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崩壊の訪れ(王太子視点)

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「レナン様のご実家に大臣様よりお手紙が届いたそうです」

エリックのところへその手紙が届けられた。

中身も検分され、毒物などが付着してないか調べられてから渡されたものなので、ひと月くらい前に出されたものだろう。

支度金の催促はひっきりなしに届いているが、契約書を盾に無視している。

「ほう。レナンを宰相に復帰させろと」

いよいよ仕事が追いつかなくなってきたのだろう。

過労で倒れたレナンを早く復帰させ、政務につかせろと書いてある。

静養先がわからずレナンの実家に送ったのだろうが、まさかアドガルム領にいるとは思ってないだろう。

レナン自身も静養地がアドガルム領とは知りつつも、今いるところがエリックの別宅とは知らないはずだ。

レナンの自宅は早々に引き払い、今は別の者が住んでいる。
手がかりを見つけるのは困難なはずだ。



レナンの居場所は探されはしないだろうが、厳重に護衛をつけている。
見つけ出せても王太子であるエリックの別邸に襲撃をかける命知らずは、いないと思うが。

エリックの婚約者となったレナンは、ミューズとともに王妃となるための教育が始まった。

ミューズが受ける必要はないが、政治のお手伝いをするためとレナンの力になりたいとの進言でそうなった。

王宮で行われているため、休憩時や昼食時などは四人で歓談することも多い。


一人よりも二人で受けるほうが心の支えとなるだろう。

リンドールでも仲が良かった二人はさらに絆が深まり、本当の姉妹のようだ。






「さてこの手紙をどうするか」

もちろんレナンに見せるつもりはない。

聞けば彼女は民達を心配し、戻ると言いかねないからだ。

手紙が来ることは想定していたので、火に焚べて見なかったことにしてもいいが。

「あまり追い詰めてしまうとリオンの元へリンドールが戻された際に、復興も大変になるだろうしな」
手負いの獣は死に際で途轍もないパワーを発揮する。

引導を渡すタイミングを見極めなければならない。

だが、まだ手持ちのカードが揃ってないのだ。


もうすぐだとは思うのだが。

「最高のパーティにしなくてはならないからな」

どす黒い笑みを浮かべ、楽しそうにリンドールの方角をみつめていた。
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