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愛のメッセージ その弐
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新島は椅子に座るとすぐに、
「まず、もう少しくわしく話してください」
「わかった」
山中は涙をこらえながら、話し始めた。
「おにいちゃんが中古で安く買ってくれたパソコンを使って、チャットチャットで美海と話していたんだ。パソコンは中古なのに綺麗で傷一つないものだったよ。だから、あんまりお金を使わずに美海とメールが出来た。まあ、スマホを買えば良いんだが、親は反対なんだよ。僕に言わせれば、スマホとパソコンの違いなんてないけどね。だって、電子機器としては同じだからな」
話しがどんどん違う方向に脱線していく。これではまずいと思った新島は話しを遮(さえぎ)って、気になることを聞いた。
「ちょっと待ってください」
「?」
「パソコンは中古なんですか?」
「ああ、そうだ。高いのは駄目だって怒られたからね」
「それと、家にはお兄さんがいた...」
「いたね」
「なるほど」
新島は足と腕を同時に組んで、目を閉じた。高田は唖然として、その光景を見つめていた。
少しして、新島は目を開くと椅子から立ち上がった。
「二人とも、着いてきてください」
山中と高田は言われるままに新島の後に続いた。新島は階段を降りて一階に行くと、左に曲がってまっすぐコンピューター室に向かった。
「ここの中の一つのパソコンを使って実験をします」
新島はキーボードを少しいじって、それから山中をそのキーボードの前にある椅子に座らせた。キーボードはパソコン本体に繫がっている。
「先輩」
「なんだ?」
「そのキーボードを使ってパソコンで『好き』と打ってください」
「わ、わかった」
パソコンを起動して、ワードを開いた。それから、『S』『U』『K』『I』のそれぞれのボタンを押した。
「何だ!?」
山中はパソコンの画面を見た。ワードには『しね』と打ち込まれていた。
「学校のパソコンは古いです。このキーボードも古い...。つまり、個々のボタンが外れるんです」
新島はボタンを外して見せた。
「先輩のパソコンのキーボードも外れるなら、『S』『U』『K』『I』がアルファベット四文字で相手を貶(けな)す単語に変えられていたはずです。さっきみたいに、『S』『I』『N』『E』と変えられていたかもしれない」
「だが、誰がやったんだ?」
「お兄さん、でしょう。ちょっとした悪戯(イタズラ)のはずです」
「でも、僕が『好き』とメッセージを送ることはわからないじゃないか」
「山中先輩はメッセージの返事が淡泊のはずです。お兄さんもそれを知っていたから『好き』と送信すると読んでいたのでしょう」
「な、なるほど」
「家に帰って、お兄さんに確かめるのが一番いいですよ」
「わかった! ありがとう。助かった」
山中は急いでコンピューター室を飛び出した。高田は山中が行くのを見送ってから、口を開いた。
「よくわかったな」
「キーボードのボタンが外れることは知っていたからな」
「だが、履歴が残らないチャットなんか使うからややこしくなるんだ。履歴さえあったらキーボードのボタンが変えられていたことは簡単にわかるはずだ」
「だな」
「じゃあ、部室戻って七不思議の二番目の話しをしよう」
「さっきの続きか」
「ああ、その通りだ」
二人は部室に戻った。
「やけに解決が早かったわね」
「まあ、一応...」
「それより、七不思議の二番目の話の方が重要っすよ」
「二番目?」
「そうっす! 七不思議の二番目、ポルターガイスト!」
「ポルターガイスト?」
高田は土方に二番目のことを話した。
「そんな七不思議があったのか」
「そうなんすよ」
「いや、だから東野圭吾の『騒霊(さわ)ぐ』では──」
「新島。その話しは廊下で聞いた」
「言ったけど──」
「聞いた」
「あぁん?」
「んだあ? こらぁ!?」
新島と高田は頭を打ちつけ合った。
