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4.第2戦
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華山先輩がコートを脱ぐ。入場してきたレスラーがガウンを脱ぐように。腕にはギプス。いつものアクションスーツは着脱が難しいということで、半袖のスポーツウェアを購入し、モーションキャプチャ用のドットを縫い付けた。一応、右腕のギプスにもドットを両面テープで貼り付けるという応急措置をしているが、使わないに越したことはない。
「……来ます」
マドカからの着信の直後、華山先輩が動き出した。右腕は所在なさげにぶらぶらと。しかし、脚に問題はないから、いつも通り華麗なフットワークでアクションフィールド内を跳ねる。
先輩はアクションフィールドの縁を這うように動く。今日のソレウス構造体はどうやら臆病なようで、バイオシールドに穴がないかと右往左往しているらしい。
「彼女はスポーツでもしてたの? ボクシングとか」
あまりの機敏さに目を丸くした橋田先生が、僕に問う。問われたところで回答はできない。だって華山先輩のことはよく知らないから。いつも黒いコートを着ていて、クリームソーダを好み、美人だけれどファッションや自分の容姿には無頓着で、面倒くさがり。朝が弱くて、大学の授業はサボりがち。クールで無愛想に見えるけれど、実は優しい。それくらいしか知らない。充分かな。
先輩がどんな幼少期を過ごしてきたかなんて想像もできなかったが、幼馴染ならいざ知らず、仲の良い大学の親友だって、幼い頃のことなんて知らないもんだ。そういうものだ。
母校の体育館は変わっていないが、卒業してこれだけ経つと印象が違う。全てが、幾分、小さく感じる。合唱コンクールで立ったステージは、当時はとても厳かに感じたものだけど、今見れば大したことはなくて、ゴールを決めた同級生がヒーローに思えたほど高く感じたバスケットゴールは、軽くジャンプすれば手が届くほどで拍子抜けした。
目につく風景がとても鮮やかに感じる。思い出補正ってやつだろうか。いや、やっぱり当時のことなんて、しっかり覚えているようで実は年々脳から薄れていて、こうして実物を見ると忘れていたディティールが目につき、鮮やかに思えるだけなのかもしれない。
ふと先輩に目をやると、先輩はフィールドの中央に立ったまま天井を見上げていた。何が起きたのだろう。やはり、怪我が痛むのだろうか。しかし、先輩の顔は至って冷静だった。
「マドカ。何が起きてる」
「ちょっと変です。このソレウス体……」
ヘッドセットの向こうから聞こえる応答からは隠しきれない困惑を感じさせた。
「コウジくん、これを観てくれ」
私物のタブレットを橋田先生が差し出した。“イントゥ・ブラッド”のライブ配信が表示されていた。画面端のコメント欄は荒れている。視聴者たちも同様に困惑していた。
表示された仮想フィールド内の映像。中央に佇むソレウスキラー。なんだか呆けたようにフィールドの天井の隅を見つめたまま硬直している。その視線の先に羽根を畳んだアゲハ蝶が1匹。ソレウス構造体は眠ったようにフィールド内の上方、その角で静止していた。
僕はこんな事案を聞いたことがなかった。これまで何千回とソレウス構造体掃討実験が行われてきた。大抵のソレウス構造体はソレウスキラーを敵視し、すぐさま近接攻撃を仕掛けてきた。たまにバイオフィールドを破ろうと無駄なあがきをするソレウス構造体もいることにはいたが、やがて脱出は不可能と悟り、ソレウスキラーに攻撃してくるのが常だった。ソレウス構造体の持つ闘争本能ゆえとも、放射されたアミラルβ線に刺激されているためだとも言われる。
