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第四章『輝宗の死』
伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その弐弐
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ホームズの長い話しを聞き終えた俺は、肩を落とした。
全九冊にもなるホームズ物語を話し終えたホームズは、俺に顔を向ける。「どうだい? 何か参考になったか?」
「う~ん。どうだろうか。まだわからないが、役立つかもしれない」
「それは良かった。こんなに話したのは久々だから、喉が疲れたよ」
「今日はゆっくり休んでくれ」
「ああ、そうするとしよう」
ホームズは部屋を去った。
まさか、途中からアルセーヌ・ルパンと怪人二十面相、明智小五郎の話しになるとは......。聞かなきゃ良かったぜ。ただ、輝宗を助け出すためには、推理をしないといけない。輝宗が助かる方法は何だ!?
頭を悩ませていると、もう空は真っ暗になっていた。そんなに時間が経ったかな?
クリスマスパーティーはどうなっただろうか。俺は扉を開けて顔を覗かせた。
「仁和はいるか!」
俺の張り上げた声に反応し、仁和は駆けつけてきた。「いかようで?」
「クリスマスパーティーの準備はどれくらい進んだ?」
「料理の作り方の指導はかなり進みました。クリスマスパーティーの準備はある程度は進んでいますが、政宗殿の統率力がなくてはいっこうにまとまりがなくて......」
「仁和の指揮力があっても、家臣どもはまとまらないのか!?」
「はい。おそらく、政宗殿が当主になったことで家臣達は有頂天となっているのでしょう。言うことを聞かない者もいます。未来人衆は何とか言うことを聞いていますが、政宗殿直属の者は駄目です」
「そうか。なら、俺が自ら叱ろう。さすれば何とかなるであろうな?」
「何とかなるでしょう」
「クリスマスパーティーの準備をしていた奴らを集めろ!」
「承知しました」
仁和は廊下を走り抜けた。
クリスマスパーティーが出来れば、伊達巻き以外の美味しい料理も食えるんだな。ただ、仁和いわく明日も俺は料理をするらしい。今日でもうヘトヘトだ。
本日最後の仕事は、家臣を叱ること。集められた家臣の前に立ち、息を吸い込む。「皆で一丸となって、頑張ってこのクリスマスパーティーにに取り組め! 仁和から聞いたが、なぜまとまらないんだ! 仁和の言うことは、基本的に俺の言うことだと思え!」
俺も偉くなったものだ。こんな大人数を叱れるとか、どんな管理職だ? 前世で教師をしていた時は想像もしなかった。
家臣どもは俺の言うことに真面目に耳を傾け、己を戒めていた。まとまりはないが、各々は良い奴らだ。
「以上! 今日は疲れを癒やせ! 明日からは、ちゃんとするように!」
「「わかりました!」」
こういうのは管理職なんかではないのかもしれない。これは教師のようなことなんじゃないか? 大勢(の生徒)を叱る、という意味では伊達政宗も高校の教師も変わりはない。この伊達政宗も教師の延長線上という感じに考えれば、前世と大差はないな。
可愛い生徒達(一部は憎たらしい)を思い出すと、気分が良くなった。その気分のまま布団に潜り込むと、ぐっすりと寝た。
人生、思い通りに行くことはない。今、絶賛それを痛感している。なぜかと言うと、朝起きて最初に目に入ったのが、泥棒に入られたかのように化した自室であるからだ。
昨日ホームズから聞かされた話しを引きずっており、起きてから数分間はアルセーヌ・ルパンか怪人二十面相のどちらかが犯人だと考えた。が、多分違うと思う。ホームズみたいにルパンや怪人二十面相が俺の目の前に現れる可能性もなくはないが、それ以上に可能性が高い結論がある。窓が開け放たれていて、吹き込んだ風で書類やら何やらが飛ばされたんだろう。終わり。
だけど、窓をちゃんと閉めた記憶はあるんだ。ただ、はっきりと断言は出来ない。確証がないからだ。
部屋を見回す。大事な書類も日時計も、軽い物のほとんどが部屋から消えている。窓の外に落ちたということだ。
「ちっくしょー! 風のクソ野郎!」
このストレスを発散すべく、実体のない風に怒りをぶつけてみた。それから、窓に駆け寄って顔を出した。数十枚の紙が地面に散らばっていることがわかる。
「網戸を今度作らせるか」
怒りを通り越すと、改善案が浮かんだ。網戸、今は非常に必要だ。これは盲点だった。網戸って案外と必要なものなんだな。前世でも俺の生活を影ながら支えてくれていたとは。製造会社と網戸自身に感謝。
現実逃避はさておき、窓から落ちたものを全て拾わなきゃいけない。俺は窓を閉めてから部屋を飛び出した。そして家臣を集めて、拾うのを手伝わせた。そうしている内に家臣に、次第に結束力が生まれていき、後半になるにつれて拾うスピードが速くなっていった。
何かおかしいな、と感じるようになったのは仁和から視線を向けられていたからだ。もしかすると、仁和が俺の部屋の窓を開けたのかもしれない。落ちたものを拾うのに、必ず俺は人の手に頼る。そこで家臣の結束力を増やさせる、というのが仁和の作戦なのだろう。
あとで、事実かどうか仁和に確認する必要があるな。事実だったら、最初は褒めてから最後に怒ってやろう。男の部屋には、女に見られたくないものがたくさんあるのだ。
全九冊にもなるホームズ物語を話し終えたホームズは、俺に顔を向ける。「どうだい? 何か参考になったか?」
「う~ん。どうだろうか。まだわからないが、役立つかもしれない」
「それは良かった。こんなに話したのは久々だから、喉が疲れたよ」
「今日はゆっくり休んでくれ」
「ああ、そうするとしよう」
ホームズは部屋を去った。
まさか、途中からアルセーヌ・ルパンと怪人二十面相、明智小五郎の話しになるとは......。聞かなきゃ良かったぜ。ただ、輝宗を助け出すためには、推理をしないといけない。輝宗が助かる方法は何だ!?
