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2 海の国の聖人候補
263 行動開始!
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263
翌朝、私はヨシンさんの奥様ユイさんとキッチンに立っていた。
「なんだか申し訳ないわねぇ。お客さんに食材まで持ち込みしてもらうなんて……」
たっぷりの新鮮な野菜を手早く洗いながら、楽しげにユイさんが言う。
昨日は夜も遅いということで、ヨシンさん宅に泊めて頂いた。
ヨシンさん宅は普段から客人が多いらしく、誰かが泊まっていくのも珍しくないらしい。
ものすごく自然に私たちも泊まることになっていた。
「宿屋に泊まっても、今は名物料理もほとんど食べられないからつまらんですよ」
と、ユイさんに言われたことも大きい。そういう状況なら、自分で料理できる方がずっといいしね。
昨夜は、サンドウィッチや甘いお菓子に、それでなくても興奮気味だった子供たちが、遠方からのお客さんに、更にヒートアップ。はしゃぎまくってなかなか寝付いてくれず、私は色々な話をせがまれ、ワイワイと賑やかな夜になった。
「泊めて頂いているのですから、食材の提供ぐらい当然です。今日はシド帝国で最近人気の、バターと牛乳を使った料理も作りますね」
私は大きなフライパンにバターをたっぷり乗せ、以前から仕込んで保存してあった、牛乳と卵をたっぷりと含ませたパンを次々焼いていく。このホテル風フレンチトースト、じっくり長時間染み込ませることで、プリンのようななめらかさが加わり、美味しくて不思議な食感になるのだ。
バターの香ばしい香りがキッチン中に立ち込め、いつに間にか子供たちが鈴なりでこちらを見つめていた。
「お前たち、危ないから入って来ちゃダメよ」
ユイさんは小さい子がキッチンに入らないよう制するが、誰も入り口から離れる気配はない。
(まぁ、大して自分たちと変わらなく見える私が料理してるからね。自分もできると思うよね)
私は苦笑しながら、サラダやお皿の用意を頼んではどうかと提案する。子供たちは我先にとお手伝いに手を上げ、一気にキッチンは賑やかになった。
「大きい子はちゃんと小さい子を見るのよ!ゆっくりでいいから怪我しないでよ!」
「はーい」
久しぶりの華やかでたっぷりとした朝食。
不思議な異国の料理の美味しそうな香り、子供達がワクワクするのは当然といえば当然と言えた。
子供達の面倒を見ながら、食事をするタイチの顔もとても穏やかだ。
「タイチにーちゃん、メイちゃんのおりょーりオイシねー」
口の周りをベトベトにしながら、楽しそうに食べる小さな子の口元を拭いてやるタイチ。
「そうだな、美味しいな。メイロードさまは、本当に泣けるほど料理がお上手なんだよ」
久しぶりの豊かで幸福な食卓に、タイチは感無量のようだ。
「1日も早く、こういう毎日が取り戻せるよう、頑張るから、協力してね」
私の言葉に大きな声で返事をするタイチ。
他の子も、訳がわからないままタイチを真似て、同じように大きな声で次々と
「はい!」
と言い始め、食卓は笑いに包まれる。
ひとしきり笑った後、タイチに今日必要なことをお願いする。
「タイチ、山守の一番偉い方に私と一緒にアカツキの森へまで出向いて欲しいのだけど、連れて来てもらえるかな?」
「山守のエダイ親方は、叔父の昔からの知り合いなので、大丈夫です。すぐ、行って来ます!」
「それは助かる。じゃ、お願いね」
昨日ヨシンさんから不漁の前後の事情について詳細に話が聞けたので、状況はおおよそ判った。
まずは、アカツキ山の環境の健全化だ。それをしなければ話は始まらない。
そのためにも山守の皆さんの協力が不可欠だ。
私が山をなんとかしている間、ヨシンさんには、町の人たちの生活状態の立て直し準備をお願いした。
タイチにマホロの市場で買い込んできてもらった食料と私が樽に山ほど作ってきたメイロードソース各種を使った炊き出しと、保存食の配給。
これからの立て直しのためには、ちゃんと街の人たちが働ける健康状態でいてくれることが重要だ。
そのための体制作りは街の顔役の1人であるヨシンさんが適任だろう。
栄養価の高いメイロードソースは、肉にも魚にも使えるし、野草でもイケるポテンシャルがあるので、食べられる素材も増えるだろう。
いくらみんなで頑張っても、今から最低でも数ヶ月は、まだ生活の厳しさは続く。
新しい道筋が開けるまでの間、なんとか少しでも食生活だけは改善してあげたいものだ。
バンダッタの再生に、私のスキルがどこまで通用するか、私も初めてだし実験的な部分もあるけれど、とにかく迅速に行動することが必要だ。
この町の人を子供たちをタイチを、これ以上飢えに苦しませてはいけない。
「ドラ息子の一団は、随分と土地も生き物もイジメたようだよ。地脈の状態もかなり良くないけどね。メイロードが地を癒せばきっと大丈夫さ」
山の霊的健康を見て来てくれたセイリュウも、私の力が役に立つと言ってくれた。
ならば、することは決まっている。
(アカツキ山へ行こう!)