しかし、今回のソレウス構造体はフィールドの隅で動かない。まるで8分間だけ辛抱すればよい、とわかっているかのような行動だった。これまでの実験から、必ず近接攻撃を仕掛けてくるというソレウス構造体の性質を踏まえ、ソレウスキラーは立方体フィールドの底面を動くようにしか設計されていない。
確かに電力供給を最小限にすれば、底面に張られたシリコンが緩み、上方にも移動はできる。しかし、血流の影響を受けるためコントロールは難しい。
それは今、眼前に展開されたアクションフィールドも同じだ。1辺4メートルの正方形。華山先輩にしてみれば、高さ4メートルの位置に倒すべき敵がいることになる。いくら運動神経のよい華山先輩でも4メートルの高さを跳躍できる脚力はない。盲点だった。
虚しくも時間が過ぎてゆく。あと3分しかない。ソレウス構造体。正式名称『循環器系寄生細菌様“自律的”構造体』。“自律的”というのは、まるで意思を持つかのように自律的な挙動を見せることから名付けられた。あくまで“まるで”だったはずなのに、今、華山先輩が対峙しているソレウス構造体には確かな知性を感じさせる。
「石立くん。聞こえる?」
2戦目の失敗を覚悟し始めたとき、華山先輩から着信が入った。体育館の中の先輩に目をやると、まだ天井を見上げたまま、立っていた。
「先輩、もう充分です。こいつは倒せません」
「マット、用意して。分厚いやつ」
何を考えている。先輩がやろうとしていることがわからない。「負ける気がしない」とあの日の夕方、部室で告げた先輩の記憶が蘇る。先輩はまだ諦めていないのか。
テニスの試合を眺めるみたいに、タブレットと体育館の華山先輩とを交互に眺めていた橋田先生に「厚いマットって用意できますか」と尋ねた。僕と同様、意図がつかめずにいた橋田先生だったが、大きく頷くと、ステージ横の倉庫へ僕を連れて走り出す。
裸足で触れた体育館の床は体温より温かい。ドシドシと2人の男が体育館をかける音。先輩に目をやると、相変わらず、天井の1点を見つめていた。
2人がかりで、緑色のマットを引き出す。かなりの大きさと重さ。開脚前転なんかを練習するような煎餅蒲団みたいなやつではなく、鉄棒の大車輪を練習するときに使う分厚いマット。厚さは40センチほどあるだろうか。
「これでいいですか!」
ヘッドセットを通さず、地声で叫ぶと、華山先輩はこちらを一瞥して頷いた。僕は少しずつ、嫌な予感がし始めていて、この予感があっていたとしたら、部長として先輩を止めなければならないと覚悟を決めつつあった。先輩は天井をもう一度眺めた後、視線を下ろして、僕らに指示をする。
「ここへ、マットを」
フィールド内を左手で指差す。逡巡しつつもマットを引きずり、指示どおりの場所に据えた。それを見届けると先輩は、フィールドの外へ出た。
“イントゥ・ブラッド”を見守る視聴者たちは驚いただろう。さっきまで立ち尽くしていたマイクロロボットが、フィールドの縁まで突然歩きだしたかと思うと、バイオフィールドにもたれかかるようにして動きを止めたのだから。アクションフィールドから操縦者が外に出ると、行き場を失ったマイクロロボットはこういう間抜けな状態になる。残り時間はあと1分半程だろうか。
「先輩、無茶はやめてください」
僕は部長として言うべきことを言った。マドカやヨウジロウとの約束。でも僕のそんな責任感とかは目の前の先輩にとってあまり重要じゃなかったみたいだ。
「もし今日失敗したとしたら、いや失敗なんてする気ないんだけど、私はソレウスキラーを辞める。だから、今日だけは無茶させて」
つくづく自分勝手な人だと思う。僕らの心配なんて気にしてないみたい。でも僕は思い返す。
『ここにいていい理由があるんだ、って思えるから』
先輩はあの雨上がりの夕方の部室でそう言った。確かに僕らは操縦研で出会った。でも操縦研を卒業したって僕らは仲間だ。別に華山先輩が唯一の操縦者だから、大事に思っているわけではない。頑張らなくたって、失敗したって、先輩と縁を切るなんてことはない。だけど。
