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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その参陸
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伊達政宗、倒れたり! 何者も近づけさせない見えない壁のような妖術も切れ、彼を守るものは全て消えた。刀は深く胸に刺さり、政宗はほんの少しも動かなくなった。
成実は即座に政宗の危険を察知し、急いで救出に駆けつけた。成実は刀を使いて敵を一掃し、政宗を抱き起こす。屋代景頼も政宗が斬られたと知り、二人に近づこうとする敵方を倒す役目を担った。
「成実殿! 若様は無事ですか!?」
「胸が貫かれて出血が止まりませぬ! 直ちに城に戻り、医者からの治療が必要です!」
「では、私が援護します!」
景頼は刀を鞘に入れて、懐から二丁の拳銃を取り出した。片手に一丁ずつ持ち、引き金に指を掛けた。
「私が時間を稼ぐので、早く若様を城へ連れて行ってください!」
「感謝いたします!」
景頼は引き金を引いて拳銃から弾丸を放ち、正確に的を射た。殺しまでにはいかないものの、行動不能にするにはちょうど良い威力だった。
成実は政宗を抱きかかえると、急いで馬の元まで走った。するとその進路を塞ぐ敵方がいて、景頼は二丁で連射を行った。弾が切れると拳銃を放り投げて、槍にも似たリーチの長い刀を取り出した。この刀は、政宗が景頼の戦い方に合わせて特注したものである。
この特注の刀は槍のように振り回すだけで威力を発揮するものであり、かなりの重さを持ち合わせる。この重さにより、景頼が刀を振り回すだけで直撃した者は、本当の意味で粉骨砕身となる。
「いけえええぇぇぇー!」
また、景頼は政宗から教わった構え方がある。重心が地の底にあるような構えで、攻撃を受けようが倒れることはない。
変わり種の刀を振り、景頼は敵方の中へ突進していく。成実は景頼が注目を集めている間に迂回し、数人の敵方を切り倒しながら馬に近づいていった。
政宗を馬に乗せ、成実は馬を走らせた。景頼は刀を振り回しながら、成実達が馬を走らせて城へ向かったことを確認する。一安心をすると、刀を再度振り回す。成実と政宗が前線から離脱したため、景頼は主力として大いに活躍しないとならない。
大きいとも小さいとも言えない、つかみ所のない目を、景頼は瞬きさせた。視界は良好、彼は負ける気がしなかった。
政宗を馬に乗せた成実は、城への最短ルートを辿りながら馬を走らせる。その間にも、政宗の流血は止まることはない。
「若様、しばらくお待ちください!」
「な......成実か」
「話さないでください! 出血が酷くなります!」
「ああ、そうだな」
政宗は手を動かし、胸に刀が刺さっていることを確かめた。
「どうしましたか、若様?」
「俺、死ぬのか?」
彼の頭の中は、死ぬ、という恐怖が溢れていた。無理もない。政宗の傷口から流れ出る血は、馬一頭を真っ赤に染めるほどの量にも匹敵するくらいだからだ。実際に、政宗と成実を乗せる馬の大半は血で赤く染まっていた。
「若様は死にません! 城に到着するまで耐えてください!」
「......おう」
胸に刺さった刀を抜くと、さらに出血が酷くなってしまう。だから、抜くことは出来ない。政宗は痛みを堪え、刀を強く握った。
「成実。馬が走る衝撃で、患部が痛いのだが」
「!?」
この状況にどう対処するべきか迷った成実は、患部を直接押さえながら政宗に我慢してもらうことになった。
「いっ!」
「ど、どうしました!?」
「痛いんだ......」
「すみません!」
そういうことがあり、馬は何とか米沢城に戻ってきた。成実は政宗を丁寧に降ろし、医者を呼び寄せた。
「医者! 医者はいるか!?」
一生懸命な成実の叫び声に、城に居合わせた者達が駆けつけた。そして医者が呼ばれ、政宗の患部を見る。
「これはいけない! すぐにでも治療室に連れて行きましょう!」
政宗は家臣らに連れられて、治療室に運び込まれた。医者は何をするべきか見極め、治療を施す準備に入った。
治療室には医者以外にサポートをする者が数人だけ残り、他の者は追い出された。成実は、子供を出産する夫のごとく、治療室の前を歩き回った。
治療室の中からは、政宗の叫び声が聞こえてきたようだ。成実は治療室の扉を叩いた。
「若様! 若様っ!」
成実の声に、反応する者は誰もいなかった。やがて治療が終わり、医者が治療室から廊下に出てきた。
「若様は!? 若様は無事ですか!?」
「一応、最善は尽くしました。ただ、奇跡ですよ」
「へ?」
「若様の胸に刺さっていた刀は、ギリギリのところで脈や心臓を外して貫通していました。奇跡に近いことでしょう。そのお陰で死にはしませんでした。出血量は尋常ではありませんが、あの状態なら助かると思います。まずは安静にしておいてください」
「わ、わかりました」
成実は安心するのと同時に膝から崩れ落ちて、肩を落とした。
医者はニヤリと笑みを浮かべながら、その場をあとにした。
「わ、若様!」
思考回路が正常に動き出すと、成実は治療室の中に飛び込んだ。この治療室も政宗が考案した技術などが盛り込まれていて、これからも若様に習うことはたくさんありそうだ、と思いながら成実は政宗に歩み寄った。
政宗は息をしている。動いている。成実はそれを自らの目で見ると、手を腰に回して体をそり返す。そして、ため息をもらした。
成実は即座に政宗の危険を察知し、急いで救出に駆けつけた。成実は刀を使いて敵を一掃し、政宗を抱き起こす。屋代景頼も政宗が斬られたと知り、二人に近づこうとする敵方を倒す役目を担った。
「成実殿! 若様は無事ですか!?」
「胸が貫かれて出血が止まりませぬ! 直ちに城に戻り、医者からの治療が必要です!」
「では、私が援護します!」
景頼は刀を鞘に入れて、懐から二丁の拳銃を取り出した。片手に一丁ずつ持ち、引き金に指を掛けた。
「私が時間を稼ぐので、早く若様を城へ連れて行ってください!」
「感謝いたします!」
景頼は引き金を引いて拳銃から弾丸を放ち、正確に的を射た。殺しまでにはいかないものの、行動不能にするにはちょうど良い威力だった。
成実は政宗を抱きかかえると、急いで馬の元まで走った。するとその進路を塞ぐ敵方がいて、景頼は二丁で連射を行った。弾が切れると拳銃を放り投げて、槍にも似たリーチの長い刀を取り出した。この刀は、政宗が景頼の戦い方に合わせて特注したものである。
この特注の刀は槍のように振り回すだけで威力を発揮するものであり、かなりの重さを持ち合わせる。この重さにより、景頼が刀を振り回すだけで直撃した者は、本当の意味で粉骨砕身となる。
「いけえええぇぇぇー!」
また、景頼は政宗から教わった構え方がある。重心が地の底にあるような構えで、攻撃を受けようが倒れることはない。
変わり種の刀を振り、景頼は敵方の中へ突進していく。成実は景頼が注目を集めている間に迂回し、数人の敵方を切り倒しながら馬に近づいていった。
政宗を馬に乗せ、成実は馬を走らせた。景頼は刀を振り回しながら、成実達が馬を走らせて城へ向かったことを確認する。一安心をすると、刀を再度振り回す。成実と政宗が前線から離脱したため、景頼は主力として大いに活躍しないとならない。
大きいとも小さいとも言えない、つかみ所のない目を、景頼は瞬きさせた。視界は良好、彼は負ける気がしなかった。
政宗を馬に乗せた成実は、城への最短ルートを辿りながら馬を走らせる。その間にも、政宗の流血は止まることはない。
「若様、しばらくお待ちください!」
「な......成実か」
「話さないでください! 出血が酷くなります!」
「ああ、そうだな」
政宗は手を動かし、胸に刀が刺さっていることを確かめた。
「どうしましたか、若様?」
「俺、死ぬのか?」
彼の頭の中は、死ぬ、という恐怖が溢れていた。無理もない。政宗の傷口から流れ出る血は、馬一頭を真っ赤に染めるほどの量にも匹敵するくらいだからだ。実際に、政宗と成実を乗せる馬の大半は血で赤く染まっていた。
「若様は死にません! 城に到着するまで耐えてください!」
「......おう」
胸に刺さった刀を抜くと、さらに出血が酷くなってしまう。だから、抜くことは出来ない。政宗は痛みを堪え、刀を強く握った。
「成実。馬が走る衝撃で、患部が痛いのだが」
「!?」
この状況にどう対処するべきか迷った成実は、患部を直接押さえながら政宗に我慢してもらうことになった。
「いっ!」
「ど、どうしました!?」
「痛いんだ......」
「すみません!」
そういうことがあり、馬は何とか米沢城に戻ってきた。成実は政宗を丁寧に降ろし、医者を呼び寄せた。
「医者! 医者はいるか!?」
一生懸命な成実の叫び声に、城に居合わせた者達が駆けつけた。そして医者が呼ばれ、政宗の患部を見る。
「これはいけない! すぐにでも治療室に連れて行きましょう!」
政宗は家臣らに連れられて、治療室に運び込まれた。医者は何をするべきか見極め、治療を施す準備に入った。
治療室には医者以外にサポートをする者が数人だけ残り、他の者は追い出された。成実は、子供を出産する夫のごとく、治療室の前を歩き回った。
治療室の中からは、政宗の叫び声が聞こえてきたようだ。成実は治療室の扉を叩いた。
「若様! 若様っ!」
成実の声に、反応する者は誰もいなかった。やがて治療が終わり、医者が治療室から廊下に出てきた。
「若様は!? 若様は無事ですか!?」
「一応、最善は尽くしました。ただ、奇跡ですよ」
「へ?」
「若様の胸に刺さっていた刀は、ギリギリのところで脈や心臓を外して貫通していました。奇跡に近いことでしょう。そのお陰で死にはしませんでした。出血量は尋常ではありませんが、あの状態なら助かると思います。まずは安静にしておいてください」
「わ、わかりました」
成実は安心するのと同時に膝から崩れ落ちて、肩を落とした。
医者はニヤリと笑みを浮かべながら、その場をあとにした。
「わ、若様!」
思考回路が正常に動き出すと、成実は治療室の中に飛び込んだ。この治療室も政宗が考案した技術などが盛り込まれていて、これからも若様に習うことはたくさんありそうだ、と思いながら成実は政宗に歩み寄った。
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