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虚空塔編 最終章
万古不易
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虚空塔はゆっくりと、落ちて来ている。いや、あまりに大き過ぎて遅く見えるだけか。
「やっと私が元に戻って、ハッピーエンドだっていうのに!街が吹き飛んじゃったら何の意味ないよ!頑張ってイヴ!」
《クハハッ!自業自得ではないか!大人しく魔人として、この国を滅ぼしておけば良かったものを!》
私を肩に乗せたイヴは、さぞ面白そうに笑う。
「私は悪者でも、黒幕でもないの!だって主人公なんだから!」
《さて、どうだろうな!与太話はここまでだ!舌を噛むなよ!》
イヴァルアスが飛翔し、暴風を巻き起こしながら虚空塔へ飛ぶ。
《先ずは上の街からだ!》
「どうすんの!?」
《魔法を使え!言え!境界よ閉じよ!送還せよ皇都アルヴァントよ!》
「『境界よ閉じよ!送還せよ!皇都アルヴァントよ』」
唱えると、砕けた空が逆再生のように塞がっていき、天蓋のような街はゆっくりと消えていく。
《その調子だ!全て戻るまで、そのまま集中していろ!》
「塔は!」
《我輩がこの手で食い止める!》
落下する塔の真下に辿り着くと、イヴァルアスはその三つの首を巻きつけ、しがみついた。
イヴァルアスは羽ばたきながら虚空塔を抑え、ゆっくり下降していく。
その巨体なら、塔の先端は軽く覆うことが出来るけど、とてもじゃないけど持ち上げる事は出来そうにない。
「魔法でどうにかならないの!?」
《この塔は、外からの魔力の干渉は殆ど受け付けん!闇の門にも入らん!》
「魔法って万能じゃないの!?」
《出来るなら我輩はすぐに元に戻っておるわ!魔法で、そう作られた物はどうにもならん!》
そうこうしている内に、天蓋の街は消え、残るは虚空塔だけになった。
「終わったよ!」
《あとは気合いだ!残り魔力を全て我輩に注げ!》
「了解!」
《クハハハハッ!悪竜王ともあろうものがこんなものに潰される訳には行かんのでなぁぁ!!》
「飛べぇぇぇ!イヴァルアァァァァァス!!」
《ォォォォオオオオオ!!》
イヴァルアスの翼は紫の炎を纏い、その身には赤紫の光が宿った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
私の全身全霊の魔力を注ぎ込まれたイヴァルアスは、少しずつ虚空塔を押し返し始める。
「やった……!」
《クハハハッ!我輩にかかればこの程度容易いこと……む……?》
「ちょ、ちょっと、何してるの!?」
少しずつ推力が減っていき、また押され始める。
《クハハ……すまんが、魔力が足りん……いや……吸われておるのか……?》
「何それ、頑張ってってば!ねぇ!」
イヴァルアスの体が霧消する。光と共に元の小さな姿に戻って、私の手の中へ落ちる。
《クハハ……飛ぶ力も残っとらんわ》
「頑張ってよ!落ちるって!もう余計な魔力ないんだから--」
浮力の無い体は、ただ落ちて行く。
《安心しろ--奴が来たようだ》
「奴って--え、嘘でしょ!?」
それだけはまずい!どうにかしなくちゃ……!
「こうなったら、記憶を使うしか--」
「記憶を使うのは禁止と言ったじゃろうが!この馬鹿娘ぇぇ!」
「え……うわぁぁぁ、出たぁぁぁ!」
私を抱きとめたのは、筋骨隆々の老爺。
「出たとはなんじゃ!助けに来たのじゃぞ!」
それは他でも無い。
「マヌ爺だぁぁぁ!!」
かつての王にして英雄、そして私にとっては絶対に会いたく無い雷爺さん。
「そうじゃ、マヌーチェフルじゃよ、おいおいどうした?泣くほど嬉しいのか?」
やばいやばいやばいやばい、間に合わなかった!!
どうする!追い出された時より絶対に痛い拳骨を食う事になる!間違いない!しかも怒られる!やばい!
