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第140話 因果
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キールに斬られ、左腕も魔力も失くしたダミアンは血を吐き、倒れる。
取り囲むは生き残っていた帝国兵だ。
「よくも仲間を……!!」
見下ろすその目は憎悪に塗れていた。
痛みと失血、そして魔力切れで防御壁を上手く作れない。
帝国兵はそれぞれの武器を手に、ダミアンを囲んでいた。
「お前達みたいな雑魚になんて……!」
まさかの事だ。
アドガルムの者に殺されるならば、まだわかる。
まさか帝国兵に裏切られるとは。
「お前ら、本当に逆ら……」
ダミアンは最後まで言葉は紡げなかった。
次から次に剣が、槍が、ダミアンの体に突き刺さる。
その様子に思わず吐き気がこみ上げてくる。
「うっ……」
「見ない方がいい」
凄惨な私刑の様子にウィグルは目を逸らし、カミュが庇うようにして立つ。
「止めないですか?」
マオは冷静にその最期を見ていた。
「止めても、もう生きてはいないだろう。それだけの事をしてきたわけだし」
結界を張る魔道具も回収し、リオンはダミアンだったものを見る。
もはや原型をとどめていないし、確認する気にもならなかった
「彼もかなりの人を甚振って生きてきたみたいだし、身から出た錆だよ。でも、悲しいね」
「……」
サミュエルも複雑な気持ちで見ている。
愛する人に裏切られていたら、サミュエルもあのような結末を送っていたかもしれない。
「では俺は急ぎアドガルムへと戻ります」
双剣の血糊を払い、剣を収める。
「何か伝言はありますか?」
キールの言葉に皆が悩む。
「シフに必ず帰ると伝えてください」
サミュエルはそれだけ伝える。
「そうだね。とりあえず皆に生きて帰るよって伝えといて」
リオンはそう言うと魔石を使用し、魔力の回復を行なう。そしてサミュエルから渡された造血剤を貰って飲んだ。
付け焼刃だが、ないよりはましだ。
「さぁ、本番はこれからだ。ティタン兄様の元へ向かうよ。皇帝の首を貰うまでは帰らないからね」
リオンはにやりと笑い、皇宮の方を睨みつけた。
「どちらが首をとるのが早いかな」
アドガルムが墜ちるのが早いかヴァルファル帝国を墜とすのが早いか。
「負けないとは思うんだけどね」
兄二人もいるし、こうして厄介なのも倒せた。
二人の皇子の力と、皇宮の戦力がわからない。
「負けられては困りますね。アドガルムは死守しますので、ぜひリオン様達は皇帝を討ってください。必要ならば父を送り込みます」
「そちらの手が空いたら、ぜひお願いするよ」
結界の維持で大変だろうロキに期待し過ぎるのも良くはないが、正直不安はある。
(万が一、万が一兄様達が負けたら?)
リオン程度の戦力は失っても大したことはないだろう。
だが、エリックやティタンを失ってしまえば戦況は危うい。
「行ってみるしかないよね」
考えても仕方ない事だ。
キールを見送った後、マオはリオンの手を取る。
「生きていて良かったです……」
ようやく触れられて安心する。
まだ終わったわけではないが、こうして温かさを感じられて嬉しい。
「皇宮に行くという事は、これ以上にもっと危険なのですよね」
「そうだね」
ダミアン一人でこんなにも手こずってしまったのは痛かった。
ボロボロの状態で行くのだし、敵の本陣に行くわけだから、危険度は上がる。
「ちょっとだけ屈んで欲しいのです」
頼まれ、耳を寄せるように屈めば、マオが唇を重ねてくれる。
「マオ?」
珍しい行動だ。
「もうあんな危険な事はしないで」
本当はリオンが動きを封じている間にダミアンを倒す予定だった。
なのに思った以上にダミアンは立て直すのが早く、またマオもリオンが思った以上に捨て身になるから、動揺で初手が遅れてしまった。
その責任も感じ、リオンの回復に専念できるように自身が囮になったのだ。
「私よりも早く死なないで」
顔を赤くし、口調を変えてまで訴えるマオが可愛くて、疲れも忘れて抱きしめてしまった。
「うん、約束する。絶対に君より先に死なないし、君が死んだら後を追うから」
「それは駄目なのです! リオン様にはしっかり生きててもらわないといけないのです、ぼくと心中なんて駄目ですよ!」
じたばたともがくマオを抑え込む。
「じゃあマオも危ない事をしないで。あんな風に囮になるなんて、危険すぎて冷や冷やしたよ」
わざと防御壁を張ってなかったとはいえ、リオンの腹部をあっさりと貫いた男だ。
もしも攻撃を受けていたら、マオの細い体など、あっという間に切り裂けただろう。
「無事だったから良かったけど、本当に何かあったら、刺し違えても殺すつもりだったよ」
その前にキールが来たから僥倖だった。
「無事にアドガルムに戻れたら、僕もシグルド様に鍛えてもらおう」
多少は鍛えているとはいえ、まだまだだ。
もう少し強くならないとマオを守れないと、腕に力を込める。
「……あまりムキムキなのは嫌なのです」
ティタンのようになるリオンを想像し、げんなりとしてしまった。