頭を悩ませていると、もう空は真っ暗になっていた。そんなに時間が経ったかな?
クリスマスパーティーはどうなっただろうか。俺は扉を開けて顔を覗かせた。
「仁和はいるか!」
俺の張り上げた声に反応し、仁和は駆けつけてきた。「いかようで?」
「クリスマスパーティーの準備はどれくらい進んだ?」
「料理の作り方の指導はかなり進みました。クリスマスパーティーの準備はある程度は進んでいますが、政宗殿の統率力がなくてはいっこうにまとまりがなくて......」
「仁和の指揮力があっても、家臣どもはまとまらないのか!?」
「はい。おそらく、政宗殿が当主になったことで家臣達は有頂天となっているのでしょう。言うことを聞かない者もいます。未来人衆は何とか言うことを聞いていますが、政宗殿直属の者は駄目です」
「そうか。なら、俺が自ら叱ろう。さすれば何とかなるであろうな?」
「何とかなるでしょう」
「クリスマスパーティーの準備をしていた奴らを集めろ!」
「承知しました」
仁和は廊下を走り抜けた。
クリスマスパーティーが出来れば、伊達巻き以外の美味しい料理も食えるんだな。ただ、仁和いわく明日も俺は料理をするらしい。今日でもうヘトヘトだ。
本日最後の仕事は、家臣を叱ること。集められた家臣の前に立ち、息を吸い込む。「皆で一丸となって、頑張ってこのクリスマスパーティーにに取り組め! 仁和から聞いたが、なぜまとまらないんだ! 仁和の言うことは、基本的に俺の言うことだと思え!」
俺も偉くなったものだ。こんな大人数を叱れるとか、どんな管理職だ? 前世で教師をしていた時は想像もしなかった。
家臣どもは俺の言うことに真面目に耳を傾け、己を戒めていた。まとまりはないが、各々は良い奴らだ。
「以上! 今日は疲れを癒やせ! 明日からは、ちゃんとするように!」
「「わかりました!」」
こういうのは管理職なんかではないのかもしれない。これは教師のようなことなんじゃないか? 大勢(の生徒)を叱る、という意味では伊達政宗も高校の教師も変わりはない。この伊達政宗も教師の延長線上という感じに考えれば、前世と大差はないな。
可愛い生徒達(一部は憎たらしい)を思い出すと、気分が良くなった。その気分のまま布団に潜り込むと、ぐっすりと寝た。
人生、思い通りに行くことはない。今、絶賛それを痛感している。なぜかと言うと、朝起きて最初に目に入ったのが、泥棒に入られたかのように化した自室であるからだ。
昨日ホームズから聞かされた話しを引きずっており、起きてから数分間はアルセーヌ・ルパンか怪人二十面相のどちらかが犯人だと考えた。が、多分違うと思う。ホームズみたいにルパンや怪人二十面相が俺の目の前に現れる可能性もなくはないが、それ以上に可能性が高い結論がある。窓が開け放たれていて、吹き込んだ風で書類やら何やらが飛ばされたんだろう。終わり。
だけど、窓をちゃんと閉めた記憶はあるんだ。ただ、はっきりと断言は出来ない。確証がないからだ。
部屋を見回す。大事な書類も日時計も、軽い物のほとんどが部屋から消えている。窓の外に落ちたということだ。
「ちっくしょー! 風のクソ野郎!」
このストレスを発散すべく、実体のない風に怒りをぶつけてみた。それから、窓に駆け寄って顔を出した。数十枚の紙が地面に散らばっていることがわかる。
「網戸を今度作らせるか」
怒りを通り越すと、改善案が浮かんだ。網戸、今は非常に必要だ。これは盲点だった。網戸って案外と必要なものなんだな。前世でも俺の生活を影ながら支えてくれていたとは。製造会社と網戸自身に感謝。
現実逃避はさておき、窓から落ちたものを全て拾わなきゃいけない。俺は窓を閉めてから部屋を飛び出した。そして家臣を集めて、拾うのを手伝わせた。そうしている内に家臣に、次第に結束力が生まれていき、後半になるにつれて拾うスピードが速くなっていった。
何かおかしいな、と感じるようになったのは仁和から視線を向けられていたからだ。もしかすると、仁和が俺の部屋の窓を開けたのかもしれない。落ちたものを拾うのに、必ず俺は人の手に頼る。そこで家臣の結束力を増やさせる、というのが仁和の作戦なのだろう。
あとで、事実かどうか仁和に確認する必要があるな。事実だったら、最初は褒めてから最後に怒ってやろう。男の部屋には、女に見られたくないものがたくさんあるのだ。
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