「……今日こそ、祝勝会しましょう」
やっぱり華山先輩を止められなかった。部長失格だ。先輩は口元に絡んだ髪を左手で直すと、僕に微笑んだ。先輩は強い。何を言ったって無駄だろう。先輩が自分の意思を告げるとき、それは最終通告なのだから。
先輩はフィールドの側に立つバスケットゴールに手をかけた。塗装が所々はげた鉄製の格子。登れるように設計したやつを呪う。子供が真似したらどうする気だ。右手が使えないことを物ともせず、登りきった先輩は、バスケットゴールの天辺で深呼吸をした。仮想フィールドでは今もマイクロロボットがフィールドの縁に背を持たれるように立っている。バスケットゴールが傾く。橋田先生が慌てて支えに走る。先輩がバスケットゴールのリングに足をかけて、飛んだ。
前回の対戦での好成績から“勝利”にベットしていた観戦者たちが「負けた!」と叫ぼうとした、終了10秒前。突然操縦者がアクションフィールドに復帰したことで、長い沈黙を続けていたソレウスキラーが、上方に勢いよく飛び上がった。電力供給が止まったシリコンが伸びる。天井の隅で息をひそめる1匹のアゲハ蝶。それに向かって鋭い極細針が伸びた。
まさかこんなことになるとはソレウス構造体も思っていなかっただろう。それを考えるだけの知性があるのかはわからないが。やつは墓穴を掘った。耐え忍べば乗り越えられると思った罠。しかし、フィールドの隅に陣取ったせいで逃げ場はなかった。
捕捉用のライトアームなんて必要なかった。ニードルがソレウス構造体の節くれ立った醜い身体を突いた。仮想上の羽根をつけたアゲハ蝶の“頭・胸・腹”が震える。その痙攣がやんだとき、バイオフィールドが崩壊を始めた。血管内フィールドに白血球がなだれ込む。
長い8分間が終わった。観戦者たちの歓声が起こる。
まるで羽根を得たように空中へ飛んだ華山先輩は、左手を突き出したまま、マットへと降下を始める。体をひねり、背面から着地する。その一瞬が嫌になるくらい長く感じられた。
ぽすっ、という意外なほど間抜けな音が体育館にこだました。しばらくマットに寝そべっていた先輩は、目をつぶったまま右手のギプスを掲げた。怪我は問題ないという合図。
先輩の付き添いなんて金輪際するものかと思う。いくら心臓があったって持たない。ヘッドセットからマドカの声が聞こえる。状況が掴めず、混乱していた。喜んだり、怒ったり、笑ったり、泣いたり。唯一、発した言葉で理解できたのは、「ナナカ先輩とコウちゃん先輩、帰ってきたら説教です」ってこと。先輩が声を出して笑った。つられて僕も笑う。
その夜、僕ら4人は大学の近くの居酒屋の個室にいた。祝勝会兼、マドカからの説教会。ここの居酒屋はクリームソーダがちゃんとある。
「怪我はもう大丈夫だからさ」
華山先輩が涙目のマドカに言う。マドカは2戦目が終わってホッとしたのか、いつにも増して感情が豊か(というか激しい)で、常にクールなはずの華山先輩もタジタジだった。それの様子が少し面白かった。
「でもさすがですよ、華山先輩。あいつ倒すなんて」
操縦研の酒豪枠を担うヨウジロウが枝豆をつまむ。マドカがヨウジロウを睨む。ヨウジロウは意にも介さず、店員を呼んで6杯目のハイボールを頼んだ。
「それにしてもおかしいっすよ、あのソレウス体。なんで攻撃してこなかったんですかね」
ヨウジロウの疑問は最もだった。そんなデータは今まで存在しなかった。今後、こういう個体が現れるようだったら、ソ対機側も対策を講じる必要があるだろう。しかし、単純に血管内フィールドの天井を低くすればよいというわけでもない。
