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地下迷宮と馬鹿騒ぎ
第22話 館というのは爆破されるもの
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「これは、ちょっと面倒な事になってるね」
肩をすくめる奴の視線の先には、大人よりかいくらか大きい蜥蜴が何匹も。
逃げ込んだ先は先程訪れた、赤黒い煙の立つ大部屋だった。
「あれどう思う?」
指差す先には、いくつもの白骨。
人の物から骨の山と白い殻、あと同じく真っ白な楕円形の塊がいくつも落ちている。
「あれは…卵…?」
「確かやつらには、すごい繁殖力あるんだよ。下層の一区画がまるごと勢力圏だったり」
「つまり?」
「多分、あそこにいる奴らだけじゃなく、他にも山ほど、この建物の中にいるってわけ……しかもすぐに成長するから……」
そう言って言葉を区切る。
「見つからないように、通り抜けよう」
「今の間は何?」
「もしあそこにある卵、あれ全部がこの建物の中にいるなら、この街に多分、もう逃げ場はない」
なんでこんな事に巻き込まれているんだろうか。
ここファンタジー世界だよね?ハリウッドじゃないよね?……というか。
「いや、地上に出ればいいじゃん」
「えっどうやって」
「乗り物あるでしょ」
「"昇降機"が使えるのかい?」
「使えなきゃ、私みたいな子供、ここいなくない?」
話が噛み合っていないような気がする。
まあ相手に気にするだけ無駄かもしれない。
「ツレを回収したら、私はもう帰るよ、こんなの付き合ってられない」
「でもどうやって?あの蜥蜴達を倒しながら裏口に行くのは難しいんじゃ?」
「大丈夫、話せばわかる」
「ちょ、ちょっと待った、さっきからお話とか何を……」
放置して、蜥蜴達の前に出る。
私に気がつくと直ぐに威嚇し始めたが、それも無視。
《君ら、なんなの?敵》
《人間!言葉がわかるのか!?お前は何者!》
《敵じゃない、私は悪い人間違う》
《あの鱗砕けた!もう自由!》
好き勝手に騒いでいる蜥蜴達。
同時に言っているので殆どノイズだ。
《なんか知らんけど、大変だったんだね》
《竜王様探さなきゃ…》
《あのでかいやつ?》
《あれ、依り代。抜け殻。魔力少なすぎる。我らの姿衰えた》
なるほど分からん。
あの大きいのは自分の事をバックリーだと思ってるし、何なんだ一体。
《それで、何をしたいの?》
《竜王様見つける、我ら蘇った伝える!王宮はどこだ!》
《王宮?知らないよ》
《ディジュラなら王宮ある!なんで知らない!》
《ここ地下だし、多分ディジュラって街じゃないし。地上にも王宮はないよ?》
《地下?ここはどこだ!》
《エルマイス地下迷宮だと思う》
《エルマイス……?そんな、竜王様……》
《取り敢えず、私が帰るのを邪魔しないでもらっていい?》
《我々が蘇ったこと、人間に知られる危ない》
私を取り囲もうとする蜥蜴達。
「危険だ!早く--」
焦りを感じる声を上げた雑魚専。
けど、近づいた蜥蜴達は一向に襲いかかる気配がない。
《違うな、お前は人間じゃあない。竜の匂いがする》
多分イヴの事だろう。
私は人間だ。
《じゃあ、通してもらっていい?早く地上に帰りたいんだ》
《本当に人間じゃないか確かめる。隠してないで魔力を見せろ》
見せろと言われても。
竜にはみんな見えてるもんじゃないの?
それともあいつの目が特殊なのかな。
少なくとも私の黒い魔力光はあいつ以外に見えてないみたいだし。
魔力を見せる……どうやるんだろう?
あ、ここは逆にいや聞いてみよう。
《ちょっと調子が悪くてね。あまり隠し続けてるものだから、出し方を忘れてしまって》
《間抜けな奴。流れを外に向けるだけ》
説明は曖昧。
ただ流れを外に向ける、なのか?
私が出来る事と言ったら『除湿』くらいしかないけど…逆に吐き出すイメージ?
試しに逆流させるようなイメージを浮かべる。
すると蜥蜴達は硬直したまま動かなくなった。
どうだろう?…ダメか?
