カウンター越しの片思い

こつぶ

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幸せな帰り道

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「おつかれ~。」
「あ、お疲れ様ですっ…。」


さっきのことがあり、若干気まずそうな堀ちゃん。
事務室で待っている間に化粧や服も着替えたのかバイト中よりもかわいく見える。



「じゃ、帰ろっか。」
「はい。」



そう言って裏口から二人で出て帰る。
堀ちゃんは駅までいつも歩いて帰るらしく
今日は俺の自転車の後ろに乗せて駅まで送って行くことになった。
(良い子は真似しないでね)



「危ないから俺の腰持っててね。」
「…はい。」


そう言ってぎこちなく腰をつかむ堀ちゃん。

いろいろ初めてなのかな?と変な妄想や想像をしてしまうあたり、
自分が年をとったことと汚れているなと少し落ち込む。


「丸山さんって今まで何人の人と付き合ったことあるんですか?」
「へ?」
「あ、いや…。あたしこういうの初めてで…。
 なんか緊張しちゃって。」
「こんなガチガチの子をチャリの後ろに乗せるのは初めてかな~(笑)」
「もうっ。からかわないでくださいよ。」

「あはは~。でも、悪くないよ。」
「え?」
「堀ちゃんのピュアな感じ、俺好きかも。」

「…!」

「あのさ、これからツバサって呼んでいい?」
「えっ…。」
「せっかく彼氏、彼女になったんだから名前で呼ぼうよ。
 だから俺のことも葵くんって呼んでね(笑)」

「待って。それはちょっと無理です。」
「なんでよー。」
「さすがにいきなりは恥ずかしすぎです。」
「だーめ。最初にこういうの慣れとかないと後から変える方が難しくなるって。」

「じゃあ…葵くん。」
「ん?聞こえない~、もっかい。」

「葵くんっ!」
「っぷはは!本当ツバサ可愛いね。腰持ってる手、めっちゃ熱いよ?」
「もーうっ、あんまりからかわないでよねっ!」
「わりわり~。…はい、そんなこんなで駅つきましたよ、姫♪」
「…!」


すっかり調子を取り戻した俺にたじたじな堀ちゃん。

それでも最後に彼女なりに
勇気を振り絞っていった台詞が可愛すぎて俺は心臓を射抜かれてしまった。
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