「だ、だって、私……怒られ……」
「何を言っとるんじゃ、お前は塔を止めようとしたのじゃろ?後は任せい」
「へ……?」
飄々としたマヌ爺が、いつになく真面目な顔で私を抱えていた。
「うーむ……これは、もうどっかに落とすしか無いの!よし!頼むぞスルシュ!」
凄まじい斥力で投擲され、マヌ爺は空気を蹴って落下する虚空塔へ向かう。
「ちょっ!投げるなぁぁ!!」
大事な孫じゃないのか!
「あぶねぁーな!おどしたらどうすんだ、こばがだれ!」
緑の翼に黄色い髪の毛の子供に、受け止められる。
なんか……めちゃくちゃ訛ってる?
「あどは……爺っちゃんにまがせでおげ」
何弁だろ……というかこの世界の方言って……。
「落とすって……どうするつもり?」
「一番近ぐで早ぐ着地……あの建物だべな」
スルシュと呼ばれた子供が指差したのは、半壊したアドルノ寮だった。
「え、ちょっと、それはまずいって言うか、私の部屋が今度こそ跡形も無くなるというか」
「聞げ、全では、書板の記す天命のままに。あぎらめろ」
スルシュは偉そうに私へ語る。
「いや、いやいや!そんな事言われても!やめてぇぇぇぇぇ!」
「行くぞぉぉぉぉぉぉ!よいしょぉぉぉぉぉぉ!」
マヌ爺は虚空塔の先端を掴むと、アドルノ寮へ向けて引いた。
そもそも、手でそんな事をできるのかとか、なんで爺さん空飛んでんだよとか、どうやって衝撃を防ぐんだとか、そんなツッコミは、一切通用しない。
ただ、引っ張って落ちる。それだけで虚空塔の巨大な質量の移動は進路を変え、アドルノ寮へ落ちて行くのだから。
「ぁぁぁぁあああああ!!」
我が家が!今度は床も壁も無くなってしまう!私が描いた完全無欠のハッピーエンドがぁぁ!!
「ふんぬぉぉおぁお!!」
虚空塔はマヌ爺を下敷きにして、アドルノ寮を破壊しながら停止した。
そして私の部屋は跡形も無くなった。
「やっと私が元に戻って、ハッピーエンドだっていうのに!街が吹き飛んじゃったら何の意味ないよ!頑張ってイヴ!」
《クハハッ!自業自得ではないか!大人しく魔人として、この国を滅ぼしておけば良かったものを!》
私を肩に乗せたイヴは、さぞ面白そうに笑う。
「私は悪者でも、黒幕でもないの!だって主人公なんだから!」
《さて、どうだろうな!与太話はここまでだ!舌を噛むなよ!》
イヴァルアスが飛翔し、暴風を巻き起こしながら虚空塔へ飛ぶ。
《先ずは上の街からだ!》
「どうすんの!?」
《魔法を使え!言え!境界よ閉じよ!送還せよ皇都アルヴァントよ!》
「『境界よ閉じよ!送還せよ!皇都アルヴァントよ』」
唱えると、砕けた空が逆再生のように塞がっていき、天蓋のような街はゆっくりと消えていく。
《その調子だ!全て戻るまで、そのまま集中していろ!》
「塔は!」
《我輩がこの手で食い止める!》
落下する塔の真下に辿り着くと、イヴァルアスはその三つの首を巻きつけ、しがみついた。
イヴァルアスは羽ばたきながら虚空塔を抑え、ゆっくり下降していく。
その巨体なら、塔の先端は軽く覆うことが出来るけど、とてもじゃないけど持ち上げる事は出来そうにない。
「魔法でどうにかならないの!?」
《この塔は、外からの魔力の干渉は殆ど受け付けん!闇の門にも入らん!》
「魔法って万能じゃないの!?」
《出来るなら我輩はすぐに元に戻っておるわ!魔法で、そう作られた物はどうにもならん!》
そうこうしている内に、天蓋の街は消え、残るは虚空塔だけになった。
「終わったよ!」
《あとは気合いだ!残り魔力を全て我輩に注げ!》
「了解!」
《クハハハハッ!悪竜王ともあろうものがこんなものに潰される訳には行かんのでなぁぁ!!》
「飛べぇぇぇ!イヴァルアァァァァァス!!」
《ォォォォオオオオオ!!》
イヴァルアスの翼は紫の炎を纏い、その身には赤紫の光が宿った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
私の全身全霊の魔力を注ぎ込まれたイヴァルアスは、少しずつ虚空塔を押し返し始める。
「やった……!」
《クハハハッ!我輩にかかればこの程度容易いこと……む……?》
「ちょ、ちょっと、何してるの!?」
少しずつ推力が減っていき、また押され始める。
《クハハ……すまんが、魔力が足りん……いや……吸われておるのか……?》
「何それ、頑張ってってば!ねぇ!」
イヴァルアスの体が霧消する。光と共に元の小さな姿に戻って、私の手の中へ落ちる。
《クハハ……飛ぶ力も残っとらんわ》
「頑張ってよ!落ちるって!もう余計な魔力ないんだから--」
浮力の無い体は、ただ落ちて行く。
《安心しろ--奴が来たようだ》
「奴って--え、嘘でしょ!?」
それだけはまずい!どうにかしなくちゃ……!
