25 / 27
番外編
番外編2 僕の幸せ
しおりを挟む
目が、覚める。
見慣れた天井に、見慣れた部屋。
そして、隣で微睡む、最愛の人。
愛しいその人の頬を撫でれば、無意識なのか擦り寄って来るのが、本当に可愛らしい。
「ん……」
「あ……ごめん。起こしちゃったかな」
「いえ、……おはようございます。アレン様」
そう、ふわりと微笑んで。
頬にある僕の手に、小さな自分の手を重ねて微笑む、僕の妻。
この国の王妃として、民にも愛されるひと。
「おはよう、ヴィオラ」
ああ、なんて、僕は幸せなんだろう。
優しくヴィオラを抱き寄せて、その額へと口付けを落とした。
「父上、母上! おはようございます!」
「おはようございます。お父様、お母様……」
身支度を済ませて食堂へと赴けば、子供たちがお行儀よく席に着いて待っていた。
元気にハツラツとした挨拶をしてくる愛息子と、もじもじと照れ笑いをする愛娘。
僕とヴィオラによく似た、僕達の宝物。国の宝。
「おはよう、2人とも」
「おはようございます。よく眠れたかしら?」
夫婦で挨拶を返せば、きゃあきゃあと可愛らしい声でそれぞれの答えが返ってくる。
忙しい身だが、食事くらいは家族で取りたい。
そんな僕のわがままを叶えてくれる家族と、城勤めの使用人達には感謝してもし足りない。
朝食が終われば、僕には国王としての。
ヴィオラには王妃としての政務が待っている。
子供達も勉強や稽古で予定が山積みだ。
王妃になりたての頃は、ヴィオラはよく「自分は相応しくないのでは」と不安を漏らしていた。
けれど、どうだろう。結婚して数年で、彼女は国中から愛される王妃へと成長した。
誰に対しても優しく、丁寧な対応をするヴィオラ。
慰問へと貧民街へと出かけた時も、子供やお年寄りに視線を合わせるように、ドレスが汚れるのも厭わずしゃがみ込み話を聞いていた。
そして、その訴えを聞き漏らすことなく、出来うる限り政務に反映しようと試みる。
現に、ヴィオラが王妃になってから、貧民街の治安と孤児院の経営は確実に良くなっている。
まだ取り掛かって数年だからこの程度だけど……きっと、子供たちが大きくなる頃には、見違えるような国になっているだろう。
……僕も、それに負けないような、そんな国王にならなくては。
互いに支え合い、補い合い、成長し合っていけるような。
そんな夫婦に、ヴィオラとならなれるだろう。
「父上! 今日は午後に、皆で中庭をお散歩するのですよね?」
「ああ、そうだよ。明後日のガーデンパーティーの下見のためにね。お手伝いしてくれるかな?」
「はい……!」
「もちろんですっ!」
花が咲くように笑う、僕達の宝物。
眩しい笑顔に、ヴィオラと2人、顔を見合わせて僕達も笑いあった。
──ああ、僕は、なんて幸せなんだろう。
***
午後、家族と共に華やかなガーデンをゆっくりど歩く。
大小鮮やかなローズが花咲くそこで、穏やかな時間が流れる。
多少の無理をしてでも、午前中に全ての書類を終わらせた甲斐があったなぁ……。
「あっ、うさちゃん!」
「可愛いね、あっちに行っちゃった」
子供達が走り出し、それをヴィオラが窘める。
僕はそれに笑って、彼女達を追いかけて、護衛として着いてきてくれた、騎士のみんなも笑っている。
王族として、幼い頃から僕自身寂しい思いをすることも多かった。
そんな時、そばにいてくれたのは、婚約者であるヴィオラだった。
まだ、婚約者のいない2人の子供達。
2人のためにも、家族の時間はなるべく取るようにしたい。
それが僕とヴィオラの出した結論だ。
「ヴィオラ、大丈夫かい?」
「ええ、アレン様も、無理をなさらないでくださいね?」
2人で自然と、お互いへの労りを口にする。
それが何だかくすぐったくて、心のやわい部分がぬくもりで満ちるかのようで──僕は、ヴィオラの手を優しく握り直した。
もう、この手が離れることの、ないように。
見慣れた天井に、見慣れた部屋。
そして、隣で微睡む、最愛の人。
愛しいその人の頬を撫でれば、無意識なのか擦り寄って来るのが、本当に可愛らしい。
「ん……」
「あ……ごめん。起こしちゃったかな」
「いえ、……おはようございます。アレン様」
そう、ふわりと微笑んで。
頬にある僕の手に、小さな自分の手を重ねて微笑む、僕の妻。
この国の王妃として、民にも愛されるひと。
「おはよう、ヴィオラ」
ああ、なんて、僕は幸せなんだろう。
優しくヴィオラを抱き寄せて、その額へと口付けを落とした。
「父上、母上! おはようございます!」
「おはようございます。お父様、お母様……」
身支度を済ませて食堂へと赴けば、子供たちがお行儀よく席に着いて待っていた。
元気にハツラツとした挨拶をしてくる愛息子と、もじもじと照れ笑いをする愛娘。
僕とヴィオラによく似た、僕達の宝物。国の宝。
