襲いかかる魔物たちを力技で撃破しても〝厭魅〟へとたどり着けるだろう。
だが、そんな殺戮は〝厭魅〟が喜ぶだけのような気がする。いまの彼らは意思を奪われている。私たちに襲いかかってくる《狂化》の呪いを受けた彼らもまた被害者なのだ。
「でも、まぁ、相手の望み通り、とりあえず戦う気満々に見せておきましょう……あとは出たとこ勝負ですね」
〝厭魅〟については、出会った経験があることもあって、私とセイリュウはその扱いにはそう悩んではいない。森に被害を出さずに、きっちりあいつを封じ込めて解呪できる場所まで運んでしまえば一件落着だ。
こちらには、こうしたトラブルの専門家であるセイリュウがついている。〝厭魅〟との直接対決は、この神の眷属に任せれば大丈夫だろう。
戦い方の基本方針を決めた私は〝守護妖精〟たちに、武器を持ち戦うつもりで隊列を組んでくれるよう頼んだ。ひとつの意思を共有しているという彼らは、完璧な統制が取れていて、仕事が非常に早い。すぐに必要な武器や装備を揃えて、あっという間に戦支度を完了してくれた。
ずらりと並ぶ彼らに大声を張り上げるのも恥ずかしいので、私は〝守護妖精〟の代表として、レンにこれからの注意と指示を伝え、皆に共有してもらうことにした。
「これから戦うことにはなるけれど、絶対に〝厭魅〟の影響の強くなるような間合いには入らないでね。むしろ、うまくいなして、魔物や動物たちを〝厭魅〟から引き離すの。できる?」
「了解いたしました。あれの近くにいるものは、ほとんど判断力を失っておりますので、うまく挑発すれば容易に戦うことだけに気を取られるはずです。そのまま、本格的な戦闘に入らずにおいて良いのですか?」
レンは私の役に立てるなら、戦いをいとうつもりはないと強く進言してきたが、私はそれを制した。
「レン……彼らはあなたたちの敵じゃない。それを忘れてはダメよ。たとえいまは《狂化》の呪いを受けて我を忘れてはいても、それでも彼らもこの森の一部でしょう? だから、彼らを極力傷つけたくはないの。すべてを救えるとは言わない。それでも、できる限り救いましょう。それが〝守護妖精〟の仕事だとは思わない?」
私の言葉に、レンをはじめとする〝守護妖精〟たちは、一斉に涙目になっている。
「その通りです。おっしゃる通りでございます! 私たちまでも、あの呪いの塊の瘴気を浴びていたのでしょうか……ああ、不甲斐なさに涙が出ます。私たちは誇り高きこの聖なる山々を守る者。私たちは彼らを救わねばなりません!
森とこの森に生きるすべてのものたちを守るため、なにがあろうとも最後まで私たちはメイロードさまのご指示に忠実に従います!」
私の前に膝をつき、キラキラした瞳で見上げるレンの、そして数千の妖精たちの尊敬のこもったまなざしにちょっとたじろぎつつも、できるだけ落ち着いた態度を私も貫く。指揮官が動揺するのは良くないだろうから。
「あ……ありがとうね、レン。よろしくお願いします」
〝守護妖精〟たちの結束と意欲は強まり、いつでも飛び出せる環境は整ったようだ。
ざっくりとした作戦も決まり、人員の確保もできた。だがこのまま突っ込む気はない。まずは現状を正確に把握するために、偵察に行かなくては。
地上の偵察はセーヤとソーヤに任せて、私は空から状況を確認することにした。セイリュウは自分で飛んでいくそうなので、別角度からの偵察をお願いした。
(とりあえず、アタタガ・フライに乗って《迷彩魔法》それに呪いに対して有効な《退魔結界》そして《物理結界》を展開すれば大丈夫かな)
〝厭魅〟の間近まで近づいたことのあるレンとともに、その禍々しい石のある場所へ近づくと、徐々に魔物や動物の数が増えてきているのが確認できた。
そこは不気味な咆哮もあちこちから聞こえ、打ち捨てられたままの動物たちの死体もそこら中に散乱する地獄絵図だった。
(思った以上に〝厭魅〟の勢力は拡大中してる……これはひどい)
「セイリュウと私がいれば何とかなるよね?」
私の言葉に、いつものようにのんびり微笑んでセイリュウが答えてくれる。
「ああ、大丈夫だよ、メイロード。奴は僕が必ず封じるから心配しないで……」
先ほどの怒りを解いて、すっかり普通にしているセイリュウだが、今回の〝厭魅〟のやり口には、かなり怒っているようで、もう臨戦態勢なのが見て取れる。