《どうした?》
《ひっ!!イヴァルアス!!?》
《いや違うけども》
《眷属!眷属だ!》
勝手に騒ぎ始める蜥蜴達。
眷属?私がイヴの?勘弁して。
騒ぎを聞きつけたらしい別の蜥蜴が前に出て平伏する。
《下級の者が失礼を!イヴァルアス様に伝えください!我らは戻ったと》
眷属か、都合が良さそうな展開になってきた。
どの程度偉いのかは知らないが、それっぽく振る舞えばなんとかなりそうだ。
《…分かれば良い。ご苦労、では我々が地上に戻る。邪魔はするなよ》
こんな感じかな?全く知らないけど。
《我々もお供いたします!イヴァルアス様にお会いせねばなりませんので》
《一つ聞きたいのだが、お前らは探し物は得意か?》
《何を探すのですか?》
《大事なものだ》
◆◆◆◆◆◆◆◆
《◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!》
「うおぉぉぉぉぉ」
ティールは相変わらず、人間離れした魔術を行使しつつ、蜥蜴の化け物と戦っている。
そこへ更なる闖入者が混沌を齎した。
目にも留まらぬ速さで、対峙している間に割って入り、着地した衝撃で両者を吹き飛ばす。
「クソッタレェェ!私に傷をつけやがってぇ!」
壁を突き破ってきた二番目の存在。
見た目は少女だ。
だが凄まじい暴風をその身に纏っている。
黄金の魔力光を帯びるその姿、エルマイス学園の関係者でなくても、魔導国に住む者なら、その魔力光を持つものがどういった存在なのかをいやが上にも知らざるを得ない、何故ならば……
「マジかよ…なんで"上"の校長の娘がいるんだよ」
「あいつ来てたのかよ…こりゃ更地になるな」
レイマンはうんざりした様子だ。
どうやら彼も被害者らしい。
ロイドは噂しか知らないし、普段は詰所の奥にいたから、はっきりと見たのは地上で一度きりだった。
実感はないがやはり面倒なのだろうと予想できる。
「フハハッ!その魔力光!そうか君が真犯人の"両刃の斧"だな!」
「あぁ?誰だてめぇ!?」
「私はこの町の秩序だ!」
ティールはレモナの腹部に勢いよく拳を叩き込んだ。黄金の風が彼女の腕にまとわりつくが、涼しげな顔でその暴風を振り払う。
傷一つ負っていない。
「おお~割と使えるようじゃないか?」
「ってぇなクソが!テメェもかよ!」
ティールは次々に繰り出される拳を軽く受け流していく。
「君の歳にしてはよく練られたものだなっ!だが!」
突き出された拳をわずかに逸らして避け、その腕を掴むと、足を引っ掛け、相手をひょいと持ち上げてなげとばす。
「単調すぎるなッ!それが通じるのは自らの力が相手よりも優れている時だけだ!」
そう言って後ろに飛び退くと、立ち上がろうとしていた大蜥蜴を上から踏みつける。
「悪いが大蜥蜴さんよ、私の手柄の為に犠牲になってくれ《七道巡るー」
杖を振ろすかというその瞬間。
「そいつはこっちの獲物だ!!」
強烈な蹴りがティールを打った。
彼女の目が驚いたように見開かれる。
「これは。それをどこで見つけたんだ?」
「拾ったんだよ!」
レモナは何かを足に装備していた。
ロイドにはそれが何かを分からなかったが、その場にいたティールとレイマンはそれをよく知っていた。
「バックリーのヤツ…使えねぇようにしとけって言ったのによ…」
「レイマン?ありゃなんだ?」
「《竜族の具足》だ。誰が名付けたのかは知らんし、作った奴も分からんが、これだけは言える。アレは人の手に余るもんだ」
苦笑いしたレイマンの視線の先で魔力光の奔流がぶつかりあう。
「《風霊よー風の暴威をー解き放て!》
「《七道巡る赤光》」
黄金の魔力光は巨大な矢のように収束し、ティールの放つ赤光とぶつかり合う。
周囲の建築物は衝撃に耐えきれず崩れ去り、通りの石畳が端から吹き飛んでいく。
「楽しいな!"両刃の斧"!私の魔術にここまで拮抗するなんて!凄いぞ!」
「うるせぇ!吹き飛べぇ!!」
出力を増した奔流は混ざり合って爆発を起こした、激しい閃光が一帯を飲み込んでいく。
