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第五章『奥州の覇者』
伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その陸肆
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お腹空いた。数時間も飲まず食わずで洞窟を歩き回り、我慢はしていたが空腹に耐えられなくなってきた。
俺は洞窟の壁にもたれ掛かり、お腹をさすりながらつぶやく。
「ひもじいよ~」
それは当然のことだ。生物は生き続けるためにエネルギーを欲する。動けば疲れるし腹が減る。伊達に食欲が三大欲求の一つに数えられているだけはある。
「アマテラス様~!」
『......』
「無視だと!?」
まさか無視されるとは思わなかった。あとでアマテラスには仕返ししてやる。それはそれとして、まずは食料を何とかしなくては。と言っても、食料については心当たりがある。俺は仕方なく、天井を見上げた。
「コウモリっておいしいのかな?」
そう、コウモリである。数匹のコウモリが洞窟の天井に逆さにぶら下がっていた。ロウソクの火の明かりを反射させるコウモリの目はちょっと怖い。
「つーか、コウモリって哺乳類だよな? 共食いになるのか?」
何を隠そうコウモリは、哺乳類なのに空を自由に飛んでいる。哺乳類の中には飛ぶ奴が何種類かいるが、鳥と同じように翼を羽ばたかせて飛ぶのはコウモリだけ。要するにコウモリはその点において人間より秀でている。だからと言ってコウモリ相手に恐れ多いとは思わんが。
覚悟を決めよう。俺は手を伸ばし、コウモリを掴もうとして──。
「痛っ!」
指を噛まれた。さらに複数のコウモリが俺の頭に群がってきて攻撃をしてくるので、急いでその場から逃げ出した。
無我夢中での逃走だったのでロウソクを落としてしまい、今は真っ暗な洞窟で座り込んでいる。すると指にアリが乗ってきた。
「アリって食べられるっけ?」
俺はアリの味に関する記憶を引っ張り出してみた。確かクマは『小指から手首にかけての稜線(アイヌ語で''ピソィ'')』の部分を使い、アリを潰しているらしい。そのため、クマのピソィは甘酸っぱくなっていておいしいようだ。
なぜクマのピソィは甘酸っぱいのか。アリをその部分で潰しているからだ。何が言いたいのかというと、アリは甘酸っぱい。
それに日本に生息はしていないが、ツムギアリとかはレモンみたいに甘酸っぱいからレモンティーの材料の代用品にも使われているらしい。アリって実はおいしいのではないだろうか。
「ええい、実食だ!」
俺はアリを口に突っ込み、噛みつぶして下で転がした。
「多少うまいが、アリを食べたと考えると気分は最悪だな......」
結果、アリはおいしいが精神的にも量的にも食用に不向きだとわかった。君達も機会があったら食べてみてね!
さてっと。精神的ダメージを考慮しつつも空腹には勝てずにアリを食べ続けたら、ある程度は回復してきた。アリで空腹が解消されたことは気に入らんが、これで何とかまた動ける。
次に用意すべきは明かりだ。先ほどどこかにロウソクを落としてしまったから、今持っているのは火打ち石のセットくらいだ。ただ燃やすものがない。
燃えやすいもの(木の枝など)を洞窟内で探し回ってみると、やはりコウモリに行き着いてしまった。生物の体って脂を含んでいるから燃えやすいのだ。
「哺乳類のくせに飛翔可能なチート能力持ちの畜生を一匹殺すだけだ。俺は悪くない。......悪くないよね?」
などとブツブツ言いながら、コウモリを一匹掴み、そのまま頭を指で摘まみながら潰した。えげつない。
そしてポケットから貝殻を取り出すと、コウモリの脂を貝殻に溜めてみた。この貝殻は剃刀用に常時携帯しているもので、形がちょうど俺の輪郭とフィットしているから重宝していた。
戦国時代では髭を剃るのではなく抜くのだが、俺の性に合わない上に痛かったので手頃な貝殻を剃刀の代わりにしてみて今に至る。貝殻とは数年の付き合いだ。
「わざわざ剃刀を作ろうとは思わずこの貝殻を使い続けていたが、想定外の場面で役に立ったな」
貝殻に脂がある程度溜まったので服の裾を引き千切り、裾を紙縒のように捻ってから脂を染み渡らせた。それから紙縒を貝殻から少し頭を出すような感じに設置し、紙縒の先に火を着ける。これで明かりは確保された。
洞窟探索を続けつつ、次は食料の確保だ。コウモリを食べるのは論外。生理的に受け付けられない。コウモリ以外にこの洞窟内で既知の生物はあとはアリだけになるが、前述の通り食料向きではない。
「詰んだぜ、ちくしょうっ!!」
怒りに任せて壁を蹴るが、足が思いの外ダメージを受ける。地面で転がり痛みに耐えつつ、洞窟の壁を蹴った衝撃で聞こえてきた水の音を感じ取った。
水があるということは水分補給も出来るし、他の洞窟内の動物達も水分補給に訪れるかもしれない。水源に魚がいるかもしれない。あらゆる可能性を視野に入れ、水源を目指して走った。
走っているといきなり広い空間に出て、端には水が流れている。どうやらこの川は洞窟の奥へと続いている。ぶっちゃけると、どっちが入り口なのか方向はわからないが、俺から見て奥だから奥なのだ。
川の中を覗き込み、透き通る水のお陰で底まで見える。まあ結構浅いが、水はかなり透き通っている。生水を飲むのは良くないと聞いたことがあるが......こちとらコウモリの脂でこしらえた明かりがある。水を沸かすことは出来そうだ。
一息ついて水を飲もうと姿勢を屈めた俺の視界には、水中を泳ぐ魚が飛び込んできた。
「魚だ!」
幸い川底は浅いので、川に手を突っ込んで魚を底に押さえつけることが出来た。あとは逃がさないように慎重に持ち上げ、地面に放り投げる。
「目が退化しているな。ということは、洞窟に迷い込んできてからかなりの年月が経っているということか」
川を辿れば外に出られるのではないかと淡い期待をしたが、目が退化している時点でその可能性は否である。
おそらく滝のような感じで外から洞窟への片道切符なんだろう。魚は洞窟に入れるが、出ることは叶わない。そして暗いところで生活したから目が退化。あり得るな。
「この仮説をより補強するためにも魚をもっと捕まえて、他の魚も目が退化しているか確認しよう!」
そんでもって捕まえた魚を食してしまおう!
その後、五匹の魚を捕まえて合計六匹をゲット。いずれも目が退化していたから俺の仮説が有力だ。この川を辿って奥へ進むのはやめた方が良い。他の出口を見つけたいものだな。
ちなみに魚は焼いて食べた。正直塩が欲しかったが、アリをいっぱい食べていた時よりマシだ。骨ごと魚は食べさせてもらった。ついでに言うと、川の水を沸かさずに飲んでから体調崩した。ちくしょう。
俺は洞窟の壁にもたれ掛かり、お腹をさすりながらつぶやく。
「ひもじいよ~」
それは当然のことだ。生物は生き続けるためにエネルギーを欲する。動けば疲れるし腹が減る。伊達に食欲が三大欲求の一つに数えられているだけはある。
「アマテラス様~!」
『......』
「無視だと!?」
まさか無視されるとは思わなかった。あとでアマテラスには仕返ししてやる。それはそれとして、まずは食料を何とかしなくては。と言っても、食料については心当たりがある。俺は仕方なく、天井を見上げた。
「コウモリっておいしいのかな?」
そう、コウモリである。数匹のコウモリが洞窟の天井に逆さにぶら下がっていた。ロウソクの火の明かりを反射させるコウモリの目はちょっと怖い。
「つーか、コウモリって哺乳類だよな? 共食いになるのか?」
何を隠そうコウモリは、哺乳類なのに空を自由に飛んでいる。哺乳類の中には飛ぶ奴が何種類かいるが、鳥と同じように翼を羽ばたかせて飛ぶのはコウモリだけ。要するにコウモリはその点において人間より秀でている。だからと言ってコウモリ相手に恐れ多いとは思わんが。
覚悟を決めよう。俺は手を伸ばし、コウモリを掴もうとして──。
「痛っ!」
指を噛まれた。さらに複数のコウモリが俺の頭に群がってきて攻撃をしてくるので、急いでその場から逃げ出した。
無我夢中での逃走だったのでロウソクを落としてしまい、今は真っ暗な洞窟で座り込んでいる。すると指にアリが乗ってきた。
「アリって食べられるっけ?」
俺はアリの味に関する記憶を引っ張り出してみた。確かクマは『小指から手首にかけての稜線(アイヌ語で''ピソィ'')』の部分を使い、アリを潰しているらしい。そのため、クマのピソィは甘酸っぱくなっていておいしいようだ。
なぜクマのピソィは甘酸っぱいのか。アリをその部分で潰しているからだ。何が言いたいのかというと、アリは甘酸っぱい。
それに日本に生息はしていないが、ツムギアリとかはレモンみたいに甘酸っぱいからレモンティーの材料の代用品にも使われているらしい。アリって実はおいしいのではないだろうか。
「ええい、実食だ!」
俺はアリを口に突っ込み、噛みつぶして下で転がした。
「多少うまいが、アリを食べたと考えると気分は最悪だな......」
結果、アリはおいしいが精神的にも量的にも食用に不向きだとわかった。君達も機会があったら食べてみてね!
