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20受け身の才能
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ゴブリンがリストに向かって棍棒を向けている。
その殺気に包まれた全身は、まるで死神のような恐怖心すら掻き立てる。
「どうした? 早くかかってこい」
鋭い目つきでそういうゴブリンは顔をニヤつかせながら語りかける。
そこには優しさも感じる事が出来た。人間に稽古をつけるといった事が新鮮なのだろうか。
どこか嬉しい様子だ。
しかし、リストの方は少し困惑の表情を浮かべている。
「そんな急に言われても……」
「そうか。なら、こちらからいくぞ!」
ゴブリンは片手で持っていた棍棒を両手に持ち替えて、大きく上に振りかぶる。
そして……。
上から一線。リストのちょうど胸辺りにあたるような高さだ。
(ガキィン!)
だがリストはそれを上手くいなした。
棍棒の力を上手く自分からそらすように、木の棒の片方を斜め下にずらしたのだ。
いなされたゴブリンの棍棒は地面へと落ちてゆく。
「ほう、やはりお前はいなすのが上手いな。手加減しているとはいえ、なかなか出来る事じゃないぞ」
「はは。それはありがと。出来れば俺が攻撃する方法とかを教えてもらいたいんだけどな」
「それは……俺の動きを見て考えろ!」
(ブンッ!)
今度は斜め下から上に棍棒がリストを襲う。
明らかに先程より早い。リストは木の棒は間に合わないと考えて体重を後ろにずらして、すんでのところでそれをかわした。
それを見たゴブリンはニヤリとした顔つきで会話を続ける。
「なるほどなるほど。お前は、力の向きを見る目と、体重移動に才能があるようだな」
「そんなもん、何かの役にたつのかよ」
「あぁたつさ。これは俺の戦い方に重要なもんだ。お前さん、俺と似てるよ」
ゴブリンは嬉しそうな顔をしながら、一撃、また一撃と打撃を加えていく。
上から下から横から……縦横無尽に襲いかかる棍棒の連撃はリストの顔を歪ませる。
木の棒で攻撃の軌道を変えたり、体を下げたり横に避けたりと、何とかゴブリンの攻撃を防いで入る。
しかし。
「ハァハァハァ」
「大丈夫か? 息が上がってるぞ」
「大丈夫じゃ、ねぇよ」
肩を上下させて空気を吸い込むリスト。
彼の体力は早くも限界である。いや、むしろレベル3でゴブリンの連撃をここまで防いだ事は賞賛に値するであろう。
(何とか攻撃を防げたが、このままじゃラチがあかねぇ)
真剣に考えるリストを見てゴブリンは攻撃の手を止めた。
棍棒を肩においてその場に座り込んだのだ。
とりあえずはこれで良いと思っているのだろう。話し始めてからもう30分以上は経っている。
修行できる時間は、あと2時間といったところだろうか。
リストは焦っているようで座り込んだゴブリンに話しかけた。
「何座ったんだよ! 俺には時間が……」
「時には休憩も必要だ。それにほら、ステータスを見てみろ」
「え?」
ゴブリンはリストに指をさして先程までの鍛錬の成果を見ろと言ってきた。
正直こんな短時間でレベルは変わってないだろう。そんな顔で自分のカードを見たリストは驚嘆する。
名前【リスト】
職業【無職】
Lv.10
HP100/100
MP45/45
攻撃力90+20
防御力130+20
速力50
魔力30
●木の棒
全職業に装備可能。
Lv.1から装備可能。
《攻撃力・防御力を20UP》
何とレベルが上がっているではないか。しかも大幅に上がっている。
この短時間の間になぜ?
