3 / 21
侍女の休日
しおりを挟む
「街に行くなら、ルドがいるかもしれないぞ」
「えっ何で? ルド様は昨日の夜に実家に帰ったじゃない。普通話しをしたり実家の事したり、忙しんじゃないの?」
滅多に帰れない実家にいるなら、ゆっくりするんじゃないだろうか。
「最近母さんが結婚しろって五月蝿いんだ。主のティタン様が結婚したし、そろそろ良いだろって迫られてる。孫も見たいまで言われたし……さすがのルドも逃げ出すさ」
「ルド様が結婚……」
いや、そうよね。
あんな美形がいつまでも独身のはずないわよ。
屋敷内でファンクラブが出来そうな程人気だもの。
護衛騎士としてパーティにも付き添いで結構行ってるし、他の令嬢方がロックオンしないはずがない。
そしてルド様はカリオス子爵家当主。
狙う女性は必ずいる。
「釣書も来てるってよ。早くしないと取られるぞ?」
「な、何を言って……!」
思わぬ言葉に壁まで後ずさる。
ライカはチェルシーが兄のルドに好意を抱いているのは知っている。
「ルドの事、いらないのか?」
「物じゃないのよ?! 何よその言い方」
照れ隠しもあって大きな声を出してしまった。
「違うのか?マオからそう聞いてたんだが。チェルシーがルドを好きって」
あの、吊り目従者め。
後であったら地獄のマッサージしてやるわ。
「違わなくはないけど……」
ぼそぼそと小声になってしまう。
顔を赤くするチェルシーにライカは素直になればいいと言った。
「お前の敬愛するミューズ様だって応援してたぞ、自信もてよ」
「待って、どこまで話が広まってるの?!」
さすがに胸倉を掴み、問い詰める。
「あ~……あとはマオに聞いといて。俺そろそろ湯浴みしないと。これから仕事あるし」
目線をそらし、あっという間に振り払われ逃げられてしまった。
絶対許さん、と心に誓う。
ルドはこっそりため息をついた。
朝食を母と一緒にとっているのだが、味がわからなくなる程延々と結婚について、語られているのだ。
今までは主君がまだなのに家臣の自分には早過ぎる、と話していたが、ティタンが結婚したのだから、もういいだろとばかりに詰められる。
母はパーティーや茶会にも自ら参加して、様々な情報をやあちこちの結婚適齢期の令嬢の話を聞いているようだ。
やれどこどこの令嬢はマナーが綺麗、とかあそこの令嬢は話が上手とか、様々な事を話される。
「そうですか」「知りませんでした」「凄いですね」
と、ルドは淡々と相槌をうち、げんなりとしながら飲み込んでいく。
侍女長のアンネがルドを気の毒に思って止めてくれたが、それでも話は続いた。
すぐにでも逃げ出さなかったことは褒めてほしい。
「ルド様、どうぞ」
食後の温かい紅茶を入れてくれたのは、先程のトワだ。
「良い香りだ、そして美味しいですよ。トワ」
そう言うとパアッとトワの顔が明るくなる。
彼女も最初はこのような感じだったのかと、あの元気はつらつな同僚侍女に会いたくなってしまった。
「この後もしよかったら一緒に釣書を見ない? 良いお嬢さんがいっぱいいるのよ」
これ以上はこの話に付き合うのはもう無理だと、ルドは席を立つ。
「本日は街に行きます。久々の休暇ですし、街並みもずいぶん変わっているでしょうから。相手の方に失礼にならないよう、最新のデート先も見つけたいと思いますので」
その言葉にルドも少しはその気になったのだと安心した。
「そうなのね、気をつけていってらっしゃい」
「えっ何で? ルド様は昨日の夜に実家に帰ったじゃない。普通話しをしたり実家の事したり、忙しんじゃないの?」
滅多に帰れない実家にいるなら、ゆっくりするんじゃないだろうか。
「最近母さんが結婚しろって五月蝿いんだ。主のティタン様が結婚したし、そろそろ良いだろって迫られてる。孫も見たいまで言われたし……さすがのルドも逃げ出すさ」
「ルド様が結婚……」
いや、そうよね。
あんな美形がいつまでも独身のはずないわよ。
屋敷内でファンクラブが出来そうな程人気だもの。
護衛騎士としてパーティにも付き添いで結構行ってるし、他の令嬢方がロックオンしないはずがない。
そしてルド様はカリオス子爵家当主。
狙う女性は必ずいる。
「釣書も来てるってよ。早くしないと取られるぞ?」
「な、何を言って……!」
思わぬ言葉に壁まで後ずさる。
ライカはチェルシーが兄のルドに好意を抱いているのは知っている。
「ルドの事、いらないのか?」
「物じゃないのよ?! 何よその言い方」
照れ隠しもあって大きな声を出してしまった。
「違うのか?マオからそう聞いてたんだが。チェルシーがルドを好きって」
あの、吊り目従者め。
後であったら地獄のマッサージしてやるわ。
「違わなくはないけど……」
ぼそぼそと小声になってしまう。
顔を赤くするチェルシーにライカは素直になればいいと言った。
