43 / 60
第43話 獅子の国 協力
しおりを挟む
「つまりレーヴェの者が謀ったという事ですか?」
「その可能性はあるが、不可解な事がある。その兵士は兜を被り、顔が見えなかった。そして声も聞いたことがなくおかしいと思ったそうだが」
その決定打として違法薬物の匂いだ。
しかしそれはミューズだけがわかるくらいのもので、逆を言えば他の者は感じなかった。
それ故に話をしてもなかなか信じてもらえず、やっとの思いで護衛を説得し、ティタンに知らせることが出来たそうだ。
「もう少し早ければ確保が出来たかもしれないな。今更言っても後の祭りだが」
ティタンはぎりっと歯を食いしばり悔しそうにしている。
「しかしファルケの者達はどこに行ったのでしょう? 部屋から脱走したとしても王城から出ることは出来ないでしょうに」
「探させたが王城にいないし、目撃者もいない。妙なんだ。王城はそこまで簡単な造りではないし、あちこちに人もいるのだが。誰にも見られずに外に逃げるなんて、普通は出来ない。余程この城の造りに慣れてるものか」
「つまり、連れ出したの者以外にも協力者がいるという事でしょうか」
「そうだろうな。あまりにも手際が良過ぎる」
内通者が複数いると考えるのが妥当だ。
その内通者達が二コラ達を脱走したように見せかけ、どこかへと連れ去ってファルケとレーヴェを仲違いさせ、関係を悪化させようとしたのだろうが。
「使者が僕だったのは予想外だったことでしょう。生粋のファルケの者だけだったら、また対応は違ったでしょうから」
話し合いというか、言い争いになった可能性もあるし、それと使者の対応が第二王子のティタンであったことも大きいだろう。
これが厳格な国王や軟派な王太子だったらまた変わったかもしれない。
(感情に任せて動くように見えるけれど意外と慎重だものな)
今も飛び出すことはなく、次にどう動くかを考えているようだ。
「エリック殿はどこまで見透かしていたのか、不思議だな。寄こされたのがリー殿で良かった、国の損得なく話をしてくれる」
「ですから僕を信じ過ぎないでくださいってば、今はファルケの使者なんですよ」
(この人本当に危なっかしい)
無条件で信じる程の信用性はまだないはずなのに。
「もともとはファルケとレーヴェの関係性を悪くしないように来ただけなので、どちらの国が正しいとかは考えていませんでした。今の僕は後ろ盾がない状態なので、この問題を解決すればファルケがバックについてくれるという約束で来ました。そして二コラという者が僕の大切なマオの兄なのかを確認するために訪れたのです」
マオは大きく頷き、期待の目をしている。
名前と身体的特徴はあっているから九割九分間違いないと思うのだが、会うまではわからない。
「色々複雑な内情があるようだな。しかしファルケの使者としてここに居るのならば、ぜひこの問題の解決に乗り出して欲しい。恐らくエリック殿もそれを見越していたのではないかと思う」
何となくリオンは嫌な予感がした。
「俺は今この国を離れられない、だからリー殿に頼む。この事件を解決してくれ」
リオンはあからさまに嫌な顔を見せる。
人前でのその表現はとても珍しいものだった。
「その可能性はあるが、不可解な事がある。その兵士は兜を被り、顔が見えなかった。そして声も聞いたことがなくおかしいと思ったそうだが」
その決定打として違法薬物の匂いだ。
しかしそれはミューズだけがわかるくらいのもので、逆を言えば他の者は感じなかった。
それ故に話をしてもなかなか信じてもらえず、やっとの思いで護衛を説得し、ティタンに知らせることが出来たそうだ。
「もう少し早ければ確保が出来たかもしれないな。今更言っても後の祭りだが」
ティタンはぎりっと歯を食いしばり悔しそうにしている。
「しかしファルケの者達はどこに行ったのでしょう? 部屋から脱走したとしても王城から出ることは出来ないでしょうに」
「探させたが王城にいないし、目撃者もいない。妙なんだ。王城はそこまで簡単な造りではないし、あちこちに人もいるのだが。誰にも見られずに外に逃げるなんて、普通は出来ない。余程この城の造りに慣れてるものか」
「つまり、連れ出したの者以外にも協力者がいるという事でしょうか」
「そうだろうな。あまりにも手際が良過ぎる」
内通者が複数いると考えるのが妥当だ。
その内通者達が二コラ達を脱走したように見せかけ、どこかへと連れ去ってファルケとレーヴェを仲違いさせ、関係を悪化させようとしたのだろうが。
「使者が僕だったのは予想外だったことでしょう。生粋のファルケの者だけだったら、また対応は違ったでしょうから」
話し合いというか、言い争いになった可能性もあるし、それと使者の対応が第二王子のティタンであったことも大きいだろう。
これが厳格な国王や軟派な王太子だったらまた変わったかもしれない。
(感情に任せて動くように見えるけれど意外と慎重だものな)
今も飛び出すことはなく、次にどう動くかを考えているようだ。
「エリック殿はどこまで見透かしていたのか、不思議だな。寄こされたのがリー殿で良かった、国の損得なく話をしてくれる」
「ですから僕を信じ過ぎないでくださいってば、今はファルケの使者なんですよ」
(この人本当に危なっかしい)
無条件で信じる程の信用性はまだないはずなのに。
「もともとはファルケとレーヴェの関係性を悪くしないように来ただけなので、どちらの国が正しいとかは考えていませんでした。今の僕は後ろ盾がない状態なので、この問題を解決すればファルケがバックについてくれるという約束で来ました。そして二コラという者が僕の大切なマオの兄なのかを確認するために訪れたのです」
マオは大きく頷き、期待の目をしている。
名前と身体的特徴はあっているから九割九分間違いないと思うのだが、会うまではわからない。
「色々複雑な内情があるようだな。しかしファルケの使者としてここに居るのならば、ぜひこの問題の解決に乗り出して欲しい。恐らくエリック殿もそれを見越していたのではないかと思う」
何となくリオンは嫌な予感がした。
「俺は今この国を離れられない、だからリー殿に頼む。この事件を解決してくれ」
リオンはあからさまに嫌な顔を見せる。
人前でのその表現はとても珍しいものだった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
安眠にどね
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる