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初めてのパーティ
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レナードのエスコートを受け、涼しい顔をしながらもエレオノーラの心は舞い上がっていた。
婚約者となってから初の公式なパーティだ、浮かれないというのが無理な話だ。
一方のレナードはガチガチに固まっている。
高嶺の花だったエレオノーラが婚約者となって、レナードの腕に寄り添っているのだ。
気にならないわけがない。
変な汗が背中を伝う。
「緊張されてますか?」
「はい!」
エレオノーラに聞かれ、返事したが、予期せずレナードの声は裏返ってしまった。
恥ずかしさに赤面していると、エレオノーラが組んだ腕を優しくさすってくれる。
「そうですよね、わたくしも緊張してます。婚約者様と一緒になんて初めてですし、失敗しないか心配です」
ふぅっと小さく息を吐いている。
エレオノーラの言葉に少しレナードの心は軽くなった。
(エレオノーラ様も緊張なされるんだなぁ)
自分と同じ人間なんだ、と再認識させられ、レナードはようやく笑顔が浮かんだ。
「僕以上に失敗する者なんていませんよ、この前みたいになってしまうかもしれないし」
盛大に転んでまたワインをぶちまけてしまうかもしれないと、危惧している。
「今日はわたくしが一緒なのだからそんな事は起きませんわ」
嫋やかにそう答え、エレオノーラはちらりと後ろを見た。
エレオノーラの侍女のニコルはいつも通りくっついてきている。
そして今日はもう一人同行をお願いしてあった。
護衛術師のキュリアンだ。
彼は今後レナードについてもらい、彼を守ったり、サポートする役目を負うことになっている。
「エレオノーラ様から直々に任命されるなんて、一生懸命頑張ります!」
仕事ぶりには心配ないが、やや癖のある性格だ。
レナードの事を悪く思ってはなさそうなので任につけたのだが、寧ろ気に入り過ぎている素振りがある。
キュリアンは男だが、男性が好きだ。
特にイケメンが。
スピリチュアル的な意味で、と言っていたので手を出したりはしないだろうが、何かあればニコルが制裁すると言っていた。
なのでしばらくニコルはキュリアンのお目付け役も兼ねて側にいてくれるようになる。
エレオノーラは好奇の目に嘆息しながら、堂々と胸を張る。
隣にいるレナードが皆気になっているのだろう。
レナードは正式にエレオノーラの婚約者となったので、この間のような嘲笑など表立ってするものはいないだろうが、ひそひそとささやくような声が聞こえる。
エレオノーラの婚約の旨は招待状に書き添えてあったが、目の当たりにして初めて信じてもらえたのか。
レナードのエスコートを見て最初は驚いていたようだ。
どういった経緯で婚約を結んだのか、王家はスフォリア家に弱みを握られたのかと、あらぬ憶測も耳に入る。
しかし、二人で挨拶をしたり、エレオノーラのがレナードを大事にしている様子を見て、ようやっと婚約を信じてもらえそうだ。
「姉上」
「ティア」
本日ティアシーアはドレス姿だ。
エレオノーラの婚約お披露目の日のため、ティアシーアも慣れないながらも参加している。
リオーネも付き添い、にこにこしていた。
「さすが姉上。素敵な挨拶でした。レナード様もかっこよかったですよ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
エレオノーラもレナードも嬉しそうだ。
「そうやって並ぶととてもお似合いですわ。エレオノーラ姉様も、レナード義兄様も美形なんですもの。羨ましいです」
二人ともスッとしたスタイルでバランスが取れている。
小柄なリオーネからしたら本当に羨ましい。
リオーネは二人の婚約が決まってから、レナードを義兄様と呼ぶようになった。
こんなかわいい子にそう呼ばれるとやはり気恥ずかしい。
「ところでティアシーア様はミカエルに会いませんでしたか?」
「えっ?!」
その名に明らかに動揺している。
「あなたに挨拶したいと言っていたのですが、まだお会いできていませんか……会場広いですものね」
エレオノーラのエスコートの関係上、今日はレナードだけ別で来ている。
それ故、挨拶後はレナードもミカエルに会っていない
「それはその……」
「ティアシーア姉様はミカエル様から逃げてばかりなのですわ、恥ずかしいんですって」
さらりとリオーネが暴露する。
「リオーネ!」
咎める口調を躱し、リオーネは続ける。
「ミカエル様の事を意識し過ぎて、お話できないそうですの。普段は男性を打ち負かすくらい強いのに。せっかく縁続きになって話すことも増えたのだから、一緒になってほしいわ。そうしたらミカエル様の事も義兄様と呼べるのに」
「リオ、私とミカエル様はそんな関係じゃないのよ」
顔を真っ赤にし、慌てているティアシーアに驚いた。
普段の強気な彼女とまるで違う様子に、エレオノーラに説明を求めてしまった。
「ティアシーアはミカエル様に恋しているのですわ。もし良かったら応援してあげてください」
こそりと耳打ちされる。
耳にかかる吐息に顔が熱くなるが、そこは何とか我慢した。
「そうなのですね」
そう言えばミカエルは気になる人がいると言っていた。
