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28 サムウェア・ゼイ・キャント・ファウンド・ミー◆-2
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オルキヌスに錆びついた魔導具の残骸を取り付けて見た目を偽装し、有り合わせの素材でマナ様の靴を作る。
「なにこれ」
手渡された靴を眺めるマナ様。
「靴だ」
「食べる?」
「革靴なら……困った時には──」
「分かった、今、困った、食べる」
噛もうとしたので慌てて止めた。
「た、食べ物がなくなった時だけだ」
そんなに腹が減っていたんだろうか。
「冗談。靴、分かる。食べる、ない」
靴を抱えて悪戯っぽく笑う。
「……オード」
「どうした?」
「ありがとう、嬉しい」
……こんなもので良いのだろうか。
移動の準備が整い、ガラクタの山から出る。
風が俺達を撫ぜた。
「風……」
「……外だからな」
下層の市街は、穏やかな風の流れと共に弱いイムラーナが流れていた。
建物や土地が浮遊し、空に島が浮かんでいるような光景が広がっている。
それぞれの土地は、イムラーナに流されないように巨大な錨と鎖で繋がれ、鎖の上に取り付けた階段を行く人の姿もある。
帝国下層の街並みは、イムラーナの光を纏う巨大な風車塔を中心に円形に広がっていて、それらが何層にも重なり、混沌とした姿をしていた。
「あれ…なに?」
その浮島の底に光る、クラゲのような帯を指差すマナ様。
「アポレミア……厳密に言えば、あれも機海獣らしい」
「そうなんだ……」
どれも初めて見るらしいマナ様に、説明しながら歩く。
俺達の後ろを錆び塗れの装甲に覆われたオルキヌスがゆっくりと歩いていた。
「これ…降りる……?」
下方の島に続く鎖の上の階段を前に、マナ様は俺を見る。
「大丈夫だ、ほら手を」
「う、うん……あ!」
ゆっくりと降り始めた俺達の近くを、アシカのような機海獣が通り過ぎた。
「アシカ…!見た?あれ…ケトス?」
階段に尻込みしていたのが嘘のようにはしゃいで聞くマナ様。
「この街ではあれが主な交通手段だ」
人々は小型の機海獣の背中、或いは中型のマナティやジュゴンのような機海獣の引く荷車に乗って、中空を行き交う。
「…全然…知る、なかった……知らなかった」
「貴族の中には下層のことを全く知らない人もそれなりにいる、マナ様はずっと上から来たんだから仕方ない」
「上……遠い」
遥か上空には、上層の貴族街や大聖堂、そして宮殿が浮かんでいる。
上層は鎖で繋がれていない。
下層市街から行くには、風車塔を通じてイムラーナを利用する他無く、帝国臣民の殆どは眺めるだけの存在だ。
「あんな上にあるから、いつも寒いんだろ」
「だから…涼しいだった…?」
目を丸くして聞いてくるマナ様。
「なんであんな高さまで浮かべたんだか」
「馬鹿は、煙。高い…場所に行く、一緒」
「どこでそんな言葉覚えたんだ?」
「……お父様」
「陛下もそんなこと言うんだな、やっていることはともかく、鷹揚な……落ち着いた言葉しか使わないような人だった気がするが」
俺達からすると熱心な宗教家だった陛下がそんな言葉を言うとは思えなかった……マナ様に対する仕打ちを考えると、実は苛烈な人間だったとしても、おかしくは無いのだが。
「お父様…言う。貴族…煙」
「ああ、そう言うことか」
上に登りたがる煙、というのは貴族街の連中だったわけだ。
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