「お前の敬愛するミューズ様だって応援してたぞ、自信もてよ」
「待って、どこまで話が広まってるの?!」
さすがに胸倉を掴み、問い詰める。
「あ~……あとはマオに聞いといて。俺そろそろ湯浴みしないと。これから仕事あるし」
目線をそらし、あっという間に振り払われ逃げられてしまった。
絶対許さん、と心に誓う。
ルドはこっそりため息をついた。
朝食を母と一緒にとっているのだが、味がわからなくなる程延々と結婚について、語られているのだ。
今までは主君がまだなのに家臣の自分には早過ぎる、と話していたが、ティタンが結婚したのだから、もういいだろとばかりに詰められる。
母はパーティーや茶会にも自ら参加して、様々な情報をやあちこちの結婚適齢期の令嬢の話を聞いているようだ。
やれどこどこの令嬢はマナーが綺麗、とかあそこの令嬢は話が上手とか、様々な事を話される。
「そうですか」「知りませんでした」「凄いですね」
と、ルドは淡々と相槌をうち、げんなりとしながら飲み込んでいく。
侍女長のアンネがルドを気の毒に思って止めてくれたが、それでも話は続いた。
すぐにでも逃げ出さなかったことは褒めてほしい。
「ルド様、どうぞ」
食後の温かい紅茶を入れてくれたのは、先程のトワだ。
「良い香りだ、そして美味しいですよ。トワ」
そう言うとパアッとトワの顔が明るくなる。
彼女も最初はこのような感じだったのかと、あの元気はつらつな同僚侍女に会いたくなってしまった。
「この後もしよかったら一緒に釣書を見ない? 良いお嬢さんがいっぱいいるのよ」
これ以上はこの話に付き合うのはもう無理だと、ルドは席を立つ。
「本日は街に行きます。久々の休暇ですし、街並みもずいぶん変わっているでしょうから。相手の方に失礼にならないよう、最新のデート先も見つけたいと思いますので」
その言葉にルドも少しはその気になったのだと安心した。
「そうなのね、気をつけていってらっしゃい」
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
貴族との白い結婚はもう懲りたので、バリキャリ魔法薬研究員に復帰します!……と思ったら、隣席の後輩君(王子)にアプローチされてしまいました。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
秀才ディアナは、魔法薬研究所で働くバリキャリの魔法薬師だった。だが――
「おいディアナ! 平民の癖に、定時で帰ろうなんて思ってねぇよなぁ!?」
ディアナは平民の生まれであることが原因で、職場での立場は常に下っ端扱い。憧れの上級魔法薬師になるなんて、夢のまた夢だった。
「早く自由に薬を作れるようになりたい……せめて後輩が入ってきてくれたら……」
その願いが通じたのか、ディアナ以来初の新人が入職してくる。これでようやく雑用から抜け出せるかと思いきや――
「僕、もっとハイレベルな仕事したいんで」
「なんですって!?」
――新人のローグは、とんでもなく生意気な後輩だった。しかも入職早々、彼はトラブルを起こしてしまう。
そんな狂犬ローグをどうにか手懐けていくディアナ。躾の甲斐あってか、次第に彼女に懐き始める。
このまま平和な仕事環境を得られると安心していたところへ、ある日ディアナは上司に呼び出された。
「私に縁談ですか……しかも貴族から!?」
しかもそれは絶対に断れない縁談と言われ、仕方なく彼女はある決断をするのだが……。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
【完結】待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。
女の子がひたすら気持ちよくさせられる短編集
春
恋愛
様々な設定で女の子がえっちな目に遭うお話。詳しくはタグご覧下さい。モロ語あり一話完結型。注意書きがない限り各話につながりはありませんのでどこからでも読めます。pixivにも同じものを掲載しております。
【完結】わたしはお飾りの妻らしい。 〜16歳で継母になりました〜
たろ
恋愛
結婚して半年。
わたしはこの家には必要がない。
政略結婚。
愛は何処にもない。
要らないわたしを家から追い出したくて無理矢理結婚させたお義母様。
お義母様のご機嫌を悪くさせたくなくて、わたしを嫁に出したお父様。
とりあえず「嫁」という立場が欲しかった旦那様。
そうしてわたしは旦那様の「嫁」になった。
旦那様には愛する人がいる。
わたしはお飾りの妻。
せっかくのんびり暮らすのだから、好きなことだけさせてもらいますね。
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる