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第3部
34 亡者-2
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◆◆◆◆◆◆◆◆
私は、あの日の姿に戻った。
「お祖母様」
目の前に寝かされているのは、あの日の死の寸前の祖母だった。
「……クララ?どうしたのかしら?そんな顔をして……ここは……?」
「……言わなければ、いけないことがあります。私は罪を犯しました、あらかじめ定められているものを曲げてしまったのです」
「……そう……ね、でも、ちゃんと反省したのね、偉いわ、クララ。罪を犯しても、それを悔い改める事が大事……なの。ああ、ごめんなさい、少し、眠らせて……なんだか、とても眠いの。……アルサメナはそそっかしいから、ちゃんと面倒を見るのよ……ダリウスは真面目すぎるから、気を抜けるように……クララ……貴女は自由に……聖女になんて、ならなくても……あなたは、私達の……光……だから」
「お祖母様」
「……長かった、これで、漸く"終われる"」
お祖母様はゆっくり目を閉じて、二度と開くことはなかった。
彼女の望みは……結局、自らの死だったのだろう。
「行きましょう、獣さん」
「大丈夫か?」
「はい。これで全てに決着をつけます」
◆◆◆◆◆◆◆◆
瘴気で曇った暗黒の空に空いた空洞の下。
「……これで、終わりですね」
この戦争と二人の融合で、生贄は十分だ。
「《──その者は寛容である》」
「《情け深く/妬まず》」
「《高ぶらず/誇らない》」
「《不作法をせず/利益を求めない》」
「《いらだたない/恨みをいだかない》」
「《不義を嫌い/真理を喜ぶ》」
「《すべてを忍び/すべてを信じ》」
「《すべてを望み/すべてを耐える》」
「その詠唱は……」
「アリアの記憶から引き出したものです」
「どうにかなるのだな?」
「ええ、これで──」
「これで、漸く」
「──"女神の完全な召喚が達成されます"」
「何を……言っているんだクララ?召喚を止めるんじゃなかったのか……?」
「ふ、ふふ、獣さん、ここまで手伝ってくれてありがとうございました!漸くこれで!世界を滅ぼすことができます!」
「どういうつもりで──」
耳障りな轟音と共に、空がガラスのように割れ、女神が降臨する。
泡立ち爛れた肉塊、のたうつ黒い触手、黒い蹄を持つ短い足、粘液を滴らす巨大な口の暗黒の女神の巨体が、闇から降りてくる。
後は──
「《だるぷし、あどぅら、うる、ばあくる》」
「てぃけ、り、り、何を直す?どうしたい?」
「玩具修理者さん、いえ、創造主よ。貴方方の娘である私が人間なのは、おかしいですよね?私と女神を混ぜて、直してくれませんか?あ、見た目はなるべく人に近くしてください、肉塊とか嫌なので」
女神と私を、玩具修理者に頼んで混ぜるだけだ。
「わかった」
悍ましい見る目に耐えない物体、穢らわしい女神は、悉く分解されて、私に組み込まれていった。
痛みはなかった。もうそれを感じるような感覚は、ないのだろう。
私は元々、人間じゃなかったのだから。
修理は速やかに行われ、獣さんが唖然としている目の前で、私は神性を手に入れた……いや、取り戻した。
「おわった」
「ふ、ふふ、あそこまでバケモノにならなくて良かったです、まあ、ちょっと触手とかついてますけど」
髪の毛はとても伸びて黒く染まり、その先端の方は殆ど触手になった。
頭には山羊のような角が生えてしまった。
肌の色は特に変わった様子はない。
かなり背が伸びた気がする。
「おまけ、これを……よし、じゃあ、かえる」
7本の角で出来た冠を、私の頭へ乗せ玩具修理者は消えた。
「さぁ、めでたく私が《獣の王》に"戻った"ところで。獣さん。今、私を殺さなければ、この世全ての生きとし生けるものは私の力で捻じ曲げられて死ぬでしょう──いえ、"私"を殺さなければ、"クララ"は二度と戻らない」
「──お前、アリアか?」
「私は、私ですよ、あの日の状態に戻せば、呪文を唱えた方へ、戻るに決まっているじゃあ、ないですか。ふふふ、さあ、獣さん。どうしますか?」
「…………」
「ふ、ふふ。選びなさい、クララの命をとるか、世界の存続をとるか。貴方が決めるのです」