血管内フィールドは、毛細血管の壁にナノマシンをプロットすることで構築される。天井を低くすると、それだけ血液が通りづらくなり、同時にソレウス構造体も捕獲しづらくなる。またバイオシールドの構築も平面だからこそ、瞬時に構築することが可能なのであり、フィールドの形を変えて戦いやすくしたとして、複雑な形や曲面構造が生じてしまうとバイオシールドがうまく作動しない。
楽観的に考えるならば、あの個体が特殊だっただけで、今後のソレウス構造体が同じ挙動をするとは限らない。聞けば華山先輩はこちらの考え方で、もし今回のような個体に遭遇したとしても同じ方法で倒せる、と自信を見せた。マドカはもちろん怒ったけど。
「怪我人に介抱させるわけにはいかないですー!」
と喚くマドカだったが、夜道を女の子ひとりで帰らせるわけにはいかない。余程疲れていたのか、酒も飲んでいないのにふらふらで、トレードマークの丸メガネがずれている。辛うじて小さな鼻に引っかかっていた。
時計は0時を回ったところで、外に出ると街に人は少なかった。タクシーがノロノロと僕らの前を通り過ぎていく。その内の1つを捕まえた華山先輩がマドカを中に押し込む。
ドアが閉まって走り去るタクシー。中ではマドカが華山先輩に抱きついて泣いていた。ちょっとめんどくさいけど、決して嫌いにはなれないやつ。横に立つヨウジロウは真鍮のジッポーを取り出すと、タバコに火をつけた。蒸し暑い夜。
「コウジ、ちょっと付き合ってよ」
ヨウジロウが紫煙を夜空に吹き上げながら言った。僕とヨウジロウは少し歩いて、爛々と光るやかましい建物の前にたどり着いた。
「ヨウジロウ、パチンコ打つの?」
「打ったことねえ」
ヨウジロウの口元が緩む。近所のパチンコ屋。閉店の時間まであと1時間だと、看板が示していた。ヨウジロウは合理的なやつで、いつも確率がどうとか口癖のようにいうから、期待値を考えれば損しかしないパチンコをするなんて意外だった。
「たまには少ない確率にかけてもいいかなって」
耳を殺しにかかる店内の爆音に負けじとヨウジロウが叫んだ。僕も打ったことなんてなかったけれど、1000円だけ突っ込んだ。酒が入っている時くらい、こういう遊びをしてもいいかなと思ったり。
一定のリズムを保ちつつ発射される鉄球と、眩しい液晶画面を眺めながら、ヨウジロウが呟く。
「マドカって彼女とか居るのかなあ」
無意識に出た言葉だったのだろう。聴いていないフリをした僕をチラ見して、安心したように止めていた手を動かし出した。薄々勘付いてはいたから、意外でもなかったけれど。あれだけ「メガネが楽だから」と話していたヨウジロウがコンタクトに変えた理由に心当たりがあったから。
いつだったか、マドカがふと「ヨウちゃん先輩はコンタクトの方がいいと思う」と言った。きっとマドカ本人も忘れていると思うのだけど、それから程なくしてヨウジロウはコンタクトにした。こいつも可愛いとこあるな、と1つ年上の同期を微笑ましく思った。
少ない確率、ってそういうことなのかな。さっさと告白しちまえよ、思うのだけど。多分、ヨウジロウが思っているほど少ない確率じゃない気もするし。そんなこと考えていると、僕の台でリーチがかかって、当たった。ビギナーズラックってやつか。6000円分くらい得をした。球が止まらなくてあたふたする僕をヨウジロウは羨ましそうに眺める。
結局、ヨウジロウは閉店まで粘った挙句、2000円、スった。落ち込むヨウジロウに儲けの半分を渡す。僕は今日の祝勝会代が浮いたし、ヨウジロウとて1000円ほど得したわけで、悪い遊びではなかった。少し耳が遠くなった僕らは、他愛の無い話をしながら(もちろんマドカの話をするような野暮なことはしない)歩き、大学の側の交差点で別れた。
満ち足りた心地がした。深夜も頑張る長距離運転の大型トラックが、歩道を揺らす。月光は薄雲に乱反射して滲んでいた。今日はよく眠れそうだ。僕ら大学生たちにも夏休みがやってくる。