「程々にしておく」
苦笑するリオンはもう少しだけ、とマオを抱きしめていた。
取り囲むは生き残っていた帝国兵だ。
「よくも仲間を……!!」
見下ろすその目は憎悪に塗れていた。
痛みと失血、そして魔力切れで防御壁を上手く作れない。
帝国兵はそれぞれの武器を手に、ダミアンを囲んでいた。
「お前達みたいな雑魚になんて……!」
まさかの事だ。
アドガルムの者に殺されるならば、まだわかる。
まさか帝国兵に裏切られるとは。
「お前ら、本当に逆ら……」
ダミアンは最後まで言葉は紡げなかった。
次から次に剣が、槍が、ダミアンの体に突き刺さる。
その様子に思わず吐き気がこみ上げてくる。
「うっ……」
「見ない方がいい」
凄惨な私刑の様子にウィグルは目を逸らし、カミュが庇うようにして立つ。
「止めないですか?」
マオは冷静にその最期を見ていた。
「止めても、もう生きてはいないだろう。それだけの事をしてきたわけだし」
結界を張る魔道具も回収し、リオンはダミアンだったものを見る。
もはや原型をとどめていないし、確認する気にもならなかった
「彼もかなりの人を甚振って生きてきたみたいだし、身から出た錆だよ。でも、悲しいね」
「……」
サミュエルも複雑な気持ちで見ている。
愛する人に裏切られていたら、サミュエルもあのような結末を送っていたかもしれない。
「では俺は急ぎアドガルムへと戻ります」
双剣の血糊を払い、剣を収める。
「何か伝言はありますか?」
キールの言葉に皆が悩む。
「シフに必ず帰ると伝えてください」
サミュエルはそれだけ伝える。
「そうだね。とりあえず皆に生きて帰るよって伝えといて」
リオンはそう言うと魔石を使用し、魔力の回復を行なう。そしてサミュエルから渡された造血剤を貰って飲んだ。
付け焼刃だが、ないよりはましだ。
「さぁ、本番はこれからだ。ティタン兄様の元へ向かうよ。皇帝の首を貰うまでは帰らないからね」
リオンはにやりと笑い、皇宮の方を睨みつけた。
「どちらが首をとるのが早いかな」
アドガルムが墜ちるのが早いかヴァルファル帝国を墜とすのが早いか。
「負けないとは思うんだけどね」
兄二人もいるし、こうして厄介なのも倒せた。
二人の皇子の力と、皇宮の戦力がわからない。
「負けられては困りますね。アドガルムは死守しますので、ぜひリオン様達は皇帝を討ってください。必要ならば父を送り込みます」
「そちらの手が空いたら、ぜひお願いするよ」
結界の維持で大変だろうロキに期待し過ぎるのも良くはないが、正直不安はある。
(万が一、万が一兄様達が負けたら?)
リオン程度の戦力は失っても大したことはないだろう。
だが、エリックやティタンを失ってしまえば戦況は危うい。
「行ってみるしかないよね」
考えても仕方ない事だ。
キールを見送った後、マオはリオンの手を取る。
「生きていて良かったです……」
ようやく触れられて安心する。
まだ終わったわけではないが、こうして温かさを感じられて嬉しい。
「皇宮に行くという事は、これ以上にもっと危険なのですよね」
「そうだね」
ダミアン一人でこんなにも手こずってしまったのは痛かった。
ボロボロの状態で行くのだし、敵の本陣に行くわけだから、危険度は上がる。
「ちょっとだけ屈んで欲しいのです」
頼まれ、耳を寄せるように屈めば、マオが唇を重ねてくれる。
「マオ?」
珍しい行動だ。
「もうあんな危険な事はしないで」
本当はリオンが動きを封じている間にダミアンを倒す予定だった。
なのに思った以上にダミアンは立て直すのが早く、またマオもリオンが思った以上に捨て身になるから、動揺で初手が遅れてしまった。
その責任も感じ、リオンの回復に専念できるように自身が囮になったのだ。
「私よりも早く死なないで」
顔を赤くし、口調を変えてまで訴えるマオが可愛くて、疲れも忘れて抱きしめてしまった。
「うん、約束する。絶対に君より先に死なないし、君が死んだら後を追うから」
「それは駄目なのです! リオン様にはしっかり生きててもらわないといけないのです、ぼくと心中なんて駄目ですよ!」
じたばたともがくマオを抑え込む。
「じゃあマオも危ない事をしないで。あんな風に囮になるなんて、危険すぎて冷や冷やしたよ」
わざと防御壁を張ってなかったとはいえ、リオンの腹部をあっさりと貫いた男だ。
もしも攻撃を受けていたら、マオの細い体など、あっという間に切り裂けただろう。
「無事だったから良かったけど、本当に何かあったら、刺し違えても殺すつもりだったよ」
その前にキールが来たから僥倖だった。
「無事にアドガルムに戻れたら、僕もシグルド様に鍛えてもらおう」
多少は鍛えているとはいえ、まだまだだ。
もう少し強くならないとマオを守れないと、腕に力を込める。
「……あまりムキムキなのは嫌なのです」
ティタンのようになるリオンを想像し、げんなりとしてしまった。
「程々にしておく」
苦笑するリオンはもう少しだけ、とマオを抱きしめていた。
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