「選ぶまでもない──」
「わかってますよね?貴方は──」
私は、あの日の姿に戻った。
「お祖母様」
目の前に寝かされているのは、あの日の死の寸前の祖母だった。
「……クララ?どうしたのかしら?そんな顔をして……ここは……?」
「……言わなければ、いけないことがあります。私は罪を犯しました、あらかじめ定められているものを曲げてしまったのです」
「……そう……ね、でも、ちゃんと反省したのね、偉いわ、クララ。罪を犯しても、それを悔い改める事が大事……なの。ああ、ごめんなさい、少し、眠らせて……なんだか、とても眠いの。……アルサメナはそそっかしいから、ちゃんと面倒を見るのよ……ダリウスは真面目すぎるから、気を抜けるように……クララ……貴女は自由に……聖女になんて、ならなくても……あなたは、私達の……光……だから」
「お祖母様」
「……長かった、これで、漸く"終われる"」
お祖母様はゆっくり目を閉じて、二度と開くことはなかった。
彼女の望みは……結局、自らの死だったのだろう。
「行きましょう、獣さん」
「大丈夫か?」
「はい。これで全てに決着をつけます」
◆◆◆◆◆◆◆◆
瘴気で曇った暗黒の空に空いた空洞の下。
「……これで、終わりですね」
この戦争と二人の融合で、生贄は十分だ。
「《──その者は寛容である》」
「《情け深く/妬まず》」
「《高ぶらず/誇らない》」
「《不作法をせず/利益を求めない》」
「《いらだたない/恨みをいだかない》」
「《不義を嫌い/真理を喜ぶ》」
「《すべてを忍び/すべてを信じ》」
「《すべてを望み/すべてを耐える》」
「その詠唱は……」
「アリアの記憶から引き出したものです」
「どうにかなるのだな?」
「ええ、これで──」
「これで、漸く」
「──"女神の完全な召喚が達成されます"」
「何を……言っているんだクララ?召喚を止めるんじゃなかったのか……?」
「ふ、ふふ、獣さん、ここまで手伝ってくれてありがとうございました!漸くこれで!世界を滅ぼすことができます!」
「どういうつもりで──」
耳障りな轟音と共に、空がガラスのように割れ、女神が降臨する。
泡立ち爛れた肉塊、のたうつ黒い触手、黒い蹄を持つ短い足、粘液を滴らす巨大な口の暗黒の女神の巨体が、闇から降りてくる。
後は──
「《だるぷし、あどぅら、うる、ばあくる》」
「てぃけ、り、り、何を直す?どうしたい?」
「玩具修理者さん、いえ、創造主よ。貴方方の娘である私が人間なのは、おかしいですよね?私と女神を混ぜて、直してくれませんか?あ、見た目はなるべく人に近くしてください、肉塊とか嫌なので」
女神と私を、玩具修理者に頼んで混ぜるだけだ。
「わかった」
悍ましい見る目に耐えない物体、穢らわしい女神は、悉く分解されて、私に組み込まれていった。
痛みはなかった。もうそれを感じるような感覚は、ないのだろう。
私は元々、人間じゃなかったのだから。
修理は速やかに行われ、獣さんが唖然としている目の前で、私は神性を手に入れた……いや、取り戻した。
「おわった」
「ふ、ふふ、あそこまでバケモノにならなくて良かったです、まあ、ちょっと触手とかついてますけど」
髪の毛はとても伸びて黒く染まり、その先端の方は殆ど触手になった。
頭には山羊のような角が生えてしまった。
肌の色は特に変わった様子はない。
かなり背が伸びた気がする。
「おまけ、これを……よし、じゃあ、かえる」
7本の角で出来た冠を、私の頭へ乗せ玩具修理者は消えた。
「さぁ、めでたく私が《獣の王》に"戻った"ところで。獣さん。今、私を殺さなければ、この世全ての生きとし生けるものは私の力で捻じ曲げられて死ぬでしょう──いえ、"私"を殺さなければ、"クララ"は二度と戻らない」
「──お前、アリアか?」
「私は、私ですよ、あの日の状態に戻せば、呪文を唱えた方へ、戻るに決まっているじゃあ、ないですか。ふふふ、さあ、獣さん。どうしますか?」
「…………」
「ふ、ふふ。選びなさい、クララの命をとるか、世界の存続をとるか。貴方が決めるのです」
「選ぶまでもない──」
「わかってますよね?貴方は──」
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