翌朝、私はヨシンさんの奥様ユイさんとキッチンに立っていた。
「なんだか申し訳ないわねぇ。お客さんに食材まで持ち込みしてもらうなんて……」
たっぷりの新鮮な野菜を手早く洗いながら、楽しげにユイさんが言う。
昨日は夜も遅いということで、ヨシンさん宅に泊めて頂いた。
ヨシンさん宅は普段から客人が多いらしく、誰かが泊まっていくのも珍しくないらしい。
ものすごく自然に私たちも泊まることになっていた。
「宿屋に泊まっても、今は名物料理もほとんど食べられないからつまらんですよ」
と、ユイさんに言われたことも大きい。そういう状況なら、自分で料理できる方がずっといいしね。
昨夜は、サンドウィッチや甘いお菓子に、それでなくても興奮気味だった子供たちが、遠方からのお客さんに、更にヒートアップ。はしゃぎまくってなかなか寝付いてくれず、私は色々な話をせがまれ、ワイワイと賑やかな夜になった。
「泊めて頂いているのですから、食材の提供ぐらい当然です。今日はシド帝国で最近人気の、バターと牛乳を使った料理も作りますね」
私は大きなフライパンにバターをたっぷり乗せ、以前から仕込んで保存してあった、牛乳と卵をたっぷりと含ませたパンを次々焼いていく。このホテル風フレンチトースト、じっくり長時間染み込ませることで、プリンのようななめらかさが加わり、美味しくて不思議な食感になるのだ。
バターの香ばしい香りがキッチン中に立ち込め、いつに間にか子供たちが鈴なりでこちらを見つめていた。
「お前たち、危ないから入って来ちゃダメよ」
ユイさんは小さい子がキッチンに入らないよう制するが、誰も入り口から離れる気配はない。
(まぁ、大して自分たちと変わらなく見える私が料理してるからね。自分もできると思うよね)
私は苦笑しながら、サラダやお皿の用意を頼んではどうかと提案する。子供たちは我先にとお手伝いに手を上げ、一気にキッチンは賑やかになった。
「大きい子はちゃんと小さい子を見るのよ!ゆっくりでいいから怪我しないでよ!」
「はーい」
久しぶりの華やかでたっぷりとした朝食。
不思議な異国の料理の美味しそうな香り、子供達がワクワクするのは当然といえば当然と言えた。
子供達の面倒を見ながら、食事をするタイチの顔もとても穏やかだ。
「タイチにーちゃん、メイちゃんのおりょーりオイシねー」
口の周りをベトベトにしながら、楽しそうに食べる小さな子の口元を拭いてやるタイチ。
「そうだな、美味しいな。メイロードさまは、本当に泣けるほど料理がお上手なんだよ」
久しぶりの豊かで幸福な食卓に、タイチは感無量のようだ。
「1日も早く、こういう毎日が取り戻せるよう、頑張るから、協力してね」
私の言葉に大きな声で返事をするタイチ。
他の子も、訳がわからないままタイチを真似て、同じように大きな声で次々と
「はい!」
と言い始め、食卓は笑いに包まれる。
ひとしきり笑った後、タイチに今日必要なことをお願いする。
「タイチ、山守の一番偉い方に私と一緒にアカツキの森へまで出向いて欲しいのだけど、連れて来てもらえるかな?」
「山守のエダイ親方は、叔父の昔からの知り合いなので、大丈夫です。すぐ、行って来ます!」
「それは助かる。じゃ、お願いね」
昨日ヨシンさんから不漁の前後の事情について詳細に話が聞けたので、状況はおおよそ判った。
まずは、アカツキ山の環境の健全化だ。それをしなければ話は始まらない。
そのためにも山守の皆さんの協力が不可欠だ。
私が山をなんとかしている間、ヨシンさんには、町の人たちの生活状態の立て直し準備をお願いした。
タイチにマホロの市場で買い込んできてもらった食料と私が樽に山ほど作ってきたメイロードソース各種を使った炊き出しと、保存食の配給。
これからの立て直しのためには、ちゃんと街の人たちが働ける健康状態でいてくれることが重要だ。
そのための体制作りは街の顔役の1人であるヨシンさんが適任だろう。
栄養価の高いメイロードソースは、肉にも魚にも使えるし、野草でもイケるポテンシャルがあるので、食べられる素材も増えるだろう。
いくらみんなで頑張っても、今から最低でも数ヶ月は、まだ生活の厳しさは続く。
新しい道筋が開けるまでの間、なんとか少しでも食生活だけは改善してあげたいものだ。
バンダッタの再生に、私のスキルがどこまで通用するか、私も初めてだし実験的な部分もあるけれど、とにかく迅速に行動することが必要だ。
この町の人を子供たちをタイチを、これ以上飢えに苦しませてはいけない。
「ドラ息子の一団は、随分と土地も生き物もイジメたようだよ。地脈の状態もかなり良くないけどね。メイロードが地を癒せばきっと大丈夫さ」
山の霊的健康を見て来てくれたセイリュウも、私の力が役に立つと言ってくれた。
ならば、することは決まっている。
(アカツキ山へ行こう!)
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