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21 フェイキン・イット◇-2

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 白骨を纏った青い鮫のような機海獣から、声が聞こえた。

「陛下の機体を強奪して逃げるとは、下手人は貴殿らか?」

「他をあたれ。こちらは第三王子の命令で行動している」

「なら何故我々から逃げる?」

「名乗れ、話はそれからだ」

「私は帝国騎士、七元徳が一人。《遁走曲フーガ》と申す。さて、こちらが名乗ったのだ、其方は?」

「……オード。ただの騎士だ」

「聞き違いでなければ、この間除名された──」

「俺はマナ様の騎士。それ以上でも以下でもない。ここは行かせてもらうぞ」

「そうか──ならば役割を果たさせて貰う!」

 突然加速した鮫の機海獣が、私達に襲いかかる。

「掴まれ!」

 オードが咄嗟に機体を急降下させて、鮫の牙から逃れた。

「一撃躱した程度で、このフーガから──」

「油を売っている暇はない」

 急加速して引き離そうとする。

「逃げられると思うなよッ!」

 けれど相手も手練れらしく、遅れる事なく追跡して来ている。

「騎士は、なんで…私達…追う?」

「誰かが俺達に罪を着せている……か、他の王子達がマナ様を利用しようとしているか……」

「なんで…私?」

「聖女は権力の象徴だからな」

「……そう」

 この国に愛着なんてないし、他の兄弟姉妹なんて殆ど顔を合わせた事が無い。

 私にはやらなきゃならない事があるんだから──

「──それで本気で逃げているのかッ!」

 フーガとかいう人の声が響く。

 機体に掠ったのか、座席は大きく揺れる。

「まだ付いてくるか……!」

「速度だけが取り柄の旧式が私の《モルス・ケルタ》から逃げられるとでも?」

「《死は確実》……か、嫌な名前だな」

 私には分からなかったけれど、オードは知っている言葉らしい。

「お前達の死の名前だ!」

「寝言を──!」

 鮫の牙を紙一重で躱したオードは、さらに加速させる。

 凄まじい速度で空の景色が流れ、座席はさらに酷く揺れる。

「わっ、お、オード!」

「我慢してくれ!」

 追手の機海獣から大量の何かが放たれるのが見えた。

 それは光の尾を引く、小さい魚のような。

「オード!何か…来る!」

「捕鯨砲だ、当たれば捕まる」

「どうする?」

「遠距離武装があれば撃墜するところだが」

 オードは額に少しだけ汗をかいていた。

 それだけ集中しているんだろう。

「ない?」

「近接武器以外、全て外されている」

「じゃあ……」

 もう無理……なの?

「……直接切る」

 まだ方法はあったらしい。

 渋っているのは間違いなさそうだけれど。

「……えっ」

「切る。他に一掃する手はない」

「できる?」

「俺を誰だと思っている」

 言い切る彼は頼もしい。彼がそう言うなら、私は彼を信じよう。

「オードは、私…騎士」

 私の騎士が出来るというのだから。

「……しっかり、掴まっててくれよ」

「何する…つもり?」

「見せてやるよ。ちょっとした曲芸を……な」

 機体は上空に向かって上昇し始めた。


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