「……来ます」
マドカからの着信の直後、華山先輩が動き出した。右腕は所在なさげにぶらぶらと。しかし、脚に問題はないから、いつも通り華麗なフットワークでアクションフィールド内を跳ねる。
先輩はアクションフィールドの縁を這うように動く。今日のソレウス構造体はどうやら臆病なようで、バイオシールドに穴がないかと右往左往しているらしい。
「彼女はスポーツでもしてたの? ボクシングとか」
あまりの機敏さに目を丸くした橋田先生が、僕に問う。問われたところで回答はできない。だって華山先輩のことはよく知らないから。いつも黒いコートを着ていて、クリームソーダを好み、美人だけれどファッションや自分の容姿には無頓着で、面倒くさがり。朝が弱くて、大学の授業はサボりがち。クールで無愛想に見えるけれど、実は優しい。それくらいしか知らない。充分かな。
先輩がどんな幼少期を過ごしてきたかなんて想像もできなかったが、幼馴染ならいざ知らず、仲の良い大学の親友だって、幼い頃のことなんて知らないもんだ。そういうものだ。
母校の体育館は変わっていないが、卒業してこれだけ経つと印象が違う。全てが、幾分、小さく感じる。合唱コンクールで立ったステージは、当時はとても厳かに感じたものだけど、今見れば大したことはなくて、ゴールを決めた同級生がヒーローに思えたほど高く感じたバスケットゴールは、軽くジャンプすれば手が届くほどで拍子抜けした。
目につく風景がとても鮮やかに感じる。思い出補正ってやつだろうか。いや、やっぱり当時のことなんて、しっかり覚えているようで実は年々脳から薄れていて、こうして実物を見ると忘れていたディティールが目につき、鮮やかに思えるだけなのかもしれない。
ふと先輩に目をやると、先輩はフィールドの中央に立ったまま天井を見上げていた。何が起きたのだろう。やはり、怪我が痛むのだろうか。しかし、先輩の顔は至って冷静だった。
「マドカ。何が起きてる」
「ちょっと変です。このソレウス体……」
ヘッドセットの向こうから聞こえる応答からは隠しきれない困惑を感じさせた。
「コウジくん、これを観てくれ」
私物のタブレットを橋田先生が差し出した。“イントゥ・ブラッド”のライブ配信が表示されていた。画面端のコメント欄は荒れている。視聴者たちも同様に困惑していた。
表示された仮想フィールド内の映像。中央に佇むソレウスキラー。なんだか呆けたようにフィールドの天井の隅を見つめたまま硬直している。その視線の先に羽根を畳んだアゲハ蝶が1匹。ソレウス構造体は眠ったようにフィールド内の上方、その角で静止していた。
僕はこんな事案を聞いたことがなかった。これまで何千回とソレウス構造体掃討実験が行われてきた。大抵のソレウス構造体はソレウスキラーを敵視し、すぐさま近接攻撃を仕掛けてきた。たまにバイオフィールドを破ろうと無駄なあがきをするソレウス構造体もいることにはいたが、やがて脱出は不可能と悟り、ソレウスキラーに攻撃してくるのが常だった。ソレウス構造体の持つ闘争本能ゆえとも、放射されたアミラルβ線に刺激されているためだとも言われる。
しかし、今回のソレウス構造体はフィールドの隅で動かない。まるで8分間だけ辛抱すればよい、とわかっているかのような行動だった。これまでの実験から、必ず近接攻撃を仕掛けてくるというソレウス構造体の性質を踏まえ、ソレウスキラーは立方体フィールドの底面を動くようにしか設計されていない。
確かに電力供給を最小限にすれば、底面に張られたシリコンが緩み、上方にも移動はできる。しかし、血流の影響を受けるためコントロールは難しい。
それは今、眼前に展開されたアクションフィールドも同じだ。1辺4メートルの正方形。華山先輩にしてみれば、高さ4メートルの位置に倒すべき敵がいることになる。いくら運動神経のよい華山先輩でも4メートルの高さを跳躍できる脚力はない。盲点だった。
