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婚約じゃなく婚姻
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「おめでとう、二人とも」
翌日、何故か王太子のエリックがティタンの屋敷に来ていた。
そしてそんな声を掛けられる。
「エリック様、情報が早すぎますし、わざわざ来たのですか?」
礼すら忘れ、引くつく表情を隠しもせずにライカはそう言った。
王太子妃のレナン、そして王太子付きの従者のニコラと護衛騎士のオスカーは涙を流し、レナンの護衛術師キュアは射殺さんばかりの目でライカを睨んでいる。
「良かったのです、ライカが幸せになって」
「えぇ本当に。義弟が幸せになってくれてあたしも幸せだわ」
泣き真似をするマオとチェルシーを見て、大凡の察しがつく。
「お前らが余計な事しやがったな?!」
人の恋愛に首を突っ込みたがるこの同僚達に、ライカはカンカンだ。
「ライカ、僕がエリック兄様に伝えたんだ」
悪びれなく言うのはリオンだ。
「何故リオン様が?」
戸惑いつつも、きっとマオが焚きつけたのだろうと考える。
「だって君が早く結婚してくれた方が僕も安心だから。まぁ、僕のマオに手出しなんてしないと思うけど」
強調して言うとリオンがマオを抱きしめている。
「フローラ嬢おめでとう、ライカは良い男だからしっかり捕まえておいてね」
リオンはにっこりとそう微笑む。
「ありがとうございます」
何だか凄い事になっていて、フローラもびっくりだ。
こんな風に王子達が集まるなんて、思いも寄らなかった。
「私からもまだ言ってなかったわ、おめでとう」
ミューズがフローラに抱きつく。
フローラも小柄なミューズを抱きしめ、よしよしと頭を撫でた。
「ありがとう、ミューズ様」
あの時強引にでもここに連れてこられなかったら、きっとこんなことにはならなかっただろう。
「めでたいことは何よりだ。で、これからどうするか決まったか? うちで良ければ雇わせてもらいたいのだが」
ティタンの提案に、フローラはまだそこまで意志が固まってないことに気づく。
ライカと想いが通じた嬉しさで先のことまで考えていなかった。
「焦ることないわ。私達はいつでもフローラを待つから。だけど、もう勝手に出ていっては駄目よ」
ミューズの手に力が入る。
「卒業パーティには来るって言ったのに来ないんだもの。結婚式の時だって少ししか話せないし、寂しかったわ」
「ごめんなさい」
フローラは謝罪も込めてミューズを抱きしめる。
「これからは勝手に出ていかないわ。きちんと話をしていくから」
その言葉にもミューズは嬉しくなり、ライカもホッとする。
「エリック様、あまりお時間がありませんので」
こそりとニコラが耳打ちする。
王太子であるエリックが自由に外出出来る時間はそうはない。
「ライカ、フローラ嬢。すまないが手短に話す。これから婚約するつもりでいたか?」
「そのつもりです」
エリックの言葉にフローラは躊躇うが、ライカはきっぱりと言ってくれる。
揺るぎない言葉をうけてフローラもコクリと頷いた、何とも頼もしい。
「貴族であればその流れが普通だろうな、だが俺はそうは思わない」
エリックが差し出したのは婚姻の書類だ。
「はっ?」
色々すっ飛ばしたものにライカはあ然とする。
「お前も良い年だし身を固めていいだろう」
ライカもフローラもただ顔を赤くするばかりだ。
「いや、まずお互いを知るところからで」
ライカはしどろもどろになる様子に、皆が温かく見守る。
「そもそもフローラ嬢は今は貴族籍を抜けて平民だ。わざわざ貴族と同じようなプロセスを踏むこともない。そして、ルドも最近結婚したし、ライカも実家を出た。だから俺からこちらをプレゼントする」
また別の書類を渡され、ライカは目を見開いて震えてしまった。
「エリック様、これは……本当に、俺でいいのですか?」
「お前が嫌じゃなければだ」
ライカは涙が溢れるのを止められない。
「……ありがとう、ございます」
そう言うので精一杯だ。
ルドがライカの肩に手を置いた。
「お前が一番相応しいよ、任せるからね」
ルドはフローラに向き直る。
「弟を頼みます、少し直情的だけど、悪い奴じゃないから。信用してください」
