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4.いつの間にか会長のペットです
気になるあの子
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本日は照りつける初夏の太陽の元、厳粛に終業式が行われていた。
そんな中、僕は暑さに負けたからというわけでもなくカッターシャツのボタンを開け、首からはシルバーのネックレスを下げていた。これを通常スタイルとして貫いていたら、生徒会長の五十嵐からは「全身校則違反」と称された。
その五十嵐はと言うと、全校生徒の前で挨拶をしていた。彼は普段、乱暴な口振りかつ、野生の狼のような鋭い雰囲気で女子が常にざわめいている。ただ、こういう場ではそれを潜めて真面目な口振りだ。そのギャップに女子はときめきを覚えるとか何とか。それは毎年のことなので気にならない。
気になるのは、前方の席で姿勢良く座る女子生徒。彼女は以前、カエルを捕まえてくれと謎の頼み事をして来た子だ。前々から変な子だなぁとは思っていた。噂によると、入学式で五十嵐が挨拶している時でさえ爆睡していたらしい。きっと今も寝ているのだろう。
女の子は皆可愛くて好きだけど、彼女はそういうのと別の何かがある気がする。不思議と目を離せなくなるような、そんな魅力が。
「桂君、良かったら私達と夏休み遊びません?」
式が終われば、そう言って女子生徒が集まってくる。僕はそれに笑顔で答える。
「喜んで。あぁ、でも昌美ちゃんと有希ちゃんと春霞ちゃんと夏菜子ちゃんとも約束してるから、その後でもいい?」
「桂君の都合が付く日で構いませんわ!では、その時はご連絡下さいね」
女子生徒達は自分以外と遊ぶと堂々と言われても嫌がることは無い。なぜなら、僕がそういう人間だと分かった上で話しているからだ。
こういう気楽な付き合いが一番いい。その点、あの王子に付きまとっている姫咲百合亜のような女の子は一番嫌な女の子だった。いつでもどこでも男にくっついて束縛してくる。それなのに、彼女自身は五十嵐葵や桜庭流星にも良い顔をしている。
王子も面倒な女の子を選んだものだ。彼女の見た目に騙されたのだろうか。
姫咲さんが誰を選ぼうと勝手だが、その騒動には巻き込まれたくないものだ。あのカエルの子も、階段から突き落とされたと噂されている。以前中等部の卒業式で、王子が婚約者との婚約を破棄したことは聞いていたが、その時は人の色恋に興味がなかったので適当に聞いていた。
今更王子を巡る嫉妬だろうか?あの子も可哀想に。
いつも寝てばかりいるのんびりした令嬢だ。また何か痛い目を見るのではと心配していた。7月の納涼祭までは。
あの納涼祭の第二プログラムで、彼女は姫咲さんにしっかりと報復したのである。令嬢らしく恐ろしい程淑やかに。
姫咲さんの前から立ち去る彼女のドヤ顔からして、全て計算した上で衣装を選んだのだろう。意外と策士な彼女はその足でアイスが置かれたテーブルに行き、アイスやフルーツを美味しそうに食べていた。その顔はどこにでもいる、甘いものが好きな令嬢でしかなかった。
想像をいつも超えてくる彼女は、僕にとって面白い観察対象となっていた。
そんな中、僕は暑さに負けたからというわけでもなくカッターシャツのボタンを開け、首からはシルバーのネックレスを下げていた。これを通常スタイルとして貫いていたら、生徒会長の五十嵐からは「全身校則違反」と称された。
その五十嵐はと言うと、全校生徒の前で挨拶をしていた。彼は普段、乱暴な口振りかつ、野生の狼のような鋭い雰囲気で女子が常にざわめいている。ただ、こういう場ではそれを潜めて真面目な口振りだ。そのギャップに女子はときめきを覚えるとか何とか。それは毎年のことなので気にならない。
気になるのは、前方の席で姿勢良く座る女子生徒。彼女は以前、カエルを捕まえてくれと謎の頼み事をして来た子だ。前々から変な子だなぁとは思っていた。噂によると、入学式で五十嵐が挨拶している時でさえ爆睡していたらしい。きっと今も寝ているのだろう。
女の子は皆可愛くて好きだけど、彼女はそういうのと別の何かがある気がする。不思議と目を離せなくなるような、そんな魅力が。
「桂君、良かったら私達と夏休み遊びません?」
式が終われば、そう言って女子生徒が集まってくる。僕はそれに笑顔で答える。
「喜んで。あぁ、でも昌美ちゃんと有希ちゃんと春霞ちゃんと夏菜子ちゃんとも約束してるから、その後でもいい?」
「桂君の都合が付く日で構いませんわ!では、その時はご連絡下さいね」
女子生徒達は自分以外と遊ぶと堂々と言われても嫌がることは無い。なぜなら、僕がそういう人間だと分かった上で話しているからだ。
こういう気楽な付き合いが一番いい。その点、あの王子に付きまとっている姫咲百合亜のような女の子は一番嫌な女の子だった。いつでもどこでも男にくっついて束縛してくる。それなのに、彼女自身は五十嵐葵や桜庭流星にも良い顔をしている。
王子も面倒な女の子を選んだものだ。彼女の見た目に騙されたのだろうか。
姫咲さんが誰を選ぼうと勝手だが、その騒動には巻き込まれたくないものだ。あのカエルの子も、階段から突き落とされたと噂されている。以前中等部の卒業式で、王子が婚約者との婚約を破棄したことは聞いていたが、その時は人の色恋に興味がなかったので適当に聞いていた。
今更王子を巡る嫉妬だろうか?あの子も可哀想に。
いつも寝てばかりいるのんびりした令嬢だ。また何か痛い目を見るのではと心配していた。7月の納涼祭までは。
あの納涼祭の第二プログラムで、彼女は姫咲さんにしっかりと報復したのである。令嬢らしく恐ろしい程淑やかに。
姫咲さんの前から立ち去る彼女のドヤ顔からして、全て計算した上で衣装を選んだのだろう。意外と策士な彼女はその足でアイスが置かれたテーブルに行き、アイスやフルーツを美味しそうに食べていた。その顔はどこにでもいる、甘いものが好きな令嬢でしかなかった。
想像をいつも超えてくる彼女は、僕にとって面白い観察対象となっていた。
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