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第7話 共に生きる

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 新しい爵位、新しい領地を得て、カラムはまた王城の騎士団へと戻る。

 カラムの領地はクライム伯爵のすぐ隣であった。

「お父様の近くなんて嬉しいわ」
 母のいないリューフェにとって父は唯一の家族である。そんな家族の側に住めるなんて嬉しい。

 全ては王家とカラムの配慮であった。

「なぜリューフェ夫人を娶ろうと思ったんだ?」
 カルロスの言葉にカラムはただ微笑む。

「好きになったから、ですね」
 いっぱいあるが、伝えきれる気はしないし、そもそもカルロスにわざわざ言う事はない。

 カラムがリューフェを知ったのはいつかのパーティだ。

 どこか頼りなさげで真面目な彼女は遠めから見ても危うかった。

 すぐに人に騙されそうな雰囲気を隠しもしないで出していたし、婚約者というオルフも、リューフェの友人であったミラージュと何やら悪そうな顔をしていた。

 ずっと気にして見ていたが、リューフェを想う気持ちは段々と強まり、守ってあげたいという気持ちが愛に変わるのはけして不思議なことではなかった。

 オルフ達が何かをする前に止めようと思ったが、その前に自分がまさか嵌められるとは。

 リューフェの事に気を取られていたのもあるが、まさか自分が切り捨てられるとは思っていなかった。

 真面目にコツコツ働いてきたのにと、愛情が憎悪に変わるのは早かった。

 そして程なくして友人のルアンから連絡が入る。リューフェが断罪され、辺境地へと飛ばされた事を。

 偶然とはいえ自分の側に来てくれたのは丁度良かった。そして修道院という場所も丁度いい。自分も近づけないが、他の男も近づけない。

 機動力を生かしj辺境伯には自ら見張りをすると志願した。

 万が一にもリューフェを騎士団の者達に見せたくなかったのもある。

 おっとりとして優しく、そして美人なリューフェを見初める者はいくらでもいると思ったのだ。

 偶然にも会う事が叶い、話をすることが出来た。その後は求婚の為に訪れているという強引な手を使い、日々元気でいるかを確認に向かっていた。

 戸惑い恥ずかしがる様は可愛かったが、元婚約者がリューフェを愛人にしようという話を聞いて、沸騰する思いだった。

 表向きはメイドになる事で罪を許して修道院から出してあげて、裏ではミラージュに内緒で妾にするつもりだったと聞いて、カラムはオルフをすぐさま殺しに行こうかと思った。

 だが、普通であればミラージュが許さない。メイドとしてこき使うならともかく、妾になんて絶対にさせないだろう。

 ならばとリューフェを陥れる策として最低男に言い寄られている情報を流す。

 カラムの評判は最低だし、そんな男がリューフェを強引に妻にしようとしていると聞けば二人は興味を持つと考えたのだ。

 そうして何とか妻となってもらい、今度は堂々と守れるようになった。

 二人きりの生活は幸せだった。

 平民なのだから自分達で家事を分担し、話し合い、楽しく暮らす。

 そんな幸せな生活を送るうちにカラムとリューフェの冤罪の証拠が上がったと王太子より連絡をくれた。

 これで悪評を覆すことが出来ると意気揚々と王都へと戻る。

 リューフェの為に二人の悪評を覆しておく必要があった。心優しいリューフェが虐げられていていいわけがない。

 だって彼女は自らの食い扶持がないと知るや否や、自分で森に出て食料を探したり、薪を拾いに出ていた。カラムからの差し入れも独り占めすることなくみんなと分け合って食べている、とても優しい女性だ。

 そんな彼女から搾取していたオルフとミラージュはもう表世界に出られないようにした。奪い取られたクライム家の財産も領地を切り売りさせて返却させる。

 カラムの実家にも同様に領地の切り売りをさせ、慰謝料を払ってもらった。

 これからの事を考えれば資産はいくらあっても足りない。

「カルロス様のお陰で、ようやく好きな人と穏やかに暮らせそうです。ありがとうございます」
カラムは改めて王太子に頭を下げた。そこに打算があっても力を貸してくれたのは事実だ。

「お礼なら働いて返してくれ。お前の力はとても貴重だ、そしてその忠義心もな」
 真面目で有能なカラムを王太子は手放すのを惜しんでいた。

 何とか連れ戻そうと画策していた中で、リューフェという女性と結婚したと聞いた時は驚いた。

(最初は修道院出たさに誑かしただけと思ったが、なかなかお似合いの二人だな)
 カラムも真面目だが、リューフェもとても真面目だ。そして優しい。

「俺の力を買ってくれてありがとうございます。ですが今日は早く帰らせてもらいますよ、リューフェが料理をして、待ってくれていますからね」
 伯爵夫人となったリューフェだが、今も時折料理をする。

 カラムに頼まれた時などの特別な時だけしかしないので、とても貴重だ。

 豪華なものではなく素朴な料理ばかりだが、カラムはリューフェの作ったものなら何でも好きだった。

 それくらい惚れている。

 カラムはあっという間に空を飛んで帰っていった。

 馬車や馬での移動と違って遮るものが何もない空の移動はとても早い。

「ただいま!」

「おかえりなさい、カラム様」
 恭しく礼をするリューフェを抱き上げ、キスをする。

「今日も可愛らしいな。結婚してくれ」

「もうしてますよ」
 くすりと笑うリューフェが可愛くてまたキスをした。

 徐々にだが、リューフェは心を許してくれて可愛らしい笑顔を頻繁に見せてくれるようになっている。

 恥ずかしがるような顔も、はにかむような笑顔も全てが愛おしい。

「それでも何回だって言いたいんだ。愛している」
 真剣な声音でそう言われ、突然のギャップに顔を真っ赤にしてしまった。

「わ、私も愛してます……」
 か細い声で言われ、ますますカラムも上機嫌になった。

「可愛い!」
 玄関先でいつまでもいちゃつく二人は執事に声をかけられるまで愛を伝えあっていた。

 とても幸せそうな二人はとても悪役とは思えなかった。


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