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3 魔法学校の聖人候補
578 魔道具を買いに
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578
元〝大地の恵み〟亭の料理人で、魔法学校の現総料理長ダグロムさんは、定期的に業務報告の手紙をおじさまに送っている。
(どうやら、おじさまは私のことも逐一知らせるようダグロムさんに言い含めているようだ。そのため読み書きが得意な彼を選んだ気もする。私を心配してのことだろうが、相変わらず信用がないことだ。まぁ、自業自得だけれども……)
現在もダグロムさんは出向扱いなのだそうで、数年後には別の料理人と交代する予定だ。おじさまとしては私の料理を学んだいろいろな料理人を増やすことで、イスとパレスの店のレベルを上げていきたいのだろう。当然、ここで私が提案した料理に関する情報もおじさまの下で働くすべての料理人で共有されている。
今日おじさまからも受け取った《伝令》によると、ダグロムさんから伝えられた情報に関して、ちょっと面倒なことが起こっているらしい。
一番最近の手紙でダグロムさんは〝ローストナッツとカラメル風味のプゴの実パイ〟が絶品だと書き送り、そのせいでまたマルコとロッコが私の元で修行させろと駄々をこねているそうだ。
それでなくともマルコとロッコは直接私の指導を受けながら新レシピをどんどん作っているダグロムさんのことがうらやましくて仕方がないのに、絶品新作スイーツの話を聞いて、いてもたってもいられないらしい。
おじさまからの《伝令》では〝大地の恵み〟亭の料理長チェダルさんも、ぜひ一度私に料理をチェックして欲しいとおじさまに嘆願しているとも伝えてきた。
(ちょうどいい気分転換のなりそうだし、ちょっとイスに戻ってみようかな)
私は週末を使ってイスへ戻るとおじさまに《伝令》を出した。私にはアタタガ・フライという超優秀な飛行士がいることを知っているおじさまなら、急にイスへ行くと言っても驚きはしないだろう。
「メイロードさま、新作のお料理を考えられるのですか?」
ソーヤがウキウキした表情で私を見るが、1からレシピを作るほどの時間はないので、今回は学生食堂のメニューをブラッシュアップして、見栄えの良い〝お金の取れる〟料理にしてみようと思う。
イスのお店は一階のデリカテッセンで、まだまだ利益より普及優先の商売をしているから、二階の高級レストランでは、ガッチリお金が取れる料理を提供していかなければならない。ありがたいことに相変わらずリピーターも多く、常に予約は満席状態が続いてはいるが、常連には舌の肥えた方々多いので飽きられないよう、定期的に新作を追加していくことも大切だ。
(おそらく料理長のチェダルさんも、その辺りを心配しているんだろうな)
私はイスに帰る前にセルツの街へ向かった。
「ああ、久しぶりだねぇ。なんだかひどい目にあったらしいが、気を落とすんじゃないよ」
「〝守秘義務契約〟までしてガチガチに情報封鎖したはずなのに、地獄耳ですね、エルさん」
私がやってきたのはセルツ名物〝魔術師横丁〟にある魔法道具と魔法薬の専門店〝魔法薬師の宝箱〟店主のエルリベット・バレリオさんは頼りになるこの道のプロ。私の研究も随分と助けてくれる心強い味方だ。〝鞍揃え事件〟を通して、すっかり仲良くなったいまでは、いい友達としておつき合いさせてもらっている。
「そこは〝蛇の道は蛇〟ってやつさ。ふぇへっへ」
魔法使いにしては珍しくとても社交的で、町の人たちの相談にも積極的に乗ってあげているエルさんは、かなりの情報通なのだが、それにしてもこの情報まで掴んでいるとは……侮れない。
「もちろん、詳しいことまでは知らないよ。だが、メイロードのことはやはり気になるじゃないか。そうすると、噂話っていうのは巡ってくるもんさね」
「そういうものですか……」
「ああ、そういうもんさ。あんたがあまり気落ちしていないようでよかったよ。今日はなんだい? お茶でも飲みにきてくれたのかい」
エルさんはいつもお茶会をしている奥の席を進めてくれた。
「もちろんそのつもりで、たくさんお菓子を作ってきました。魔法学校の大食堂の新作デザート〝ローストナッツとカラメル風味のプゴの実パイ〟に、さらにアイスクリームを乗せたものは、とてもお茶に会いますよ」
エルさんは、とても嬉しそうに美しい茶器を用意してくれ、まずは近況報告とティータイムを楽しんだ。エルさんは私の研究内容までは流石に把握していなかったが、私の名前が突然〝研究発表会〟から消えたことは知っていた。上からの圧力なのだろうというアタリもつけている様子で、私の研究について聞けなくて残念だと話してくれた。
「ああ、私は〝守秘義務契約〟の対象外なので、エルさんになら話してもいいんですけどね。まぁ、もしあの研究を今後また続ける気になった時には、きっとご相談する必要があると思うので、その時に詳しくお話しさせてください。いまは、あの研究はきれいさっぱり私の元から離れましたから……」
「そうかい、そうかい。じゃあ楽しみに待とうかね。ところで、今日は探し物があるのかい?」
「ええ、魔道具をひとつお願いします。あまり魔法力がなくても使えるものをお願いしたいのですが……」
私の話を詳しく聞いて、エルさんは道具を選んでくれた。
「これなら、きっと役に立つよ。楽しみだね、またその話も聞かせておくれ」
