上 下
161 / 245
第四章『輝宗の死』

伊達政宗、悪運の強さは伊達じゃない その陸

しおりを挟む
 覆面のその青年は、俺が刀を抜いたことに反応した。「貴様には戦う意志があると言うのか?」
「どういうことだ!」
「戦いを終わらせるにはどちらか一方が死ぬしかない。つまり、貴様が刀を抜いた時点で貴様の死は決まっているのだ!」
「何を言ってやがる!」
「それが俺の世界のルールなのだ」
 こいつ、もしかすると......。いや、今は戦いに集中だ。まずは燭台切で牽制けんせいをする。
「そのような構え方では俺に負けるだけだ」
 青年は腰の袋から剣を取り出した。刀とは違って真っ直ぐと伸びた剣だ。
「刀をなめるな!」
 俺が間合いを詰めて刀を横向きに斬ったが、青年がそれを防いで腹に蹴りを入れてきた。
「うがっ!」
「弱き者よ、貴様の負けだ!」
 とっさに受け身をとり、ある程度のダメージに押さえられた。腹を押さえつつ立ち上がり、肩の力を抜いた。
「テメェ、急に蹴るなよ」
「......」
「無視は良くないな。久々に本気を見せてやるよ」
「今のが本気ではないとでも言うのか? 笑わせるなよ」
 チッ! ムカつく野郎だ。俺は空中に防御壁で足場を築き、落下しながら攻撃をした。剣で攻撃を防がれるから、バリツを応用した突き技で力押しをする。
「なっ! の俺がここまで歯が立たないだと!?」
 剣聖? やはり、こいつはホームズのような異世界からの者のようだ。剣も日本のものではないし、彼の世界ではどちらかが死ぬまで戦いは続くということか。
 圧倒的力の差を見せつけて、奴から降参させる必要がありそうだ。刃先を防御壁で覆い、一気にたたみ掛けよう。
「いけえええぇぇ!」
 燭台切で彼の刀を破壊し、俺も刀を捨てる。すかさず拳を握り、腹に一発打ち込んだ。
「ぐはぁ!」
「さっきのお返しだぜ」
 異世界で剣聖だとしても、剣がなければザコに等しいはずだ。これで完璧の──。
「いぢぃ!」
「剣聖だからと言って体術に優れていないわけじゃない!」
 一旦いったん距離を取った俺は、彼をじっと観察した。筋肉はあるから力は強いはずだ。体術にも優れているのは嘘じゃないだろう。
 なら、動きを封じてみよう。間接の部分を防御壁で覆って、俺が防御壁を解除するまでは身動きを取れなくした。
「何だこれは! 動けない!!」
「間接を封じれば動けるわけがないだろ?」
 安心して青年に近寄り、とどめの一撃を食らわせようと片手を振りかぶったら、奴は動き出した。俺は焦りつつ後退した。
「なぜ動けるんだ!」
 俺の声には反応せずに動いている。どうやら、関節を外している。体を壊しながらでも、ちゃんと動いているのだ。奴をここまでさせる原動力は、戦いの勝利だ。
 青年は勝利へ執着しゅうちゃくしているように見受けられる。それをどうにかすれば良いわけだ。どうすれば良いかわからんが、まずは体を壊させないように関節を封じていた防御壁を解除。俺はホームズから貰ったステッキを握る。
「こうなったら関節を直接破壊してやる!」
 関節を破壊、いや骨のほとんどを破壊すればさすがに動けないはずだ。彼には悪いが、そうするしかない。そういう場合、バリツはうってつけだ。突き技の威力で骨を粉砕ふんさい出来るからだ。バリツとは何と素晴らしいものなのだ。
 ステッキを突き、俺の体重を乗せた一撃で片足の骨を破壊。もう片方も破壊し、両手とまども粉砕。これぞまさに粉骨ふんこつ砕身さいしんだ。
「おーい、生きてるか?」
「......俺は死んだんだな──さらばだ、強者よ」
「ちょ、待ってくれ! 三途の川だけは渡らないでくれよ!」
 急いで防御壁を青年の体で展開させ、骨の変わりにした。すると青年は起き上がったが、かなり痛そうにしている。
「なぜ俺を助けたんだ?」
「あんた異世界から来た剣聖なんだろ?」
「まあ、そうだが」
「俺の仲間に加わってほしいんだ」
「貴様ほど強いのに俺の仲間として欲するのか?」
「まあな」
「クックックッ! クッ! クハハハハハ! 面白い奴だな、お前」
「お前の方が面白い奴だと思うんだが。それより、骨を破壊しちまったが、無事か?」
「自己回復スキルというものを持っている。一時間もすれば完治するだろうよ」
 なるほど、青年の住む世界には魔法のようなものがあるようだな。ホームズの世界とはまったく別種のようだ。
「剣聖さん、あんた名前は?」
「名前? ウィリアム=ヘルダーだ。いや、正しくは第二十三代剣聖であり竜殺しの異名を持つジョセフ・ウィリアム=ヘルダーと申す!」
「じょ、ジョセフ・ウィリアム=ヘルダー?」
「そうだ」
「ウィリアム=ヘルダーが苗字でジョセフが名前だ」
「長いな......。ジョーで良いか?」
「構わないさ。俺はすでに死んでいるも同然なんだからな」
「あ、そのことについてくわしく教えてね」
 ジョーがどのようにしてこの世界に来たのかが知りたい。まずはそれを聞いてから仲間にしよう。この強さなら幹部クラスに引き立ててやれる。
 まさか二本松城に向かっている途中で優秀な手駒を手に入れられるとは思わなかった。ここまではうまくいっている。史実通りになることは出来るはずだ。犬死にすることもない。よし、死の恐怖から解放されたな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

婚約破棄?貴方程度がわたくしと結婚出来ると本気で思ったの?

三条桜子
恋愛
王都に久しぶりにやって来た。楽しみにしていた舞踏会で突如、婚約破棄を突きつけられた。腕に女性を抱いてる。ん?その子、誰?わたくしがいじめたですって?わたくしなら、そんな平民殺しちゃうわ。ふふふ。ねえ?本気で貴方程度がわたくしと結婚出来ると思っていたの?可笑しい!  ◎短いお話。文字数も少なく読みやすいかと思います。全6話。 イラスト/ノーコピーライトガール

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...