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第185話 恋とは大変
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「ないない。兄様も義姉様もそんな事思わないよ」
「「リオン様」」
突如現れたリオンにイシスもカイルも驚いた。
「僕もそんなことはしない。イシス様に手を出すなんて、微塵もかけらもないから安心して欲しい」
リオンが手をぶんぶんと振り、否定を示す。
「カイル様。レナン様に何とか近づきたいからってイシス様に変な事を吹き込まないようにしてください」
リオンの後ろにいるカミュが忠告するように言う。
「えっ?」
「カイル様は、レナン義姉様が好きなんだよね。だから隙あらば恋人の座に収まりたいんだよ」
カイルの顔がさっと朱に染まる。
王太子妃であるレナンと親密になるには、恋人とか愛人になるしかない。
「政略結婚で結ばれた王族や貴族でよくあるけど、子さえ設けなければ恋人を持つというのは珍しくないものね」
「エリック様は身体も不自由になられて、レナン様を支えるのが難しくなっている。イシス様が名実共にリオン様を支える存在になれば、レナン様も俺を必要としてくれるかもしれないじゃないですか」
目線を逸らし、不貞腐れる様な口調でそういうカイルを見て、ようやくイシスもわかった。
「なるほど。何故私を焚きつけるようなことを言うのかと、不思議に思っていたけど、私が前例のない側室になったからなのね」
側室と恋人ではだいぶ立場は違うが、意図はわかる。
諦めた恋心に希望を見てしまったのだろう。リオンはそっとイシスに耳打ちをした。
「カイル様が送られてきた理由は分かった? 真面目で優秀なんだけど、だいぶ拗らせている」
「……そのようね」
臆せずにこのような事をリオンやその側近がいる中で言うのだから、ある意味肝が据わっている。
それにしてもエリックを敵に回すような言動をするとは信じられなかった。
「こういう所がなければちょっと堅物なだけのいい文官なんだけど、このままだとエリック兄様の片腕になるには難しいって言われてね。現宰相に鍛え直して欲しいって寄こされたんだよね」
「はぁ……」
何とも言えない表情のイシスにリオンはにっこりと笑顔を見せる。
「だからイシス様、カイル様をよろしく。このまま変わらなければずっと帝国にいるようになるし、もしかしたら宰相としてずっと一緒に働くかもしれないから」
「はぁ?! 何を勝手な事を!」
「カイル様、しばらくイシス様との連絡係をお願いするね。それと話し相手も」
イシスは面倒ごとを押し付けられたことに不満を言うが、リオンは黙殺する
「イシス様ならレナン義姉様の事も知っているし、きっと話も合うさ」
リオンは今度はカイルに耳打ちする。
「彼女の監視もあるからさ。それも含めて今後離宮に来るのはカイル様に任せるよ。良い働きをしてくれたら、アドガルムに早く戻れるように進言するからね」
優しい笑みを保ちながらそんな事を呟く。
「本当ですね?」
「もちろん」
(エリック兄様が納得するような働きをするならば、だけどね)
許可が下りるのはだいぶ先の事になるだろう。
帝国が落ち着き、イシスの重荷が解けるくらいの年数が経てば、カイルも相応に落ち着き、また少しはまともな性格と柔軟さを持つことが出来るだろう。
頭は良いし、勘もいい。だが変なところでずれている。
そこを修正すればきっと父親のように良き宰相になれそうなのに。
「恋は人を愚かにしてしまうなぁ。人の事は言えないけど」
悪い男ではないのだが、兄の邪魔をするようでは困る。
的を得た意見を言えるのに、レナンが絡むと途端にポンコツになる。
「目下の問題はギルナスに許可をとってない事だよね」
無断でこのような面倒な男を押し付けたのだから、後で山のような文句を言われるかもしれない。
まぁそんな事くらいでカイルを引き取ってくれるならが安いものだろう。
(あと兄様もう元気なんだけど、言うとまた面倒臭そうだな。暫く内緒にしとこ)
「「リオン様」」
突如現れたリオンにイシスもカイルも驚いた。
「僕もそんなことはしない。イシス様に手を出すなんて、微塵もかけらもないから安心して欲しい」
リオンが手をぶんぶんと振り、否定を示す。
「カイル様。レナン様に何とか近づきたいからってイシス様に変な事を吹き込まないようにしてください」
リオンの後ろにいるカミュが忠告するように言う。
「えっ?」
「カイル様は、レナン義姉様が好きなんだよね。だから隙あらば恋人の座に収まりたいんだよ」
カイルの顔がさっと朱に染まる。
王太子妃であるレナンと親密になるには、恋人とか愛人になるしかない。
「政略結婚で結ばれた王族や貴族でよくあるけど、子さえ設けなければ恋人を持つというのは珍しくないものね」
「エリック様は身体も不自由になられて、レナン様を支えるのが難しくなっている。イシス様が名実共にリオン様を支える存在になれば、レナン様も俺を必要としてくれるかもしれないじゃないですか」
目線を逸らし、不貞腐れる様な口調でそういうカイルを見て、ようやくイシスもわかった。
「なるほど。何故私を焚きつけるようなことを言うのかと、不思議に思っていたけど、私が前例のない側室になったからなのね」
側室と恋人ではだいぶ立場は違うが、意図はわかる。
諦めた恋心に希望を見てしまったのだろう。リオンはそっとイシスに耳打ちをした。
「カイル様が送られてきた理由は分かった? 真面目で優秀なんだけど、だいぶ拗らせている」
「……そのようね」
臆せずにこのような事をリオンやその側近がいる中で言うのだから、ある意味肝が据わっている。
それにしてもエリックを敵に回すような言動をするとは信じられなかった。
「こういう所がなければちょっと堅物なだけのいい文官なんだけど、このままだとエリック兄様の片腕になるには難しいって言われてね。現宰相に鍛え直して欲しいって寄こされたんだよね」
「はぁ……」
何とも言えない表情のイシスにリオンはにっこりと笑顔を見せる。
「だからイシス様、カイル様をよろしく。このまま変わらなければずっと帝国にいるようになるし、もしかしたら宰相としてずっと一緒に働くかもしれないから」
「はぁ?! 何を勝手な事を!」
「カイル様、しばらくイシス様との連絡係をお願いするね。それと話し相手も」
イシスは面倒ごとを押し付けられたことに不満を言うが、リオンは黙殺する
「イシス様ならレナン義姉様の事も知っているし、きっと話も合うさ」
リオンは今度はカイルに耳打ちする。
「彼女の監視もあるからさ。それも含めて今後離宮に来るのはカイル様に任せるよ。良い働きをしてくれたら、アドガルムに早く戻れるように進言するからね」
優しい笑みを保ちながらそんな事を呟く。
「本当ですね?」
「もちろん」
(エリック兄様が納得するような働きをするならば、だけどね)
許可が下りるのはだいぶ先の事になるだろう。
帝国が落ち着き、イシスの重荷が解けるくらいの年数が経てば、カイルも相応に落ち着き、また少しはまともな性格と柔軟さを持つことが出来るだろう。
頭は良いし、勘もいい。だが変なところでずれている。
そこを修正すればきっと父親のように良き宰相になれそうなのに。
「恋は人を愚かにしてしまうなぁ。人の事は言えないけど」
悪い男ではないのだが、兄の邪魔をするようでは困る。
的を得た意見を言えるのに、レナンが絡むと途端にポンコツになる。
「目下の問題はギルナスに許可をとってない事だよね」
無断でこのような面倒な男を押し付けたのだから、後で山のような文句を言われるかもしれない。
まぁそんな事くらいでカイルを引き取ってくれるならが安いものだろう。
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