誰なのかは聞いていないが、これはエレオノーラにだけでも伝えておくべきか。
「やっと見つけました」
婚約者となってから初の公式なパーティだ、浮かれないというのが無理な話だ。
一方のレナードはガチガチに固まっている。
高嶺の花だったエレオノーラが婚約者となって、レナードの腕に寄り添っているのだ。
気にならないわけがない。
変な汗が背中を伝う。
「緊張されてますか?」
「はい!」
エレオノーラに聞かれ、返事したが、予期せずレナードの声は裏返ってしまった。
恥ずかしさに赤面していると、エレオノーラが組んだ腕を優しくさすってくれる。
「そうですよね、わたくしも緊張してます。婚約者様と一緒になんて初めてですし、失敗しないか心配です」
ふぅっと小さく息を吐いている。
エレオノーラの言葉に少しレナードの心は軽くなった。
(エレオノーラ様も緊張なされるんだなぁ)
自分と同じ人間なんだ、と再認識させられ、レナードはようやく笑顔が浮かんだ。
「僕以上に失敗する者なんていませんよ、この前みたいになってしまうかもしれないし」
盛大に転んでまたワインをぶちまけてしまうかもしれないと、危惧している。
「今日はわたくしが一緒なのだからそんな事は起きませんわ」
嫋やかにそう答え、エレオノーラはちらりと後ろを見た。
エレオノーラの侍女のニコルはいつも通りくっついてきている。
そして今日はもう一人同行をお願いしてあった。
護衛術師のキュリアンだ。
彼は今後レナードについてもらい、彼を守ったり、サポートする役目を負うことになっている。
「エレオノーラ様から直々に任命されるなんて、一生懸命頑張ります!」
仕事ぶりには心配ないが、やや癖のある性格だ。
レナードの事を悪く思ってはなさそうなので任につけたのだが、寧ろ気に入り過ぎている素振りがある。
キュリアンは男だが、男性が好きだ。
特にイケメンが。
スピリチュアル的な意味で、と言っていたので手を出したりはしないだろうが、何かあればニコルが制裁すると言っていた。
なのでしばらくニコルはキュリアンのお目付け役も兼ねて側にいてくれるようになる。
エレオノーラは好奇の目に嘆息しながら、堂々と胸を張る。
隣にいるレナードが皆気になっているのだろう。
レナードは正式にエレオノーラの婚約者となったので、この間のような嘲笑など表立ってするものはいないだろうが、ひそひそとささやくような声が聞こえる。
エレオノーラの婚約の旨は招待状に書き添えてあったが、目の当たりにして初めて信じてもらえたのか。
レナードのエスコートを見て最初は驚いていたようだ。
どういった経緯で婚約を結んだのか、王家はスフォリア家に弱みを握られたのかと、あらぬ憶測も耳に入る。
しかし、二人で挨拶をしたり、エレオノーラのがレナードを大事にしている様子を見て、ようやっと婚約を信じてもらえそうだ。
「姉上」
「ティア」
本日ティアシーアはドレス姿だ。
エレオノーラの婚約お披露目の日のため、ティアシーアも慣れないながらも参加している。
リオーネも付き添い、にこにこしていた。
「さすが姉上。素敵な挨拶でした。レナード様もかっこよかったですよ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
エレオノーラもレナードも嬉しそうだ。
「そうやって並ぶととてもお似合いですわ。エレオノーラ姉様も、レナード義兄様も美形なんですもの。羨ましいです」
二人ともスッとしたスタイルでバランスが取れている。
小柄なリオーネからしたら本当に羨ましい。
リオーネは二人の婚約が決まってから、レナードを義兄様と呼ぶようになった。
こんなかわいい子にそう呼ばれるとやはり気恥ずかしい。
「ところでティアシーア様はミカエルに会いませんでしたか?」
「えっ?!」
その名に明らかに動揺している。
「あなたに挨拶したいと言っていたのですが、まだお会いできていませんか……会場広いですものね」
エレオノーラのエスコートの関係上、今日はレナードだけ別で来ている。
それ故、挨拶後はレナードもミカエルに会っていない
「それはその……」
「ティアシーア姉様はミカエル様から逃げてばかりなのですわ、恥ずかしいんですって」
さらりとリオーネが暴露する。
「リオーネ!」
咎める口調を躱し、リオーネは続ける。
「ミカエル様の事を意識し過ぎて、お話できないそうですの。普段は男性を打ち負かすくらい強いのに。せっかく縁続きになって話すことも増えたのだから、一緒になってほしいわ。そうしたらミカエル様の事も義兄様と呼べるのに」
「リオ、私とミカエル様はそんな関係じゃないのよ」
顔を真っ赤にし、慌てているティアシーアに驚いた。
普段の強気な彼女とまるで違う様子に、エレオノーラに説明を求めてしまった。
「ティアシーアはミカエル様に恋しているのですわ。もし良かったら応援してあげてください」
こそりと耳打ちされる。
耳にかかる吐息に顔が熱くなるが、そこは何とか我慢した。
「そうなのですね」
そう言えばミカエルは気になる人がいると言っていた。
誰なのかは聞いていないが、これはエレオノーラにだけでも伝えておくべきか。
「やっと見つけました」
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