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第9話 恋の先にあるもの
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妹のミューズの婚約も無事に済んで、最近はよく手紙のやり取りをしているのだが、あちらも愛されてるようで安心している。
レナンはティタンと話したことはあまりないが、ミューズの手紙を見るにとても優しく、頼もしい男性だと知れた。
(今度の長期休みに会えるといいな)
なんて思ってエリックに相談したが、困ったような顔をされる。
「すまない。王太子妃教育で当分帰してあげることは出来なそうだ」
婚約から結婚までの期間も短いため、どうしても時間が足りない。
その言葉にがっかりしていると、エリックが頭を撫でてくれた。
「代わりに通信石をミューズ嬢に送ろう。これで会話はしやすくなるはずだ」
それならば離れていても会話が出来る。
「嬉しいですわ、ありがとうございます」
「いいんだ。俺とレナンが結婚すればミューズ嬢は俺の義妹だし、今だって弟の婚約者だ。いずれ渡すつもりだった」
レナンは喜んだが、そうなるとミューズはティタンからもよく連絡が入り、ミューズの取り合いになってしまった。
「うう、寂しい……」
大好きな妹を取られてしまい、複雑な気分だ。
季節が廻り、王太子妃教育や外交などへの参加も増えてきた。
まだまだ勉強が足りないところもあるが、エリックや国王夫妻も応援してくれる。
最初に国王夫妻に会った時は、王太子を誑かしたなどと怒られるかと思っていたが、目が合った瞬間に泣かれてしまった。
「良かった、こんないい子が来てくれて。エリックを選んでくれてありがとう」
普通は逆ではないだろうか?
エリックの立場からしたら選び放題だろうに。
「困ったことがあったら何でも相談して頂戴。あなたがいなかったら、エリックは王太子も辞めてしまうと言ってたのよ」
「えっ?!」
思わぬ大事に驚いてしまう。
「エリックは本当にカレン様が嫌で嫌でしょうがなかったのよ。それであなたがいいって駄々をこねちゃって」
そんな話は知らない。
レナンはエリックに目を向けると、エリックは目を反らす事なく言う。
「無理なものは無理だ。見ただろ? あの癇癪の様子を」
怒鳴り込んできた様子を思い出す。
「でも、カレン様が嫌ってだけならわたくしじゃなくても……」
「それは違う。母上の言い方が悪かったが、俺はレナン以外を娶る気はなかった」
しっかりと手を握られる。
「レナンへと渡した通信石、優秀な生徒に渡していると言ったがあれは嘘だ。レナンだけしか持っていない。君と話がしたいが為、何とか受け取ってもらえるようにと話を作ったのだ。騙してしまい、すまない」
次から次へと驚く話ばかりだ。
「そうだったのですか、わたくしはてっきりいろんな方とお話をしていたのかと。だって、エリック様は素敵な方で、人気がありますもの」
「そんな人気など、振り向いてもらいたい人に見てもらわねば、意味がない。それに君は諸外国からも認められている。もはや名実ともに王太子妃になれるのは君だ」
握られた手に力が込められる。
「俺は君が好きだ、愛している」
「あ、ありがとうございます」
レナンの顔は真っ赤になる。
義両親になる人たちの前で凄い事を言うものだ、エリックは恥ずかしくないのだろうか。
「そういうわけで返品不可だからしっかりと手綱を握ってやってくれ。エリックは頭は良いんだが、感情面が疎くてな。その辺りも支えてくれると嬉しい」
アルフレッドはそう言ってレナンの肩に手を置く。
「レナンに触れないでください、加齢臭がうつります」
「酷いっ!」
あまりの言葉に、アルフレッドは崩れ落ちる。
「きちんと入浴してるもん、大丈夫だもん……」
鼻を啜り、落ち込んでしまった。
「ちょっと厳しいところはあるけれど、根は優しい子だから末永くよろしくね」
ちょっとではなさそうだけど、王妃からもお願いされる。
レナンはこくりと頷き、了承の意を示した。
ちなみに長期休み後はエリックと約束していたシェスタへの留学へ行ってきた。
本で見たのと全然違う暑い国で、直に生活文化に触れる大切さがわかった。
シェスタの王太子、グウィエンがご馳走してくれた氷菓子は暑い国にぴったりでひんやりとして美味しかった。
ナンパされるのだけは困ったが、それ以外は充実した留学だったとレナンは思う。
あと変わった事といえば、帰ってきたらカレンが除籍されていた。
エリックもいなくなり、新たな婚約者探しに奔走したそうだが、どうやらかなり手荒だったようだ。
