令嬢はうたた寝中

コトイアオイ

文字の大きさ
上 下
19 / 22
4.いつの間にか会長のペットです

パンのお届けです

しおりを挟む
 生徒会室に着いた。着いたのはいいんだけども、何だか取り込み中かしらー。


ノックしても気づいてもらえず、恐る恐るドアを開けたら2人の男子生徒が言い合っていた。


「だから、あの部屋はもう他に使用許可が下りてんだよ」


1人は生徒会長の五十嵐葵。少しイライラしている感じの声色だ。


「元々申請してたのは僕が先だったろ」


もう1人は桂雅人。不満げな声で何かを訴えている。


 これは…どうすれば良いのだ。部長さーん、貢物しようにも入り難いんですが!


入口でソワソワしていると、持っていたパンの袋がカサカサパサリと音を立てた。


「あっ……」


やばい!空気読めない感じになってしまった!扉も開いたままだし、聞こえたよね。


ちらりと視線を上げると、痛いほどの視線が突き刺さった。

ひぃ!悪いことした子供がお母さんに怒られる寸前のような、この居心地の悪さ!私はパンを納めに来た善良な一般ピーポーですよ!?


片手にパンを持ったまま、ホールドアップする私を見て、桂は後ろを向いて肩を震わせていた。


「…藤峰。用があるならさっさと入れ、逆に気になる」


五十嵐がそう言うので、遠慮なく生徒会室へ踏み込んだ。ふぅ、あとはパンを渡すだけだ。


「あの、サッカー部の皆さんにはもう渡したんですけど…これ、差し入れです」


「パンか、ちょうど昼食べてなかったから助かる」


私が差し出したパンをお礼と共に五十嵐が受け取る。よし、私はこれでもう学校に用がなくなった。帰って一眠りできるぞ。


私は足早にその場を立ち去ろうとする。が、私の腕は五十嵐に捕まえられた。


「……この腕は何でしょう?」


「そう慌てることはねぇだろ?ほら、座れ」


何故に?私がいる意味って、何?納得できない私の目の前にすっとお菓子が出された。そのお菓子は…朝2時間待ちの人気店のマカロン!私はマカロンを反射的に掴む。


「…はっ…!…これは、その…マカロンの魔力に手が動いて」


「そーか、良かったなそのマカロン人気らしいもんな?」


私の苦し過ぎる言い訳を完全無視して、五十嵐は私の頭をグリグリ撫でる。くっ、人気店のマカロンと撫で撫での2段攻撃…だと。


私はあっさりと屈した。べ、別に、ここで寝ればいいしね。


それにしても、2人とも何かを言い争っていたみたいだけど、良かったのかな。私の乱入で中断させてしまった感じがする…。私はマカロンをもぐもぐして少し世間話をした後、お昼寝タイムに入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。 彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。 さて、どうなりますでしょうか…… 別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。 突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか? 自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。 私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。 それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。 7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにしませんか

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢ナターシャの婚約者は自由奔放な公爵ボリスだった。頭はいいけど人格は破綻。でも、両親が決めた婚約だから仕方がなかった。 「ナターシャ!!!お前はいつも不細工だな!!!」 ボリスはナターシャに会うと、いつもそう言っていた。そして、男前なボリスには他にも婚約者がいるとの噂が広まっていき……。 本編終了しました。続きは「気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにします」となります。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...