数十センチの勇気

こつぶ

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遠くから見てるだけで十分だったのに

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…あ、またあの子と話してる。


誰にも聞かれないように心の中でつぶやく。
同じクラスの神山 暖(カミヤマ ダン)に恋をしてもうすぐ半年。
いまだに話しかけられず遠くから他の女子と楽しそうに話している彼の姿を見て
今日も玉砕しているのは私、市村 メイ。(イチムラ)




「はぁ~。」
「なーに、大きなため息ついてんの。」
「だって…。」


「あー、あれね。早くメイも神山くんにアタックしなさいよ。」
「そんなこと言われたって…。」



そう言って私の背中を叩くのは親友の中島 リツ(ナカシマ)。
煮え切らない私に半ばため息混じりに返事をする。





―――キーンコーン…




今日も特に何もない一日が終わる。
HRも終わり帰り支度をする私。



そんな私に担任が不意に話しかけてきた。



「おー、市村。お前ちょっとこの教材運ぶの手伝ってくれ。」
「げっ…。」
「なんだ、その返事は。いいだろ~。
 ついでにこの前の授業休みだったから教えてやるよ。」
「(何もないと思っていたのに最悪な日になってしまった…。)」



私の席が一番隅の入り口に近い席なせいでこんなことになってしまうなんて。
今日は神山くんが女子と話してるのを目撃してしまうし、
ついてないな…と担任の置いていった教材を持ち上げようとした時、
ふいに私の隣から聞き覚えのある声が聞こえた。
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