「えぇ、しっかりとお互いを支えられる関係になりますわ」
ルドはライカから書類を受け取り、フローラにも見せる。
「これって」
そこに書かれていたのは爵位を授ける旨だった。
「ルドと同じ家名でも良いかと思ったが、紛らわしい。別家庭を示すのに良いかと思ってな」
「トワレ?」
新たな家名はエリックがつけたのだろうか。
「そちらはライカとルドの、シェスタにいたときの家名だ」
フローラは驚き、書類を読み進めていく。
「爵位は、伯爵位となるのですか?」
異例の出世ではないのか。
「王族の護衛騎士を長年務め、領地の魔獣退治も数多くこなしている。不正を暴くための調査活動もし、国への貢献は大きい。今また大きな貢献をしそうだしな」
エリックはフローラを見る。
「ライカにその気はなくとも初の女性の護衛騎士は貴重だ。君を皮切りにぜひこれからの登用に期待しているんだ。女性の術師は多いが、この国で騎士はいない、ぜひフローラ嬢に希望の星になって欲しい」
思わぬ大役にただフローラは言葉が出なかった。
「何故私が?! 他にも優秀な方はいるのではないですか?」
「信頼があり、剣の腕も立ち、品行方正で真面目だ。模範になるに相応しい。そして義妹の親友ならば信用も出来る。王家の奥深い秘密を知ることとなるから、信用できることが一番大事だ」
思わぬ方向性だ。
これでは冒険者の方がましではないのだろうか。
「報酬も弾む。命がけで護衛をしてもらうし、時間も不規則、休日も少ない。が、ここに務めるならばライカといられるし、ティタン自体も強いし、マオもいる。そこまで過酷なものにはならないだろう」
二コラが雇用契約書を差し出した。
「こんなに?!」
給与の額にフローラは大声を上げた。
「武具の調達は自分達でしてもらうようになるが補助は出す。任務によっては危険手当も出るし、他国への付き添いの際の交通費ももちろんこちらだ。ただし鍛錬は怠らない事。これだけの額を提示するのは命をかける仕事だからだ、常に気を抜くことも出来ないし、いつ死ぬかもわからない。責任のある仕事だからのこのくらいの金額になる」
金額に見合った仕事が出来なければ、クビだ。
エリックは試すような瞳で見る。
「君は我々の為に死ぬ覚悟はあるか?」
フローラはごくりと唾を飲み込む。
翌日、何故か王太子のエリックがティタンの屋敷に来ていた。
そしてそんな声を掛けられる。
「エリック様、情報が早すぎますし、わざわざ来たのですか?」
礼すら忘れ、引くつく表情を隠しもせずにライカはそう言った。
王太子妃のレナン、そして王太子付きの従者のニコラと護衛騎士のオスカーは涙を流し、レナンの護衛術師キュアは射殺さんばかりの目でライカを睨んでいる。
「良かったのです、ライカが幸せになって」
「えぇ本当に。義弟が幸せになってくれてあたしも幸せだわ」
泣き真似をするマオとチェルシーを見て、大凡の察しがつく。
「お前らが余計な事しやがったな?!」
人の恋愛に首を突っ込みたがるこの同僚達に、ライカはカンカンだ。
「ライカ、僕がエリック兄様に伝えたんだ」
悪びれなく言うのはリオンだ。
「何故リオン様が?」
戸惑いつつも、きっとマオが焚きつけたのだろうと考える。
「だって君が早く結婚してくれた方が僕も安心だから。まぁ、僕のマオに手出しなんてしないと思うけど」
強調して言うとリオンがマオを抱きしめている。
「フローラ嬢おめでとう、ライカは良い男だからしっかり捕まえておいてね」
リオンはにっこりとそう微笑む。
「ありがとうございます」
何だか凄い事になっていて、フローラもびっくりだ。
こんな風に王子達が集まるなんて、思いも寄らなかった。
「私からもまだ言ってなかったわ、おめでとう」
ミューズがフローラに抱きつく。
フローラも小柄なミューズを抱きしめ、よしよしと頭を撫でた。
「ありがとう、ミューズ様」
あの時強引にでもここに連れてこられなかったら、きっとこんなことにはならなかっただろう。
「めでたいことは何よりだ。で、これからどうするか決まったか? うちで良ければ雇わせてもらいたいのだが」
ティタンの提案に、フローラはまだそこまで意志が固まってないことに気づく。
ライカと想いが通じた嬉しさで先のことまで考えていなかった。