虚しくも時間が過ぎてゆく。あと3分しかない。ソレウス構造体。正式名称『循環器系寄生細菌様“自律的”構造体』。“自律的”というのは、まるで意思を持つかのように自律的な挙動を見せることから名付けられた。あくまで“まるで”だったはずなのに、今、華山先輩が対峙しているソレウス構造体には確かな知性を感じさせる。
「石立くん。聞こえる?」
2戦目の失敗を覚悟し始めたとき、華山先輩から着信が入った。体育館の中の先輩に目をやると、まだ天井を見上げたまま、立っていた。
「先輩、もう充分です。こいつは倒せません」
「マット、用意して。分厚いやつ」
何を考えている。先輩がやろうとしていることがわからない。「負ける気がしない」とあの日の夕方、部室で告げた先輩の記憶が蘇る。先輩はまだ諦めていないのか。
テニスの試合を眺めるみたいに、タブレットと体育館の華山先輩とを交互に眺めていた橋田先生に「厚いマットって用意できますか」と尋ねた。僕と同様、意図がつかめずにいた橋田先生だったが、大きく頷くと、ステージ横の倉庫へ僕を連れて走り出す。
裸足で触れた体育館の床は体温より温かい。ドシドシと2人の男が体育館をかける音。先輩に目をやると、相変わらず、天井の1点を見つめていた。
2人がかりで、緑色のマットを引き出す。かなりの大きさと重さ。開脚前転なんかを練習するような煎餅蒲団みたいなやつではなく、鉄棒の大車輪を練習するときに使う分厚いマット。厚さは40センチほどあるだろうか。
「これでいいですか!」
ヘッドセットを通さず、地声で叫ぶと、華山先輩はこちらを一瞥して頷いた。僕は少しずつ、嫌な予感がし始めていて、この予感があっていたとしたら、部長として先輩を止めなければならないと覚悟を決めつつあった。先輩は天井をもう一度眺めた後、視線を下ろして、僕らに指示をする。
「ここへ、マットを」
フィールド内を左手で指差す。逡巡しつつもマットを引きずり、指示どおりの場所に据えた。それを見届けると先輩は、フィールドの外へ出た。
“イントゥ・ブラッド”を見守る視聴者たちは驚いただろう。さっきまで立ち尽くしていたマイクロロボットが、フィールドの縁まで突然歩きだしたかと思うと、バイオフィールドにもたれかかるようにして動きを止めたのだから。アクションフィールドから操縦者が外に出ると、行き場を失ったマイクロロボットはこういう間抜けな状態になる。残り時間はあと1分半程だろうか。
「先輩、無茶はやめてください」
僕は部長として言うべきことを言った。マドカやヨウジロウとの約束。でも僕のそんな責任感とかは目の前の先輩にとってあまり重要じゃなかったみたいだ。
「もし今日失敗したとしたら、いや失敗なんてする気ないんだけど、私はソレウスキラーを辞める。だから、今日だけは無茶させて」
つくづく自分勝手な人だと思う。僕らの心配なんて気にしてないみたい。でも僕は思い返す。
『ここにいていい理由があるんだ、って思えるから』
先輩はあの雨上がりの夕方の部室でそう言った。確かに僕らは操縦研で出会った。でも操縦研を卒業したって僕らは仲間だ。別に華山先輩が唯一の操縦者だから、大事に思っているわけではない。頑張らなくたって、失敗したって、先輩と縁を切るなんてことはない。だけど。
「……今日こそ、祝勝会しましょう」
やっぱり華山先輩を止められなかった。部長失格だ。先輩は口元に絡んだ髪を左手で直すと、僕に微笑んだ。先輩は強い。何を言ったって無駄だろう。先輩が自分の意思を告げるとき、それは最終通告なのだから。