様々なトラブルがあったらしいが、誰もレナンには教えてはくれなかった。
レナンはティタンと話したことはあまりないが、ミューズの手紙を見るにとても優しく、頼もしい男性だと知れた。
(今度の長期休みに会えるといいな)
なんて思ってエリックに相談したが、困ったような顔をされる。
「すまない。王太子妃教育で当分帰してあげることは出来なそうだ」
婚約から結婚までの期間も短いため、どうしても時間が足りない。
その言葉にがっかりしていると、エリックが頭を撫でてくれた。
「代わりに通信石をミューズ嬢に送ろう。これで会話はしやすくなるはずだ」
それならば離れていても会話が出来る。
「嬉しいですわ、ありがとうございます」
「いいんだ。俺とレナンが結婚すればミューズ嬢は俺の義妹だし、今だって弟の婚約者だ。いずれ渡すつもりだった」
レナンは喜んだが、そうなるとミューズはティタンからもよく連絡が入り、ミューズの取り合いになってしまった。
「うう、寂しい……」
大好きな妹を取られてしまい、複雑な気分だ。
季節が廻り、王太子妃教育や外交などへの参加も増えてきた。
まだまだ勉強が足りないところもあるが、エリックや国王夫妻も応援してくれる。
最初に国王夫妻に会った時は、王太子を誑かしたなどと怒られるかと思っていたが、目が合った瞬間に泣かれてしまった。
「良かった、こんないい子が来てくれて。エリックを選んでくれてありがとう」
普通は逆ではないだろうか?
エリックの立場からしたら選び放題だろうに。
「困ったことがあったら何でも相談して頂戴。あなたがいなかったら、エリックは王太子も辞めてしまうと言ってたのよ」
「えっ?!」
思わぬ大事に驚いてしまう。
「エリックは本当にカレン様が嫌で嫌でしょうがなかったのよ。それであなたがいいって駄々をこねちゃって」
そんな話は知らない。
レナンはエリックに目を向けると、エリックは目を反らす事なく言う。
「無理なものは無理だ。見ただろ? あの癇癪の様子を」
怒鳴り込んできた様子を思い出す。
「でも、カレン様が嫌ってだけならわたくしじゃなくても……」
「それは違う。母上の言い方が悪かったが、俺はレナン以外を娶る気はなかった」
しっかりと手を握られる。
「レナンへと渡した通信石、優秀な生徒に渡していると言ったがあれは嘘だ。レナンだけしか持っていない。君と話がしたいが為、何とか受け取ってもらえるようにと話を作ったのだ。騙してしまい、すまない」
次から次へと驚く話ばかりだ。
「そうだったのですか、わたくしはてっきりいろんな方とお話をしていたのかと。だって、エリック様は素敵な方で、人気がありますもの」
「そんな人気など、振り向いてもらいたい人に見てもらわねば、意味がない。それに君は諸外国からも認められている。もはや名実ともに王太子妃になれるのは君だ」
握られた手に力が込められる。
「俺は君が好きだ、愛している」
「あ、ありがとうございます」
レナンの顔は真っ赤になる。
義両親になる人たちの前で凄い事を言うものだ、エリックは恥ずかしくないのだろうか。
「そういうわけで返品不可だからしっかりと手綱を握ってやってくれ。エリックは頭は良いんだが、感情面が疎くてな。その辺りも支えてくれると嬉しい」
アルフレッドはそう言ってレナンの肩に手を置く。
「レナンに触れないでください、加齢臭がうつります」
「酷いっ!」
あまりの言葉に、アルフレッドは崩れ落ちる。
「きちんと入浴してるもん、大丈夫だもん……」
鼻を啜り、落ち込んでしまった。
「ちょっと厳しいところはあるけれど、根は優しい子だから末永くよろしくね」
ちょっとではなさそうだけど、王妃からもお願いされる。
レナンはこくりと頷き、了承の意を示した。
ちなみに長期休み後はエリックと約束していたシェスタへの留学へ行ってきた。
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シェスタの王太子、グウィエンがご馳走してくれた氷菓子は暑い国にぴったりでひんやりとして美味しかった。
ナンパされるのだけは困ったが、それ以外は充実した留学だったとレナンは思う。
あと変わった事といえば、帰ってきたらカレンが除籍されていた。
エリックもいなくなり、新たな婚約者探しに奔走したそうだが、どうやらかなり手荒だったようだ。
様々なトラブルがあったらしいが、誰もレナンには教えてはくれなかった。
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