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ハインツの今後
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「あの男…いかにして後悔させてやろう」
エリックの目は怒りでギラギラとしていた。
ただハインツが疑わしいというだけでは駄目だ。
大臣との繋がりを示す明確な証拠を見つけて、リンドールへ乗り込まねば、切り捨てられてしまう。
大臣諸共捕縛をせねば、トカゲの尻尾切りにされて、ディエスの冤罪を覆せない。
「父上、完膚なきまでに叩き潰しましょう」
「そうだな。未来の娘のためにも」
話し合いにはぜひエリックも行きたいと志願すると、レナンもついていきたいと言った。
「ハインツ様がどのような考えだったのか、知りたいのです」
婚約者であった男が父を陥れたのだ。
レナンだって一言言わねば気がすまない。
「王族が行くのだ。無理矢理捕縛されることなどないが、充分気をつけよう」
エリックがついていれば大概は大丈夫だが、敵地に乗り込むのだから、用心はするに越したことがない。
「リンドール国王に手紙を出した。名指してハインツの登城をお願いし、その養父、ミハイラス伯爵も連れてきてもらうよう言った。他にも当日はロキ殿にベリト子爵をつれてきてもらう」
麻薬を使い、ハインツが懐柔した者たちだ。
「当日を楽しみにしよう」
アルフレッドは厳かに息子に言い放つ。
「レナン嬢を手に入れたくば、力を示せ」
守るべきもののため。
「わかっています」
もう離さぬように。他の男の元へなど行かせぬように。
エリックの役目はレナンを手放さぬ事だ。
正式にエリックの婚約者として扱われるべく、レナンには護衛術師がつけられる。
「女性の騎士がいなくてな…」
エリックは少々嫌そうにしつつもキュアをレナンにつけた。
「腕は立つのだが…ちょっと性癖が」
「性癖?」
エリックから驚きの言葉を言われ、ちょっと怖くなった。
「大丈夫ですよ、エリック様。レナン様に変な事はしません」
緑の髪をした女性がそう言うとレナンの後ろに立っていた。
「ひっ!」
急に現れた女性にびっくりして変な声が出る。
「あぁ、とっても可愛らしい。やはり女性はいいですね」
口元の涎を拭きつつ、キュアと呼ばれた女性はぴしっとする。
サイドテールを揺らし、きりっとした目元はうっとりとレナンを見ている。
「驚かせるな。ドアからしっかり入り直せ」
エリックが呆れたようにため息をついた。
「ですが、エリック様が四六時中見張ってろってずっと前から…「キュア!」
控えていたニコラの大声で言葉の続きがかき消される。
「?」
ニコラの様子に訝しげになる。
「失礼しましたレナン様。キュアは幻影魔法の使い手でして、驚かせてしまいましたよね。魔力も高く護衛には適してるかと思います。その、少々女性好きですが、これからよろしくお願いします」
「あたし一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」
キュアは勢い良く頭を下げた。
「こちらこそよろしくね」
女性好きという単語が引っかかったが。
キュアは護衛としてだけではなく、従者としても甲斐甲斐しく手伝ってくれる。
「すべすべ、ふわふわ、なんと麗しい……今後は堂々と一緒にいられるなんて、なんて幸せ」
マッサージや髪を梳かす際も何やらぶつぶつ言っていた。
「……」
レナンは何も言わず、キュアはこういう女性なのだと思って受け入れた。
怪しい呟きは聞かなかったことにしようと、心に決めながら。
エリックの目は怒りでギラギラとしていた。
ただハインツが疑わしいというだけでは駄目だ。
大臣との繋がりを示す明確な証拠を見つけて、リンドールへ乗り込まねば、切り捨てられてしまう。
大臣諸共捕縛をせねば、トカゲの尻尾切りにされて、ディエスの冤罪を覆せない。
「父上、完膚なきまでに叩き潰しましょう」
「そうだな。未来の娘のためにも」
話し合いにはぜひエリックも行きたいと志願すると、レナンもついていきたいと言った。
「ハインツ様がどのような考えだったのか、知りたいのです」
婚約者であった男が父を陥れたのだ。
レナンだって一言言わねば気がすまない。
「王族が行くのだ。無理矢理捕縛されることなどないが、充分気をつけよう」
エリックがついていれば大概は大丈夫だが、敵地に乗り込むのだから、用心はするに越したことがない。
「リンドール国王に手紙を出した。名指してハインツの登城をお願いし、その養父、ミハイラス伯爵も連れてきてもらうよう言った。他にも当日はロキ殿にベリト子爵をつれてきてもらう」
麻薬を使い、ハインツが懐柔した者たちだ。
「当日を楽しみにしよう」
アルフレッドは厳かに息子に言い放つ。
「レナン嬢を手に入れたくば、力を示せ」
守るべきもののため。
「わかっています」
もう離さぬように。他の男の元へなど行かせぬように。
エリックの役目はレナンを手放さぬ事だ。
正式にエリックの婚約者として扱われるべく、レナンには護衛術師がつけられる。
「女性の騎士がいなくてな…」
エリックは少々嫌そうにしつつもキュアをレナンにつけた。
「腕は立つのだが…ちょっと性癖が」
「性癖?」
エリックから驚きの言葉を言われ、ちょっと怖くなった。
「大丈夫ですよ、エリック様。レナン様に変な事はしません」
緑の髪をした女性がそう言うとレナンの後ろに立っていた。
「ひっ!」
急に現れた女性にびっくりして変な声が出る。
「あぁ、とっても可愛らしい。やはり女性はいいですね」
口元の涎を拭きつつ、キュアと呼ばれた女性はぴしっとする。
サイドテールを揺らし、きりっとした目元はうっとりとレナンを見ている。
「驚かせるな。ドアからしっかり入り直せ」
エリックが呆れたようにため息をついた。
「ですが、エリック様が四六時中見張ってろってずっと前から…「キュア!」
控えていたニコラの大声で言葉の続きがかき消される。
「?」
ニコラの様子に訝しげになる。
「失礼しましたレナン様。キュアは幻影魔法の使い手でして、驚かせてしまいましたよね。魔力も高く護衛には適してるかと思います。その、少々女性好きですが、これからよろしくお願いします」
「あたし一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」
キュアは勢い良く頭を下げた。
「こちらこそよろしくね」
女性好きという単語が引っかかったが。
キュアは護衛としてだけではなく、従者としても甲斐甲斐しく手伝ってくれる。
「すべすべ、ふわふわ、なんと麗しい……今後は堂々と一緒にいられるなんて、なんて幸せ」
マッサージや髪を梳かす際も何やらぶつぶつ言っていた。
「……」
レナンは何も言わず、キュアはこういう女性なのだと思って受け入れた。
怪しい呟きは聞かなかったことにしようと、心に決めながら。
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