先輩はフィールドの側に立つバスケットゴールに手をかけた。塗装が所々はげた鉄製の格子。登れるように設計したやつを呪う。子供が真似したらどうする気だ。右手が使えないことを物ともせず、登りきった先輩は、バスケットゴールの天辺で深呼吸をした。仮想フィールドでは今もマイクロロボットがフィールドの縁に背を持たれるように立っている。バスケットゴールが傾く。橋田先生が慌てて支えに走る。先輩がバスケットゴールのリングに足をかけて、飛んだ。
前回の対戦での好成績から“勝利”にベットしていた観戦者たちが「負けた!」と叫ぼうとした、終了10秒前。突然操縦者がアクションフィールドに復帰したことで、長い沈黙を続けていたソレウスキラーが、上方に勢いよく飛び上がった。電力供給が止まったシリコンが伸びる。天井の隅で息をひそめる1匹のアゲハ蝶。それに向かって鋭い極細針が伸びた。
まさかこんなことになるとはソレウス構造体も思っていなかっただろう。それを考えるだけの知性があるのかはわからないが。やつは墓穴を掘った。耐え忍べば乗り越えられると思った罠。しかし、フィールドの隅に陣取ったせいで逃げ場はなかった。
捕捉用のライトアームなんて必要なかった。ニードルがソレウス構造体の節くれ立った醜い身体を突いた。仮想上の羽根をつけたアゲハ蝶の“頭・胸・腹”が震える。その痙攣がやんだとき、バイオフィールドが崩壊を始めた。血管内フィールドに白血球がなだれ込む。
長い8分間が終わった。観戦者たちの歓声が起こる。
まるで羽根を得たように空中へ飛んだ華山先輩は、左手を突き出したまま、マットへと降下を始める。体をひねり、背面から着地する。その一瞬が嫌になるくらい長く感じられた。
ぽすっ、という意外なほど間抜けな音が体育館にこだました。しばらくマットに寝そべっていた先輩は、目をつぶったまま右手のギプスを掲げた。怪我は問題ないという合図。
先輩の付き添いなんて金輪際するものかと思う。いくら心臓があったって持たない。ヘッドセットからマドカの声が聞こえる。状況が掴めず、混乱していた。喜んだり、怒ったり、笑ったり、泣いたり。唯一、発した言葉で理解できたのは、「ナナカ先輩とコウちゃん先輩、帰ってきたら説教です」ってこと。先輩が声を出して笑った。つられて僕も笑う。
その夜、僕ら4人は大学の近くの居酒屋の個室にいた。祝勝会兼、マドカからの説教会。ここの居酒屋はクリームソーダがちゃんとある。
「怪我はもう大丈夫だからさ」
華山先輩が涙目のマドカに言う。マドカは2戦目が終わってホッとしたのか、いつにも増して感情が豊か(というか激しい)で、常にクールなはずの華山先輩もタジタジだった。それの様子が少し面白かった。
「でもさすがですよ、華山先輩。あいつ倒すなんて」
操縦研の酒豪枠を担うヨウジロウが枝豆をつまむ。マドカがヨウジロウを睨む。ヨウジロウは意にも介さず、店員を呼んで6杯目のハイボールを頼んだ。
「それにしてもおかしいっすよ、あのソレウス体。なんで攻撃してこなかったんですかね」
ヨウジロウの疑問は最もだった。そんなデータは今まで存在しなかった。今後、こういう個体が現れるようだったら、ソ対機側も対策を講じる必要があるだろう。しかし、単純に血管内フィールドの天井を低くすればよいというわけでもない。
血管内フィールドは、毛細血管の壁にナノマシンをプロットすることで構築される。天井を低くすると、それだけ血液が通りづらくなり、同時にソレウス構造体も捕獲しづらくなる。またバイオシールドの構築も平面だからこそ、瞬時に構築することが可能なのであり、フィールドの形を変えて戦いやすくしたとして、複雑な形や曲面構造が生じてしまうとバイオシールドがうまく作動しない。
楽観的に考えるならば、あの個体が特殊だっただけで、今後のソレウス構造体が同じ挙動をするとは限らない。聞けば華山先輩はこちらの考え方で、もし今回のような個体に遭遇したとしても同じ方法で倒せる、と自信を見せた。マドカはもちろん怒ったけど。
「怪我人に介抱させるわけにはいかないですー!」