「やめろ、二人とも。それより、高田。ポルターガイストの話しをしてくれ」
「はいっす!」
高田は椅子に座った。
「まず、もう少しくわしく話してください」
「わかった」
山中は涙をこらえながら、話し始めた。
「おにいちゃんが中古で安く買ってくれたパソコンを使って、チャットチャットで美海と話していたんだ。パソコンは中古なのに綺麗で傷一つないものだったよ。だから、あんまりお金を使わずに美海とメールが出来た。まあ、スマホを買えば良いんだが、親は反対なんだよ。僕に言わせれば、スマホとパソコンの違いなんてないけどね。だって、電子機器としては同じだからな」
話しがどんどん違う方向に脱線していく。これではまずいと思った新島は話しを遮(さえぎ)って、気になることを聞いた。
「ちょっと待ってください」
「?」
「パソコンは中古なんですか?」
「ああ、そうだ。高いのは駄目だって怒られたからね」
「それと、家にはお兄さんがいた...」
「いたね」
「なるほど」
新島は足と腕を同時に組んで、目を閉じた。高田は唖然として、その光景を見つめていた。
少しして、新島は目を開くと椅子から立ち上がった。
「二人とも、着いてきてください」
山中と高田は言われるままに新島の後に続いた。新島は階段を降りて一階に行くと、左に曲がってまっすぐコンピューター室に向かった。
「ここの中の一つのパソコンを使って実験をします」
新島はキーボードを少しいじって、それから山中をそのキーボードの前にある椅子に座らせた。キーボードはパソコン本体に繫がっている。
「先輩」
「なんだ?」
「そのキーボードを使ってパソコンで『好き』と打ってください」
「わ、わかった」
パソコンを起動して、ワードを開いた。それから、『S』『U』『K』『I』のそれぞれのボタンを押した。
「何だ!?」
山中はパソコンの画面を見た。ワードには『しね』と打ち込まれていた。
「学校のパソコンは古いです。このキーボードも古い...。つまり、個々のボタンが外れるんです」
新島はボタンを外して見せた。
「先輩のパソコンのキーボードも外れるなら、『S』『U』『K』『I』がアルファベット四文字で相手を貶(けな)す単語に変えられていたはずです。さっきみたいに、『S』『I』『N』『E』と変えられていたかもしれない」
「だが、誰がやったんだ?」
「お兄さん、でしょう。ちょっとした悪戯(イタズラ)のはずです」
「でも、僕が『好き』とメッセージを送ることはわからないじゃないか」
「山中先輩はメッセージの返事が淡泊のはずです。お兄さんもそれを知っていたから『好き』と送信すると読んでいたのでしょう」
「な、なるほど」
「家に帰って、お兄さんに確かめるのが一番いいですよ」
「わかった! ありがとう。助かった」
山中は急いでコンピューター室を飛び出した。高田は山中が行くのを見送ってから、口を開いた。
「よくわかったな」
「キーボードのボタンが外れることは知っていたからな」
「だが、履歴が残らないチャットなんか使うからややこしくなるんだ。履歴さえあったらキーボードのボタンが変えられていたことは簡単にわかるはずだ」
「だな」
「じゃあ、部室戻って七不思議の二番目の話しをしよう」
「さっきの続きか」
「ああ、その通りだ」
二人は部室に戻った。
「やけに解決が早かったわね」
「まあ、一応...」
「それより、七不思議の二番目の話の方が重要っすよ」
「二番目?」
「そうっす! 七不思議の二番目、ポルターガイスト!」
「ポルターガイスト?」
高田は土方に二番目のことを話した。
「そんな七不思議があったのか」
「そうなんすよ」
「いや、だから東野圭吾の『騒霊(さわ)ぐ』では──」
「新島。その話しは廊下で聞いた」
「言ったけど──」
「聞いた」
「あぁん?」
「んだあ? こらぁ!?」
新島と高田は頭を打ちつけ合った。
「やめろ、二人とも。それより、高田。ポルターガイストの話しをしてくれ」
「はいっす!」
高田は椅子に座った。
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