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第102話 似たもの同士②

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「噂は聞いている、俺の役に立てるならば身の保証はしよう」
中性的な美貌を持つエリックだからか不思議と嫌悪感を持つことはなかった。

生きられるのならとその話を受け、様々な事を受けさせられた。

やがて魔法の才を見出され、ロキの妻、アンリエッタに指導してもらえるようになる。

キュアの事情を組んでエリックが配慮してくれたのだが。

「アンリの弟子か! なかなかいい魔力を持っているな!」
好奇心旺盛なロキが接近禁止を言われて守るわけがない。

「あの、あたし、男性が苦手で」

「何故だ?」
ロキが根掘り葉掘り聞いてくる。

「病気ではないだろう。別に男でも女でも、魅力あるものに惚れるのは当然のことだ。キュアの周りには魅力ある男がいなかった、それだけだ」
ロキは決して笑う事はしない。

「無理に男性を好きになる事はないし、苦手なら苦手でいいじゃないか。俺も未だに親父殿が苦手だ」
それはまた違った種類のものだと思われる。

「キュアは悪くない、悪いのは理解がない周囲と、そしてそんなキュアを認めなかった両親だ。別に無理に女性に迫る事もないならば尚更悪くない。婚姻も子作りも大事な事だが、必ずしなくてはならないものではない。キュアが望む道でいいと思うぞ。お前の価値はそれだけではないからな」
ロキはキュアを価値ある人間だと話す。

「少なくとも好意を持てるという事は、人も想う心があるという事だ。人の為に力を使える立派な魔術師になれる。俺様が保証しよう」
頭を撫でられたが、ロキからも嫌悪は感じられなかった。

「俺様もキュアの手助けをしてやろう、邪魔者は排除してやる」
そう言って知り合いを紹介してくれて養子となり、貴族となる事が出来た。

元家族に会う事もあるが、その頃にはもう気にする事もなくなっていた。

ありのままに受け入れてくれる人たちがいるという事は何とも心地よかった。

「そういえば最近、いい縁談を紹介しろとか手紙が来たらしいわ。まるっと無視だけど」
キュアの養子先の家に届いているらしい。

王城に送っても受け取り拒否なので。

「もう縁も切れているのにいつまで家族面するつもりかしらね。そういえば二コラを紹介してくれともあったらしいわ」

「皆殺しにしてきていいですか?」
二コラの冗談とは言えない声が漏れる。

「身を固めてもいいんじゃない? そうでなくても狙われてるわよ」
王太子の側近で物腰も柔らかく、優しいので、人気は高い。

「本性を知ったら皆逃げますよ。こんな物騒なものを抱えてますし」
とんとんと胸を指さし、自嘲気味に笑う。

表面だけしか知らないものと婚姻はしたくない。

「そこであたしからの提案。二コラ、あたしと偽装結婚しない?」

「偽装とはいえ、結婚ですか?」
何の意味があるかわからない。

「形だけだから、丁度良くない? うざったい求婚もなくなるし。変わらずレナン様達に仕えられる。あたしは両親を安心させてあげられるもの」
養子に迎えてくれたもの達の事だ。

「今は良くても、いつかは義兄が結婚してお嫁さんが来たら居づらくなるでしょ、今もあたしのせいで縁談が来づらいみたいだし」
キュアの女性好きは有名なのでそれが足を引っ張っているみたいなのだ。

「だから、お願い。式も挙げなくてもいいし、書類だけ」

「エリック様に相談します。保証人も必要だし、僕は一応伯爵位を貰ってますので」
キュアの家の方が爵位は高い。

色々な事情の考慮していかないと。

「あなたならあたしの事情を分かってくれるし、絶対に好きにならないでしょ?」

「勿論ですね」
ビジネスパートナーとして最適だ。

「キュアは前向きですね。戦の後の生活も視野に入れているとは」
これから行く場所を考えれば命の保証は低い。

先のことまで考える余裕はニコラにはなかった。

「当然よ。レナン様のお子様たちを育て上げるまでは死ねないわ」
自分の子を持つことなど考えていない。

溺愛するは主とその子ども達。

その未来のためには今度こそルビアなんかに負けない。

大好きな人たちに囲まれた幸せな未来がキュアの夢だ。

「あぁ。それはとても大事な未来です。僕もその未来が見たくなってきた」
エリックの子ならば新たな忠誠を誓えるだろう。

この命尽きるまではきっと守り抜く。

それが主の幸福につながるのならば命を賭けるのも惜しくない。

婚姻したとしたら似たもの同士の夫婦になりそうな二人だ。

お互いに主の幸せしか見えていない。
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