と喚くマドカだったが、夜道を女の子ひとりで帰らせるわけにはいかない。余程疲れていたのか、酒も飲んでいないのにふらふらで、トレードマークの丸メガネがずれている。辛うじて小さな鼻に引っかかっていた。
時計は0時を回ったところで、外に出ると街に人は少なかった。タクシーがノロノロと僕らの前を通り過ぎていく。その内の1つを捕まえた華山先輩がマドカを中に押し込む。
ドアが閉まって走り去るタクシー。中ではマドカが華山先輩に抱きついて泣いていた。ちょっとめんどくさいけど、決して嫌いにはなれないやつ。横に立つヨウジロウは真鍮のジッポーを取り出すと、タバコに火をつけた。蒸し暑い夜。
「コウジ、ちょっと付き合ってよ」
ヨウジロウが紫煙を夜空に吹き上げながら言った。僕とヨウジロウは少し歩いて、爛々と光るやかましい建物の前にたどり着いた。
「ヨウジロウ、パチンコ打つの?」
「打ったことねえ」
ヨウジロウの口元が緩む。近所のパチンコ屋。閉店の時間まであと1時間だと、看板が示していた。ヨウジロウは合理的なやつで、いつも確率がどうとか口癖のようにいうから、期待値を考えれば損しかしないパチンコをするなんて意外だった。
「たまには少ない確率にかけてもいいかなって」
耳を殺しにかかる店内の爆音に負けじとヨウジロウが叫んだ。僕も打ったことなんてなかったけれど、1000円だけ突っ込んだ。酒が入っている時くらい、こういう遊びをしてもいいかなと思ったり。
一定のリズムを保ちつつ発射される鉄球と、眩しい液晶画面を眺めながら、ヨウジロウが呟く。
「マドカって彼女とか居るのかなあ」
無意識に出た言葉だったのだろう。聴いていないフリをした僕をチラ見して、安心したように止めていた手を動かし出した。薄々勘付いてはいたから、意外でもなかったけれど。あれだけ「メガネが楽だから」と話していたヨウジロウがコンタクトに変えた理由に心当たりがあったから。
いつだったか、マドカがふと「ヨウちゃん先輩はコンタクトの方がいいと思う」と言った。きっとマドカ本人も忘れていると思うのだけど、それから程なくしてヨウジロウはコンタクトにした。こいつも可愛いとこあるな、と1つ年上の同期を微笑ましく思った。
少ない確率、ってそういうことなのかな。さっさと告白しちまえよ、思うのだけど。多分、ヨウジロウが思っているほど少ない確率じゃない気もするし。そんなこと考えていると、僕の台でリーチがかかって、当たった。ビギナーズラックってやつか。6000円分くらい得をした。球が止まらなくてあたふたする僕をヨウジロウは羨ましそうに眺める。
結局、ヨウジロウは閉店まで粘った挙句、2000円、スった。落ち込むヨウジロウに儲けの半分を渡す。僕は今日の祝勝会代が浮いたし、ヨウジロウとて1000円ほど得したわけで、悪い遊びではなかった。少し耳が遠くなった僕らは、他愛の無い話をしながら(もちろんマドカの話をするような野暮なことはしない)歩き、大学の側の交差点で別れた。
満ち足りた心地がした。深夜も頑張る長距離運転の大型トラックが、歩道を揺らす。月光は薄雲に乱反射して滲んでいた。今日はよく眠れそうだ。僕ら大学生たちにも夏休みがやってくる。
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エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
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オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ
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