「とは言っても、このままの状態じゃ、ヤツに近づくのは面倒だね。おそらく〝厭魅〟の瘴気に蝕まれた魔物や動物はヤツに近づけば近づくほど増えるし、そのすべてが襲ってくるだろう。でもね……彼らの多くは〝厭魅〟から離せば、遠からず《狂化》は解けるし普通に戻れるんだから、無闇に殺してしまいたくはないんだ」
セイリュウと私、それに湖に現れた神様が増やしていってくれた数千に膨れ上がった〝守護妖精〟たちがかかれば、おそらく、襲いかかる魔物たちを力技で撃破しても〝厭魅〟へとたどり着けるだろう。
だが、そんな殺戮は〝厭魅〟が喜ぶだけのような気がする。いまの彼らは意思を奪われている。私たちに襲いかかってくる《狂化》の呪いを受けた彼らもまた被害者なのだ。
「でも、まぁ、相手の望み通り、とりあえず戦う気満々に見せておきましょう……あとは出たとこ勝負ですね」
〝厭魅〟については、出会った経験があることもあって、私とセイリュウはその扱いにはそう悩んではいない。森に被害を出さずに、きっちりあいつを封じ込めて解呪できる場所まで運んでしまえば一件落着だ。
こちらには、こうしたトラブルの専門家であるセイリュウがついている。〝厭魅〟との直接対決は、この神の眷属に任せれば大丈夫だろう。
戦い方の基本方針を決めた私は〝守護妖精〟たちに、武器を持ち戦うつもりで隊列を組んでくれるよう頼んだ。ひとつの意思を共有しているという彼らは、完璧な統制が取れていて、仕事が非常に早い。すぐに必要な武器や装備を揃えて、あっという間に戦支度を完了してくれた。
ずらりと並ぶ彼らに大声を張り上げるのも恥ずかしいので、私は〝守護妖精〟の代表として、レンにこれからの注意と指示を伝え、皆に共有してもらうことにした。
「これから戦うことにはなるけれど、絶対に〝厭魅〟の影響の強くなるような間合いには入らないでね。むしろ、うまくいなして、魔物や動物たちを〝厭魅〟から引き離すの。できる?」
「了解いたしました。あれの近くにいるものは、ほとんど判断力を失っておりますので、うまく挑発すれば容易に戦うことだけに気を取られるはずです。そのまま、本格的な戦闘に入らずにおいて良いのですか?」
レンは私の役に立てるなら、戦いをいとうつもりはないと強く進言してきたが、私はそれを制した。
「レン……彼らはあなたたちの敵じゃない。それを忘れてはダメよ。たとえいまは《狂化》の呪いを受けて我を忘れてはいても、それでも彼らもこの森の一部でしょう? だから、彼らを極力傷つけたくはないの。すべてを救えるとは言わない。それでも、できる限り救いましょう。それが〝守護妖精〟の仕事だとは思わない?」
私の言葉に、レンをはじめとする〝守護妖精〟たちは、一斉に涙目になっている。
「その通りです。おっしゃる通りでございます! 私たちまでも、あの呪いの塊の瘴気を浴びていたのでしょうか……ああ、不甲斐なさに涙が出ます。私たちは誇り高きこの聖なる山々を守る者。私たちは彼らを救わねばなりません!
森とこの森に生きるすべてのものたちを守るため、なにがあろうとも最後まで私たちはメイロードさまのご指示に忠実に従います!」
私の前に膝をつき、キラキラした瞳で見上げるレンの、そして数千の妖精たちの尊敬のこもったまなざしにちょっとたじろぎつつも、できるだけ落ち着いた態度を私も貫く。指揮官が動揺するのは良くないだろうから。
「あ……ありがとうね、レン。よろしくお願いします」
〝守護妖精〟たちの結束と意欲は強まり、いつでも飛び出せる環境は整ったようだ。
ざっくりとした作戦も決まり、人員の確保もできた。だがこのまま突っ込む気はない。まずは現状を正確に把握するために、偵察に行かなくては。
地上の偵察はセーヤとソーヤに任せて、私は空から状況を確認することにした。セイリュウは自分で飛んでいくそうなので、別角度からの偵察をお願いした。
(とりあえず、アタタガ・フライに乗って《迷彩魔法》それに呪いに対して有効な《退魔結界》そして《物理結界》を展開すれば大丈夫かな)
〝厭魅〟の間近まで近づいたことのあるレンとともに、その禍々しい石のある場所へ近づくと、徐々に魔物や動物の数が増えてきているのが確認できた。
そこは不気味な咆哮もあちこちから聞こえ、打ち捨てられたままの動物たちの死体もそこら中に散乱する地獄絵図だった。
(思った以上に〝厭魅〟の勢力は拡大中してる……これはひどい)
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