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第25話 狼の国 猫拾いました

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 青い髪と耳、そしてふさふさの尻尾を左右に振りながら、一人の青年は街の中を歩いていた。

 そんな中、道を少し外れたところで腰を下ろしている人物を見かける。

「大丈夫?」
 黒い耳と尻尾、小柄な体躯は所々汚れていた。大丈夫そうには見えないのだが、ついそう聞いてしまう。

「平気です、近寄らないで」
 声の感じからすると若い女性だ。顔は俯いていて見えない。

「大丈夫じゃなさそうだね、僕と一緒においで。手当てしてあげるよ」
 純然たる親切心だ、他意はない。

「いいです、怪しいし」
 そりゃそうだとリオンも思うが、かと言って放っておけない。

「騙さないよ。じゃあここで待てる? 手当ての道具を持ってくるからさ」
 リオンは素早く家に帰り、薬箱を持って帰ってくる。

「待っててって言ったのに」
 当たり前だが、少女の姿は最早なかった。





「よけるですよ」
 黒毛玉はガルガルと牙を剥き出しにしている。

 その対象は目の前で道を塞ぐ男達だ。

「薄汚いガキが。お前が避けたらいいだろ」

「……」
 毛玉は何かを言うのを諦め、ぐるりと大きく迂回しようとするが、男たちはわざとで行く手を阻む。

「どけよ」
 男たちのその言葉で、毛玉は勢いよく飛びかかった。

「痛てっ!」
 非力ながらも鋭い爪が男の肌を傷つけ、血が流れる。

「ぎゃう!」
 毛玉は男達に殴られ蹴られ、飛ばされた。

 その痛みに体を丸めて耐える。

「テメェ、よくも!」
 傷つけられ血を流す男は毛玉を執拗に蹴り飛ばしていた。

「そこまでにしなよ」
 少年が男の蹴りを手で止め、忠告をする。

「何だテメェ、って、リオン様?!」
 現れた人物に男達は驚いた。

「寄ってたかって一人を虐めるなんて。これが誇り高き狼族か?」
 リオンは怒りを露わにし、男を投げ飛ばす。

 その場にいた者たちを叩きのめし、ぼろぼろの毛玉を拾って家路につく。

「う~ん、この国も随分荒れてきた」
 国王が弱り、王太子も消えた。

 そのおかげでこのようなならず者が増えている、他国でも問題が生じていると噂だ。

 明らかに統率が取れなくなってきている。

(僕はどうしたらいいんだろう)
 国に尽くすか見捨てるか。

 途方に暮れつつ、毛玉を抱えて家路に向かって歩き続ける。

    
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