「こうなったら、記憶を使うしか--」
「記憶を使うのは禁止と言ったじゃろうが!この馬鹿娘ぇぇ!」
「え……うわぁぁぁ、出たぁぁぁ!」
私を抱きとめたのは、筋骨隆々の老爺。
「出たとはなんじゃ!助けに来たのじゃぞ!」
それは他でも無い。
「マヌ爺だぁぁぁ!!」
かつての王にして英雄、そして私にとっては絶対に会いたく無い雷爺さん。
「そうじゃ、マヌーチェフルじゃよ、おいおいどうした?泣くほど嬉しいのか?」
やばいやばいやばいやばい、間に合わなかった!!
どうする!追い出された時より絶対に痛い拳骨を食う事になる!間違いない!しかも怒られる!やばい!
「だ、だって、私……怒られ……」
「何を言っとるんじゃ、お前は塔を止めようとしたのじゃろ?後は任せい」
「へ……?」
飄々としたマヌ爺が、いつになく真面目な顔で私を抱えていた。
「うーむ……これは、もうどっかに落とすしか無いの!よし!頼むぞスルシュ!」
凄まじい斥力で投擲され、マヌ爺は空気を蹴って落下する虚空塔へ向かう。
「ちょっ!投げるなぁぁ!!」
大事な孫じゃないのか!
「あぶねぁーな!おどしたらどうすんだ、こばがだれ!」
緑の翼に黄色い髪の毛の子供に、受け止められる。
なんか……めちゃくちゃ訛ってる?
「あどは……爺っちゃんにまがせでおげ」
何弁だろ……というかこの世界の方言って……。
「落とすって……どうするつもり?」
「一番近ぐで早ぐ着地……あの建物だべな」
スルシュと呼ばれた子供が指差したのは、半壊したアドルノ寮だった。
「え、ちょっと、それはまずいって言うか、私の部屋が今度こそ跡形も無くなるというか」
「聞げ、全では、書板の記す天命のままに。あぎらめろ」
スルシュは偉そうに私へ語る。
「いや、いやいや!そんな事言われても!やめてぇぇぇぇぇ!」
「行くぞぉぉぉぉぉぉ!よいしょぉぉぉぉぉぉ!」
マヌ爺は虚空塔の先端を掴むと、アドルノ寮へ向けて引いた。
そもそも、手でそんな事をできるのかとか、なんで爺さん空飛んでんだよとか、どうやって衝撃を防ぐんだとか、そんなツッコミは、一切通用しない。
ただ、引っ張って落ちる。それだけで虚空塔の巨大な質量の移動は進路を変え、アドルノ寮へ落ちて行くのだから。
「ぁぁぁぁあああああ!!」
我が家が!今度は床も壁も無くなってしまう!私が描いた完全無欠のハッピーエンドがぁぁ!!
「ふんぬぉぉおぁお!!」
虚空塔はマヌ爺を下敷きにして、アドルノ寮を破壊しながら停止した。
そして私の部屋は跡形も無くなった。
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