「おはよう、2人とも」
「おはようございます。よく眠れたかしら?」
夫婦で挨拶を返せば、きゃあきゃあと可愛らしい声でそれぞれの答えが返ってくる。
忙しい身だが、食事くらいは家族で取りたい。
そんな僕のわがままを叶えてくれる家族と、城勤めの使用人達には感謝してもし足りない。
朝食が終われば、僕には国王としての。
ヴィオラには王妃としての政務が待っている。
子供達も勉強や稽古で予定が山積みだ。
王妃になりたての頃は、ヴィオラはよく「自分は相応しくないのでは」と不安を漏らしていた。
けれど、どうだろう。結婚して数年で、彼女は国中から愛される王妃へと成長した。
誰に対しても優しく、丁寧な対応をするヴィオラ。
慰問へと貧民街へと出かけた時も、子供やお年寄りに視線を合わせるように、ドレスが汚れるのも厭わずしゃがみ込み話を聞いていた。
そして、その訴えを聞き漏らすことなく、出来うる限り政務に反映しようと試みる。
現に、ヴィオラが王妃になってから、貧民街の治安と孤児院の経営は確実に良くなっている。
まだ取り掛かって数年だからこの程度だけど……きっと、子供たちが大きくなる頃には、見違えるような国になっているだろう。
……僕も、それに負けないような、そんな国王にならなくては。
互いに支え合い、補い合い、成長し合っていけるような。
そんな夫婦に、ヴィオラとならなれるだろう。
「父上! 今日は午後に、皆で中庭をお散歩するのですよね?」
「ああ、そうだよ。明後日のガーデンパーティーの下見のためにね。お手伝いしてくれるかな?」
「はい……!」
「もちろんですっ!」
花が咲くように笑う、僕達の宝物。
眩しい笑顔に、ヴィオラと2人、顔を見合わせて僕達も笑いあった。
──ああ、僕は、なんて幸せなんだろう。
***
午後、家族と共に華やかなガーデンをゆっくりど歩く。
大小鮮やかなローズが花咲くそこで、穏やかな時間が流れる。
多少の無理をしてでも、午前中に全ての書類を終わらせた甲斐があったなぁ……。
「あっ、うさちゃん!」
「可愛いね、あっちに行っちゃった」
子供達が走り出し、それをヴィオラが窘める。
僕はそれに笑って、彼女達を追いかけて、護衛として着いてきてくれた、騎士のみんなも笑っている。
王族として、幼い頃から僕自身寂しい思いをすることも多かった。
そんな時、そばにいてくれたのは、婚約者であるヴィオラだった。
まだ、婚約者のいない2人の子供達。
2人のためにも、家族の時間はなるべく取るようにしたい。
それが僕とヴィオラの出した結論だ。
「ヴィオラ、大丈夫かい?」
「ええ、アレン様も、無理をなさらないでくださいね?」
2人で自然と、お互いへの労りを口にする。
それが何だかくすぐったくて、心のやわい部分がぬくもりで満ちるかのようで──僕は、ヴィオラの手を優しく握り直した。
もう、この手が離れることの、ないように。
40
お気に入りに追加
2,996
あなたにおすすめの小説
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
【完結済】完全無欠の公爵令嬢、全てを捨てて自由に生きます!~……のはずだったのに、なぜだか第二王子が追いかけてくるんですけどっ!!〜
鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
「愛しているよ、エルシー…。たとえ正式な夫婦になれなくても、僕の心は君だけのものだ」「ああ、アンドリュー様…」
王宮で行われていた晩餐会の真っ最中、公爵令嬢のメレディアは衝撃的な光景を目にする。婚約者であるアンドリュー王太子と男爵令嬢エルシーがひしと抱き合い、愛を語り合っていたのだ。心がポキリと折れる音がした。長年の過酷な淑女教育に王太子妃教育…。全てが馬鹿げているように思えた。
嘆く心に蓋をして、それでもアンドリューに嫁ぐ覚悟を決めていたメレディア。だがあらぬ嫌疑をかけられ、ある日公衆の面前でアンドリューから婚約解消を言い渡される。
深く傷付き落ち込むメレディア。でもついに、
「もういいわ!せっかくだからこれからは自由に生きてやる!」
と吹っ切り、これまでずっと我慢してきた様々なことを楽しもうとするメレディア。ところがそんなメレディアに、アンドリューの弟である第二王子のトラヴィスが急接近してきて……?!
※作者独自の架空の世界の物語です。相変わらずいろいろな設定が緩いですので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。
※この作品はカクヨムさんにも投稿しています。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる