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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その拾弐
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俺は良直のことで頭がいっぱいになった。どうやったら助けることが出来るのか。そればかりを考えていた。するといつの間にか、本陣に到着していた。
「若様、本陣に着きましたよ」
「あ、ああ。助かったよ、良直。この戦での活躍を期待しているぞ」
「ええ、若様の期待に応えられるように努力いたします!」
良直にこのようなことを言わせてしまった......。それなのに、俺という奴は何をしているんだ。これではいけない。何かアクションを起こさなければ。
「良直よ。手を出せ」
「はい」良直は両手を胸の前に持ってきた。「これで良いでしょうか?」
燭台切を鞘ごと良直の手に乗せて、真っ直ぐ顔を見た。「これを使ってくれ」
「この刀、若様の愛刀ではないですか!? 貸してくださって良いのでしょうか!?」
「貸したのではない」
「へ?」
「良直にくれてやる。頑張れよ」
「はい!」
燭台切がなくても木刀があれば俺は大丈夫だろう。良直は絶対にこの戦で死なせたくない。だから燭台切を渡した。歴史を変えてしまうかもしれないが、良直は輝宗ほど歴史的に有名な人物ではない。なので死ななくても歴史に深い影響はないと思う。
もし死にかけても俺が駆けつけることにする。誰かに良直の見張りをさせて、ピンチの時に俺を呼ぶようにしておこう。
「では良直、よろしくな」
大きくうなずいてから、馬に乗って走り去っていった。俺は早速、成実を呼び寄せた。
「成実は良直を見張っていてくれ」
「鬼庭良直殿の監視、ということですか?」
「そうだ、合っているぞ。もし良直が負けそうになったら、俺を呼んでくれ」
「承知しました。非常事態の場合は、急ぎご報告いたします。逐一報告は必要ですか?」
「逐一報告はしなくて良い。良直の身が危ない場合のみ報告を頼む」
良直を見張る理由は言っていなかったが成実は納得し、数十人の隊を従えて本陣を発った。
さて、俺のやることはなくなってしまった。これからどうすれば良いか考えてみたが、これといってやりたいことはない。敵を倒すにしても、伊達軍のラスボス的な存在の俺がわざわざ出向く必要はないしなぁ。
「久々に薬学の勉強でもしようかな。それか、透明化の技の練習も必須だが」
勉強か訓練かどちらか選べと言われたら、そりゃ男なら面倒ではない勉強を選ぶに決まっているだろう。薬学書なら荷物に詰め込んでいたから、それを引っ張り出した。
ホームズが教えるのが上手だったが、もう奴はいない......。これからは自分自身の力で薬学を身につけていかないと。頑張らねば!
すると、俺はついついケシ坊主の栽培方法について書かれているページを読み込んでしまった。とまあ、ケシ坊主の栽培方法をここに書いてしまうと有害図書認定をされかねないので省く。
麻薬のことを熱心に読んでいると、仁和が背後から近づいてきた。
「政宗殿は麻薬に興味があるのですね」
「なっ! ちょ、仁和ぁ!」
「その慌てっぷり、本当に麻薬に興味があったとは」
仁和の顔が次第に青ざめていったので、信頼を失う可能性を減らすために勢いよく首を横に振った。
「違う、違うぞ! 別に麻薬に興味があるわけじゃないんだ! 仁和、それは間違いだ!」
「まあ、その程度で私は政宗殿を幻滅したりはしませんよ。ケシ坊主の成分であるモルヒネは人間の脳内でも分泌されていますからね」
「そ、それは本当なのか!?」
「はい。人間の脳内にはモルヒネと同じような作用を持っている脳内モルヒネというものが分泌されているのですが、微量ながらも脳内で本物のモルヒネも分泌されているんですよ」
「初耳だ」
「それもそうでしょう。この事実は二十一世紀になって発見されたものなので」
俺も一応、前世は二十一世紀を生きる日本男児だったんだが、科学的な知識では仁和の足元にも及ばないな。歴史知識じゃあ負ける気がしないんだけども。
「博識だな、仁和は」
「こんな知識を持っていても、あまり褒められたものではありませんけどね」
「何でだ?」
「二十一世紀ではこういう無駄な知識は詰め込んでも無意味なんです」
え、マジで? 俺なんか無駄な歴史知識をいろいろと詰め込んでいたのだが、多少は認めてもらえていた。いや待てよ、俺は歴史を教える仕事をしていたんだから、歴史知識は無駄ではなかったということか。
ということは、仁和は科学的知識を活用出来ない仕事をしていたことになる。けど、仁和は以前に自分は科学者だと言っていた記憶があるな。もしかして、仁和は科学者ではないのか!?
「仁和......正直に言ってくれ。テメェは内通者なのか? 間者か何かなのか!?」
俺は動揺し、呼吸のリズムが乱れた。胸を押さえつけると立ち上がり、フラフラしながら前進した。しかしまともに歩くことは出来ず、立っていることがやっとだった。徐々に足の力も抜けていき、ついには地面に倒れた。
「に、仁和......」
「政宗殿、申し訳ございません。こうするしかなかったんですよ」
「ちくしょ......ちくしょう」
まぶたが重くなっていき、力が入らなくなる。そこで意識は途絶えた。
「若様、本陣に着きましたよ」
「あ、ああ。助かったよ、良直。この戦での活躍を期待しているぞ」
「ええ、若様の期待に応えられるように努力いたします!」
良直にこのようなことを言わせてしまった......。それなのに、俺という奴は何をしているんだ。これではいけない。何かアクションを起こさなければ。
「良直よ。手を出せ」
「はい」良直は両手を胸の前に持ってきた。「これで良いでしょうか?」
燭台切を鞘ごと良直の手に乗せて、真っ直ぐ顔を見た。「これを使ってくれ」
「この刀、若様の愛刀ではないですか!? 貸してくださって良いのでしょうか!?」
「貸したのではない」
「へ?」
「良直にくれてやる。頑張れよ」
「はい!」
燭台切がなくても木刀があれば俺は大丈夫だろう。良直は絶対にこの戦で死なせたくない。だから燭台切を渡した。歴史を変えてしまうかもしれないが、良直は輝宗ほど歴史的に有名な人物ではない。なので死ななくても歴史に深い影響はないと思う。
もし死にかけても俺が駆けつけることにする。誰かに良直の見張りをさせて、ピンチの時に俺を呼ぶようにしておこう。
「では良直、よろしくな」
大きくうなずいてから、馬に乗って走り去っていった。俺は早速、成実を呼び寄せた。
「成実は良直を見張っていてくれ」
「鬼庭良直殿の監視、ということですか?」
「そうだ、合っているぞ。もし良直が負けそうになったら、俺を呼んでくれ」
「承知しました。非常事態の場合は、急ぎご報告いたします。逐一報告は必要ですか?」
「逐一報告はしなくて良い。良直の身が危ない場合のみ報告を頼む」
良直を見張る理由は言っていなかったが成実は納得し、数十人の隊を従えて本陣を発った。
さて、俺のやることはなくなってしまった。これからどうすれば良いか考えてみたが、これといってやりたいことはない。敵を倒すにしても、伊達軍のラスボス的な存在の俺がわざわざ出向く必要はないしなぁ。
「久々に薬学の勉強でもしようかな。それか、透明化の技の練習も必須だが」
勉強か訓練かどちらか選べと言われたら、そりゃ男なら面倒ではない勉強を選ぶに決まっているだろう。薬学書なら荷物に詰め込んでいたから、それを引っ張り出した。
ホームズが教えるのが上手だったが、もう奴はいない......。これからは自分自身の力で薬学を身につけていかないと。頑張らねば!
すると、俺はついついケシ坊主の栽培方法について書かれているページを読み込んでしまった。とまあ、ケシ坊主の栽培方法をここに書いてしまうと有害図書認定をされかねないので省く。
麻薬のことを熱心に読んでいると、仁和が背後から近づいてきた。
「政宗殿は麻薬に興味があるのですね」
「なっ! ちょ、仁和ぁ!」
「その慌てっぷり、本当に麻薬に興味があったとは」
仁和の顔が次第に青ざめていったので、信頼を失う可能性を減らすために勢いよく首を横に振った。
「違う、違うぞ! 別に麻薬に興味があるわけじゃないんだ! 仁和、それは間違いだ!」
「まあ、その程度で私は政宗殿を幻滅したりはしませんよ。ケシ坊主の成分であるモルヒネは人間の脳内でも分泌されていますからね」
「そ、それは本当なのか!?」
「はい。人間の脳内にはモルヒネと同じような作用を持っている脳内モルヒネというものが分泌されているのですが、微量ながらも脳内で本物のモルヒネも分泌されているんですよ」
「初耳だ」
「それもそうでしょう。この事実は二十一世紀になって発見されたものなので」
俺も一応、前世は二十一世紀を生きる日本男児だったんだが、科学的な知識では仁和の足元にも及ばないな。歴史知識じゃあ負ける気がしないんだけども。
「博識だな、仁和は」
「こんな知識を持っていても、あまり褒められたものではありませんけどね」
「何でだ?」
「二十一世紀ではこういう無駄な知識は詰め込んでも無意味なんです」
え、マジで? 俺なんか無駄な歴史知識をいろいろと詰め込んでいたのだが、多少は認めてもらえていた。いや待てよ、俺は歴史を教える仕事をしていたんだから、歴史知識は無駄ではなかったということか。
ということは、仁和は科学的知識を活用出来ない仕事をしていたことになる。けど、仁和は以前に自分は科学者だと言っていた記憶があるな。もしかして、仁和は科学者ではないのか!?
「仁和......正直に言ってくれ。テメェは内通者なのか? 間者か何かなのか!?」
俺は動揺し、呼吸のリズムが乱れた。胸を押さえつけると立ち上がり、フラフラしながら前進した。しかしまともに歩くことは出来ず、立っていることがやっとだった。徐々に足の力も抜けていき、ついには地面に倒れた。
「に、仁和......」
「政宗殿、申し訳ございません。こうするしかなかったんですよ」
「ちくしょ......ちくしょう」
まぶたが重くなっていき、力が入らなくなる。そこで意識は途絶えた。
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