「はい、戻りましたらまた」
私は手に入れた魔道具と共に、その日の夜イスへと戻った。
元〝大地の恵み〟亭の料理人で、魔法学校の現総料理長ダグロムさんは、定期的に業務報告の手紙をおじさまに送っている。
(どうやら、おじさまは私のことも逐一知らせるようダグロムさんに言い含めているようだ。そのため読み書きが得意な彼を選んだ気もする。私を心配してのことだろうが、相変わらず信用がないことだ。まぁ、自業自得だけれども……)
現在もダグロムさんは出向扱いなのだそうで、数年後には別の料理人と交代する予定だ。おじさまとしては私の料理を学んだいろいろな料理人を増やすことで、イスとパレスの店のレベルを上げていきたいのだろう。当然、ここで私が提案した料理に関する情報もおじさまの下で働くすべての料理人で共有されている。
今日おじさまからも受け取った《伝令》によると、ダグロムさんから伝えられた情報に関して、ちょっと面倒なことが起こっているらしい。
一番最近の手紙でダグロムさんは〝ローストナッツとカラメル風味のプゴの実パイ〟が絶品だと書き送り、そのせいでまたマルコとロッコが私の元で修行させろと駄々をこねているそうだ。
それでなくともマルコとロッコは直接私の指導を受けながら新レシピをどんどん作っているダグロムさんのことがうらやましくて仕方がないのに、絶品新作スイーツの話を聞いて、いてもたってもいられないらしい。
おじさまからの《伝令》では〝大地の恵み〟亭の料理長チェダルさんも、ぜひ一度私に料理をチェックして欲しいとおじさまに嘆願しているとも伝えてきた。
(ちょうどいい気分転換のなりそうだし、ちょっとイスに戻ってみようかな)
私は週末を使ってイスへ戻るとおじさまに《伝令》を出した。私にはアタタガ・フライという超優秀な飛行士がいることを知っているおじさまなら、急にイスへ行くと言っても驚きはしないだろう。
「メイロードさま、新作のお料理を考えられるのですか?」
ソーヤがウキウキした表情で私を見るが、1からレシピを作るほどの時間はないので、今回は学生食堂のメニューをブラッシュアップして、見栄えの良い〝お金の取れる〟料理にしてみようと思う。
イスのお店は一階のデリカテッセンで、まだまだ利益より普及優先の商売をしているから、二階の高級レストランでは、ガッチリお金が取れる料理を提供していかなければならない。ありがたいことに相変わらずリピーターも多く、常に予約は満席状態が続いてはいるが、常連には舌の肥えた方々多いので飽きられないよう、定期的に新作を追加していくことも大切だ。
(おそらく料理長のチェダルさんも、その辺りを心配しているんだろうな)
私はイスに帰る前にセルツの街へ向かった。
「ああ、久しぶりだねぇ。なんだかひどい目にあったらしいが、気を落とすんじゃないよ」
「〝守秘義務契約〟までしてガチガチに情報封鎖したはずなのに、地獄耳ですね、エルさん」
私がやってきたのはセルツ名物〝魔術師横丁〟にある魔法道具と魔法薬の専門店〝魔法薬師の宝箱〟店主のエルリベット・バレリオさんは頼りになるこの道のプロ。私の研究も随分と助けてくれる心強い味方だ。〝鞍揃え事件〟を通して、すっかり仲良くなったいまでは、いい友達としておつき合いさせてもらっている。
「そこは〝蛇の道は蛇〟ってやつさ。ふぇへっへ」
魔法使いにしては珍しくとても社交的で、町の人たちの相談にも積極的に乗ってあげているエルさんは、かなりの情報通なのだが、それにしてもこの情報まで掴んでいるとは……侮れない。
「もちろん、詳しいことまでは知らないよ。だが、メイロードのことはやはり気になるじゃないか。そうすると、噂話っていうのは巡ってくるもんさね」
「そういうものですか……」
「ああ、そういうもんさ。あんたがあまり気落ちしていないようでよかったよ。今日はなんだい? お茶でも飲みにきてくれたのかい」
エルさんはいつもお茶会をしている奥の席を進めてくれた。
「もちろんそのつもりで、たくさんお菓子を作ってきました。魔法学校の大食堂の新作デザート〝ローストナッツとカラメル風味のプゴの実パイ〟に、さらにアイスクリームを乗せたものは、とてもお茶に会いますよ」
エルさんは、とても嬉しそうに美しい茶器を用意してくれ、まずは近況報告とティータイムを楽しんだ。エルさんは私の研究内容までは流石に把握していなかったが、私の名前が突然〝研究発表会〟から消えたことは知っていた。上からの圧力なのだろうというアタリもつけている様子で、私の研究について聞けなくて残念だと話してくれた。
「ああ、私は〝守秘義務契約〟の対象外なので、エルさんになら話してもいいんですけどね。まぁ、もしあの研究を今後また続ける気になった時には、きっとご相談する必要があると思うので、その時に詳しくお話しさせてください。いまは、あの研究はきれいさっぱり私の元から離れましたから……」
「そうかい、そうかい。じゃあ楽しみに待とうかね。ところで、今日は探し物があるのかい?」
「ええ、魔道具をひとつお願いします。あまり魔法力がなくても使えるものをお願いしたいのですが……」
私の話を詳しく聞いて、エルさんは道具を選んでくれた。
「これなら、きっと役に立つよ。楽しみだね、またその話も聞かせておくれ」
「はい、戻りましたらまた」
私は手に入れた魔道具と共に、その日の夜イスへと戻った。
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