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第1部 

10 決闘

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 広場には様々武器がかき集められていた。
 好きなものを使っていいらしい。

 私は迷わず使い慣れた大きさのものを選んだ。

「後悔させてやる!必ずだ!」

「そうですか、ではよろしくお願いします」

 広場に立つ私の前には、丸腰のアリア。 

「なぜ剣を持たない!私に汚名を着せるつもりか!」

「決闘に代理を立てるなんて当たり前の事でしょう?」

 そう言うと、アリアは周りを囲む群衆の中から一人の戦士を呼び出す。

 その戦士は鉄の仮面を被り、その下の顔は、うかがい知る事は出来ない。獲物は戦斧だった。

 ただ、体躯はそれ程でもなく、背の低い私からしても倍以上ではない。

「見ろよ、あの偽聖女、あんな華奢な身体でいっちょ前に剣なんて持ち出してるぜ?戦士でもない餓鬼が振れるわけ無いだろうに」

「どうせ剣や斧を持ったことがないんだろう、悠々と暮らしていたらしいしな」

 野次が飛んでいる。今に見ていろ、貴様らと同じゴールの血が流れていることを教えてやる。

「それでは決闘を開始する!」

 視線が交差し、数俊の間。

「はじめ!」

「はぁぁぁぁぁあ!!」

 全身に魔力を込め、一足飛びに鉄塊のような大剣を振り上げる。

 鉄がぶつかり合う音が響く。

 斧を構えた男を鎧の上から叩き、吹き飛ばす。

「お、おい、冗談だろ……」

「あの剣ハリボテなんじゃねぇのか……?」

 群衆がどよめいているのが聞こえた。

 見たか、私の剣を。魔力にものを言わせた剛剣を。

 回復魔術が使えず、使う事の許されていない私の魔力は、ただひたすら蓄積され続けるばかり、祖母譲りの途方も無い魔力の使い道は、ほかに無かった。

 小柄な私には、本来なら支える事すら出来ないような鉄の塊も、魔力を駆使すれば降ることは難しくない。すごく重い事には変わらないけど。

「ぉぉぉぉぉ!!」

 鉄塊は一振りで鈍い音を響かせて風を割き、緩慢な動作で防ごうとする男を滅多打ちにする。

「終わりだぁぁぁぁ!!」

 男がよろめいた隙、それを見逃さず私は大きく大剣を振り上げる。

 重さに任せて振り下ろした鉄塊は、男の鉄仮面を二つに割った。

「さあ……降参しなさ……え……?」

 仮面の下にあったのは久々に見た顔だった。

「ダリウスお兄……様?」

 兄の反応はなかった、目は虚ろだった。それこそアルサメナと同じように。

 頭に登った血がスゥーっと引いていくような気がした。

「どうかしましたか?クララさん、決闘を続けてください?」

「どうして……いや、アリア、貴女が……!」

「おや、何のことでしょうか?トドメを刺さなければ無罪とはなりませんよ?もう戦えないのですか?」

 滅多打ちにしてしまった兄は、もう戦えそうにない。その姿を見た私にはもう、剣を振るう事は出来なかった。

 剣は音を立てて落ちた。もう力は入らなかった。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 魔力が霧散していき、私は立っている事が出来なかった。地に伏して謝る事しか出来なかった。

「立て!殺せ!」

「戦え!戦え!戦え!」

 群衆は私達を煽る。

「私には……うぅッ!?」

 足に激痛が走った。

 顔を上げると血の付いた斧を構えた兄が立っていた。

「どうやら、クララ様はもう戦えないようですね!」

 そうして私は決闘に敗北した。
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