さてっと。精神的ダメージを考慮しつつも空腹には勝てずにアリを食べ続けたら、ある程度は回復してきた。アリで空腹が解消されたことは気に入らんが、これで何とかまた動ける。
次に用意すべきは明かりだ。先ほどどこかにロウソクを落としてしまったから、今持っているのは火打ち石のセットくらいだ。ただ燃やすものがない。
燃えやすいもの(木の枝など)を洞窟内で探し回ってみると、やはりコウモリに行き着いてしまった。生物の体って脂を含んでいるから燃えやすいのだ。
「哺乳類のくせに飛翔可能なチート能力持ちの畜生を一匹殺すだけだ。俺は悪くない。......悪くないよね?」
などとブツブツ言いながら、コウモリを一匹掴み、そのまま頭を指で摘まみながら潰した。えげつない。
そしてポケットから貝殻を取り出すと、コウモリの脂を貝殻に溜めてみた。この貝殻は剃刀用に常時携帯しているもので、形がちょうど俺の輪郭とフィットしているから重宝していた。
戦国時代では髭を剃るのではなく抜くのだが、俺の性に合わない上に痛かったので手頃な貝殻を剃刀の代わりにしてみて今に至る。貝殻とは数年の付き合いだ。
「わざわざ剃刀を作ろうとは思わずこの貝殻を使い続けていたが、想定外の場面で役に立ったな」
貝殻に脂がある程度溜まったので服の裾を引き千切り、裾を紙縒のように捻ってから脂を染み渡らせた。それから紙縒を貝殻から少し頭を出すような感じに設置し、紙縒の先に火を着ける。これで明かりは確保された。
洞窟探索を続けつつ、次は食料の確保だ。コウモリを食べるのは論外。生理的に受け付けられない。コウモリ以外にこの洞窟内で既知の生物はあとはアリだけになるが、前述の通り食料向きではない。
「詰んだぜ、ちくしょうっ!!」
怒りに任せて壁を蹴るが、足が思いの外ダメージを受ける。地面で転がり痛みに耐えつつ、洞窟の壁を蹴った衝撃で聞こえてきた水の音を感じ取った。
水があるということは水分補給も出来るし、他の洞窟内の動物達も水分補給に訪れるかもしれない。水源に魚がいるかもしれない。あらゆる可能性を視野に入れ、水源を目指して走った。
走っているといきなり広い空間に出て、端には水が流れている。どうやらこの川は洞窟の奥へと続いている。ぶっちゃけると、どっちが入り口なのか方向はわからないが、俺から見て奥だから奥なのだ。
川の中を覗き込み、透き通る水のお陰で底まで見える。まあ結構浅いが、水はかなり透き通っている。生水を飲むのは良くないと聞いたことがあるが......こちとらコウモリの脂でこしらえた明かりがある。水を沸かすことは出来そうだ。
一息ついて水を飲もうと姿勢を屈めた俺の視界には、水中を泳ぐ魚が飛び込んできた。
「魚だ!」
幸い川底は浅いので、川に手を突っ込んで魚を底に押さえつけることが出来た。あとは逃がさないように慎重に持ち上げ、地面に放り投げる。
「目が退化しているな。ということは、洞窟に迷い込んできてからかなりの年月が経っているということか」
川を辿れば外に出られるのではないかと淡い期待をしたが、目が退化している時点でその可能性は否である。
おそらく滝のような感じで外から洞窟への片道切符なんだろう。魚は洞窟に入れるが、出ることは叶わない。そして暗いところで生活したから目が退化。あり得るな。
「この仮説をより補強するためにも魚をもっと捕まえて、他の魚も目が退化しているか確認しよう!」
そんでもって捕まえた魚を食してしまおう!
その後、五匹の魚を捕まえて合計六匹をゲット。いずれも目が退化していたから俺の仮説が有力だ。この川を辿って奥へ進むのはやめた方が良い。他の出口を見つけたいものだな。
ちなみに魚は焼いて食べた。正直塩が欲しかったが、アリをいっぱい食べていた時よりマシだ。骨ごと魚は食べさせてもらった。ついでに言うと、川の水を沸かさずに飲んでから体調崩した。ちくしょう。
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