「レイマンッ!盾だ!盾!」
「間に合うわけねぇだろ!一抜けさせてもらうぜ!《自ら行く手紙》!」
レイマンは盾を放り出して、魔導具で何処かへと姿を消す。
「クソッタレェェ!!」
そして周囲の全ては破壊の波に飲まれた。
肩をすくめる奴の視線の先には、大人よりかいくらか大きい蜥蜴が何匹も。
逃げ込んだ先は先程訪れた、赤黒い煙の立つ大部屋だった。
「あれどう思う?」
指差す先には、いくつもの白骨。
人の物から骨の山と白い殻、あと同じく真っ白な楕円形の塊がいくつも落ちている。
「あれは…卵…?」
「確かやつらには、すごい繁殖力あるんだよ。下層の一区画がまるごと勢力圏だったり」
「つまり?」
「多分、あそこにいる奴らだけじゃなく、他にも山ほど、この建物の中にいるってわけ……しかもすぐに成長するから……」
そう言って言葉を区切る。
「見つからないように、通り抜けよう」
「今の間は何?」
「もしあそこにある卵、あれ全部がこの建物の中にいるなら、この街に多分、もう逃げ場はない」
なんでこんな事に巻き込まれているんだろうか。
ここファンタジー世界だよね?ハリウッドじゃないよね?……というか。
「いや、地上に出ればいいじゃん」
「えっどうやって」
「乗り物あるでしょ」
「"昇降機"が使えるのかい?」
「使えなきゃ、私みたいな子供、ここいなくない?」
話が噛み合っていないような気がする。
まあ相手に気にするだけ無駄かもしれない。
「ツレを回収したら、私はもう帰るよ、こんなの付き合ってられない」
「でもどうやって?あの蜥蜴達を倒しながら裏口に行くのは難しいんじゃ?」
「大丈夫、話せばわかる」
「ちょ、ちょっと待った、さっきからお話とか何を……」
放置して、蜥蜴達の前に出る。
私に気がつくと直ぐに威嚇し始めたが、それも無視。
《君ら、なんなの?敵》
《人間!言葉がわかるのか!?お前は何者!》
《敵じゃない、私は悪い人間違う》
《あの鱗砕けた!もう自由!》
好き勝手に騒いでいる蜥蜴達。
同時に言っているので殆どノイズだ。
《なんか知らんけど、大変だったんだね》
《竜王様探さなきゃ…》
《あのでかいやつ?》
《あれ、依り代。抜け殻。魔力少なすぎる。我らの姿衰えた》
なるほど分からん。
あの大きいのは自分の事をバックリーだと思ってるし、何なんだ一体。
《それで、何をしたいの?》
《竜王様見つける、我ら蘇った伝える!王宮はどこだ!》
《王宮?知らないよ》
《ディジュラなら王宮ある!なんで知らない!》
《ここ地下だし、多分ディジュラって街じゃないし。地上にも王宮はないよ?》
《地下?ここはどこだ!》
《エルマイス地下迷宮だと思う》
《エルマイス……?そんな、竜王様……》
《取り敢えず、私が帰るのを邪魔しないでもらっていい?》
《我々が蘇ったこと、人間に知られる危ない》
私を取り囲もうとする蜥蜴達。
「危険だ!早く--」
焦りを感じる声を上げた雑魚専。
けど、近づいた蜥蜴達は一向に襲いかかる気配がない。
《違うな、お前は人間じゃあない。竜の匂いがする》
多分イヴの事だろう。
私は人間だ。
《じゃあ、通してもらっていい?早く地上に帰りたいんだ》
《本当に人間じゃないか確かめる。隠してないで魔力を見せろ》
見せろと言われても。
竜にはみんな見えてるもんじゃないの?
それともあいつの目が特殊なのかな。
少なくとも私の黒い魔力光はあいつ以外に見えてないみたいだし。
魔力を見せる……どうやるんだろう?
あ、ここは逆にいや聞いてみよう。
《ちょっと調子が悪くてね。あまり隠し続けてるものだから、出し方を忘れてしまって》
《間抜けな奴。流れを外に向けるだけ》
説明は曖昧。
ただ流れを外に向ける、なのか?
私が出来る事と言ったら『除湿』くらいしかないけど…逆に吐き出すイメージ?
試しに逆流させるようなイメージを浮かべる。
すると蜥蜴達は硬直したまま動かなくなった。
どうだろう?…ダメか?