「焦ることないわ。私達はいつでもフローラを待つから。だけど、もう勝手に出ていっては駄目よ」
ミューズの手に力が入る。
「卒業パーティには来るって言ったのに来ないんだもの。結婚式の時だって少ししか話せないし、寂しかったわ」
「ごめんなさい」
フローラは謝罪も込めてミューズを抱きしめる。
「これからは勝手に出ていかないわ。きちんと話をしていくから」
その言葉にもミューズは嬉しくなり、ライカもホッとする。
「エリック様、あまりお時間がありませんので」
こそりとニコラが耳打ちする。
王太子であるエリックが自由に外出出来る時間はそうはない。
「ライカ、フローラ嬢。すまないが手短に話す。これから婚約するつもりでいたか?」
「そのつもりです」
エリックの言葉にフローラは躊躇うが、ライカはきっぱりと言ってくれる。
揺るぎない言葉をうけてフローラもコクリと頷いた、何とも頼もしい。
「貴族であればその流れが普通だろうな、だが俺はそうは思わない」
エリックが差し出したのは婚姻の書類だ。
「はっ?」
色々すっ飛ばしたものにライカはあ然とする。
「お前も良い年だし身を固めていいだろう」
ライカもフローラもただ顔を赤くするばかりだ。
「いや、まずお互いを知るところからで」
ライカはしどろもどろになる様子に、皆が温かく見守る。
「そもそもフローラ嬢は今は貴族籍を抜けて平民だ。わざわざ貴族と同じようなプロセスを踏むこともない。そして、ルドも最近結婚したし、ライカも実家を出た。だから俺からこちらをプレゼントする」
また別の書類を渡され、ライカは目を見開いて震えてしまった。
「エリック様、これは……本当に、俺でいいのですか?」
「お前が嫌じゃなければだ」
ライカは涙が溢れるのを止められない。
「……ありがとう、ございます」
そう言うので精一杯だ。
ルドがライカの肩に手を置いた。
「お前が一番相応しいよ、任せるからね」
ルドはフローラに向き直る。
「弟を頼みます、少し直情的だけど、悪い奴じゃないから。信用してください」
「えぇ、しっかりとお互いを支えられる関係になりますわ」
ルドはライカから書類を受け取り、フローラにも見せる。
「これって」
そこに書かれていたのは爵位を授ける旨だった。
「ルドと同じ家名でも良いかと思ったが、紛らわしい。別家庭を示すのに良いかと思ってな」
「トワレ?」
新たな家名はエリックがつけたのだろうか。
「そちらはライカとルドの、シェスタにいたときの家名だ」
フローラは驚き、書類を読み進めていく。
「爵位は、伯爵位となるのですか?」
異例の出世ではないのか。
「王族の護衛騎士を長年務め、領地の魔獣退治も数多くこなしている。不正を暴くための調査活動もし、国への貢献は大きい。今また大きな貢献をしそうだしな」
エリックはフローラを見る。
「ライカにその気はなくとも初の女性の護衛騎士は貴重だ。君を皮切りにぜひこれからの登用に期待しているんだ。女性の術師は多いが、この国で騎士はいない、ぜひフローラ嬢に希望の星になって欲しい」
思わぬ大役にただフローラは言葉が出なかった。
「何故私が?! 他にも優秀な方はいるのではないですか?」
「信頼があり、剣の腕も立ち、品行方正で真面目だ。模範になるに相応しい。そして義妹の親友ならば信用も出来る。王家の奥深い秘密を知ることとなるから、信用できることが一番大事だ」
思わぬ方向性だ。
これでは冒険者の方がましではないのだろうか。
「報酬も弾む。命がけで護衛をしてもらうし、時間も不規則、休日も少ない。が、ここに務めるならばライカといられるし、ティタン自体も強いし、マオもいる。そこまで過酷なものにはならないだろう」
二コラが雇用契約書を差し出した。
「こんなに?!」
給与の額にフローラは大声を上げた。
「武具の調達は自分達でしてもらうようになるが補助は出す。任務によっては危険手当も出るし、他国への付き添いの際の交通費ももちろんこちらだ。ただし鍛錬は怠らない事。これだけの額を提示するのは命をかける仕事だからだ、常に気を抜くことも出来ないし、いつ死ぬかもわからない。責任のある仕事だからのこのくらいの金額になる」
金額に見合った仕事が出来なければ、クビだ。
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