《どうした?》
《ひっ!!イヴァルアス!!?》
《いや違うけども》
《眷属!眷属だ!》
勝手に騒ぎ始める蜥蜴達。
眷属?私がイヴの?勘弁して。
騒ぎを聞きつけたらしい別の蜥蜴が前に出て平伏する。
《下級の者が失礼を!イヴァルアス様に伝えください!我らは戻ったと》
眷属か、都合が良さそうな展開になってきた。
どの程度偉いのかは知らないが、それっぽく振る舞えばなんとかなりそうだ。
《…分かれば良い。ご苦労、では我々が地上に戻る。邪魔はするなよ》
こんな感じかな?全く知らないけど。
《我々もお供いたします!イヴァルアス様にお会いせねばなりませんので》
《一つ聞きたいのだが、お前らは探し物は得意か?》
《何を探すのですか?》
《大事なものだ》
◆◆◆◆◆◆◆◆
《◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!》
「うおぉぉぉぉぉ」
ティールは相変わらず、人間離れした魔術を行使しつつ、蜥蜴の化け物と戦っている。
そこへ更なる闖入者が混沌を齎した。
目にも留まらぬ速さで、対峙している間に割って入り、着地した衝撃で両者を吹き飛ばす。
「クソッタレェェ!私に傷をつけやがってぇ!」
壁を突き破ってきた二番目の存在。
見た目は少女だ。
だが凄まじい暴風をその身に纏っている。
黄金の魔力光を帯びるその姿、エルマイス学園の関係者でなくても、魔導国に住む者なら、その魔力光を持つものがどういった存在なのかをいやが上にも知らざるを得ない、何故ならば……
「マジかよ…なんで"上"の校長の娘がいるんだよ」
「あいつ来てたのかよ…こりゃ更地になるな」
レイマンはうんざりした様子だ。
どうやら彼も被害者らしい。
ロイドは噂しか知らないし、普段は詰所の奥にいたから、はっきりと見たのは地上で一度きりだった。
実感はないがやはり面倒なのだろうと予想できる。
「フハハッ!その魔力光!そうか君が真犯人の"両刃の斧"だな!」
「あぁ?誰だてめぇ!?」
「私はこの町の秩序だ!」
ティールはレモナの腹部に勢いよく拳を叩き込んだ。黄金の風が彼女の腕にまとわりつくが、涼しげな顔でその暴風を振り払う。
傷一つ負っていない。
「おお~割と使えるようじゃないか?」
「ってぇなクソが!テメェもかよ!」
ティールは次々に繰り出される拳を軽く受け流していく。
「君の歳にしてはよく練られたものだなっ!だが!」
突き出された拳をわずかに逸らして避け、その腕を掴むと、足を引っ掛け、相手をひょいと持ち上げてなげとばす。
「単調すぎるなッ!それが通じるのは自らの力が相手よりも優れている時だけだ!」
そう言って後ろに飛び退くと、立ち上がろうとしていた大蜥蜴を上から踏みつける。
「悪いが大蜥蜴さんよ、私の手柄の為に犠牲になってくれ《七道巡るー」
杖を振ろすかというその瞬間。
「そいつはこっちの獲物だ!!」
強烈な蹴りがティールを打った。
彼女の目が驚いたように見開かれる。
「これは。それをどこで見つけたんだ?」
「拾ったんだよ!」
レモナは何かを足に装備していた。
ロイドにはそれが何かを分からなかったが、その場にいたティールとレイマンはそれをよく知っていた。
「バックリーのヤツ…使えねぇようにしとけって言ったのによ…」
「レイマン?ありゃなんだ?」
「《竜族の具足》だ。誰が名付けたのかは知らんし、作った奴も分からんが、これだけは言える。アレは人の手に余るもんだ」
苦笑いしたレイマンの視線の先で魔力光の奔流がぶつかりあう。
「《風霊よー風の暴威をー解き放て!》
「《七道巡る赤光》」
黄金の魔力光は巨大な矢のように収束し、ティールの放つ赤光とぶつかり合う。
周囲の建築物は衝撃に耐えきれず崩れ去り、通りの石畳が端から吹き飛んでいく。
「楽しいな!"両刃の斧"!私の魔術にここまで拮抗するなんて!凄いぞ!」
「うるせぇ!吹き飛べぇ!!」
出力を増した奔流は混ざり合って爆発を起こした、激しい閃光が一帯を飲み込んでいく。
「レイマンッ!盾だ!盾!」
「間に合うわけねぇだろ!一抜けさせてもらうぜ!《自ら行く手紙》!」
レイマンは盾を放り出して、魔導具で何処かへと姿を消す。
「クソッタレェェ!!」
そして周囲の全ては破壊の波に飲まれた。
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