顎を手に当てるリストを見てゴブリンは笑い出した。
「ハハハ! 驚く必要はねぇよ。レベル60の俺様が直々に教えてるんだ。それに初心者ほどレベルが上がりやすいんだ」
「え、お前そんなにレベル高いのかよ」
「気づいてなかったのか。ハハハ! まぁいい。レベルを2桁まで上げるのは第1段階だ。次は剣術を磨く必要があるな」
「でも、どうするんだよ。力の動きを見る目と体重移動、そんなんで何ができるんだ」
喜んだのもつかの間、リストは再び落ち込んだ。
しかしゴブリンは再び大笑いしながら立ち上がった。鍛錬の再開というところだろう。
「ハハハ! その二つがあれば相手の力を利用できるだろ?」
ゴブリンは、これまでに見せた事がないほど顔をニヤつかせてそう言った。
その殺気に包まれた全身は、まるで死神のような恐怖心すら掻き立てる。
「どうした? 早くかかってこい」
鋭い目つきでそういうゴブリンは顔をニヤつかせながら語りかける。
そこには優しさも感じる事が出来た。人間に稽古をつけるといった事が新鮮なのだろうか。
どこか嬉しい様子だ。
しかし、リストの方は少し困惑の表情を浮かべている。
「そんな急に言われても……」
「そうか。なら、こちらからいくぞ!」
ゴブリンは片手で持っていた棍棒を両手に持ち替えて、大きく上に振りかぶる。
そして……。
上から一線。リストのちょうど胸辺りにあたるような高さだ。
(ガキィン!)
だがリストはそれを上手くいなした。
棍棒の力を上手く自分からそらすように、木の棒の片方を斜め下にずらしたのだ。
いなされたゴブリンの棍棒は地面へと落ちてゆく。
「ほう、やはりお前はいなすのが上手いな。手加減しているとはいえ、なかなか出来る事じゃないぞ」
「はは。それはありがと。出来れば俺が攻撃する方法とかを教えてもらいたいんだけどな」
「それは……俺の動きを見て考えろ!」
(ブンッ!)
今度は斜め下から上に棍棒がリストを襲う。
明らかに先程より早い。リストは木の棒は間に合わないと考えて体重を後ろにずらして、すんでのところでそれをかわした。
それを見たゴブリンはニヤリとした顔つきで会話を続ける。
「なるほどなるほど。お前は、力の向きを見る目と、体重移動に才能があるようだな」
「そんなもん、何かの役にたつのかよ」
「あぁたつさ。これは俺の戦い方に重要なもんだ。お前さん、俺と似てるよ」
ゴブリンは嬉しそうな顔をしながら、一撃、また一撃と打撃を加えていく。
上から下から横から……縦横無尽に襲いかかる棍棒の連撃はリストの顔を歪ませる。
木の棒で攻撃の軌道を変えたり、体を下げたり横に避けたりと、何とかゴブリンの攻撃を防いで入る。
しかし。
「ハァハァハァ」
「大丈夫か? 息が上がってるぞ」
「大丈夫じゃ、ねぇよ」
肩を上下させて空気を吸い込むリスト。
彼の体力は早くも限界である。いや、むしろレベル3でゴブリンの連撃をここまで防いだ事は賞賛に値するであろう。
(何とか攻撃を防げたが、このままじゃラチがあかねぇ)
真剣に考えるリストを見てゴブリンは攻撃の手を止めた。
棍棒を肩においてその場に座り込んだのだ。
とりあえずはこれで良いと思っているのだろう。話し始めてからもう30分以上は経っている。
修行できる時間は、あと2時間といったところだろうか。
リストは焦っているようで座り込んだゴブリンに話しかけた。
「何座ったんだよ! 俺には時間が……」
「時には休憩も必要だ。それにほら、ステータスを見てみろ」
「え?」
ゴブリンはリストに指をさして先程までの鍛錬の成果を見ろと言ってきた。
正直こんな短時間でレベルは変わってないだろう。そんな顔で自分のカードを見たリストは驚嘆する。
名前【リスト】
職業【無職】
Lv.10
HP100/100
MP45/45
攻撃力90+20
防御力130+20
速力50
魔力30
●木の棒
全職業に装備可能。
Lv.1から装備可能。
《攻撃力・防御力を20UP》
何とレベルが上がっているではないか。しかも大幅に上がっている。
この短時間の間になぜ?
顎を手に当てるリストを見てゴブリンは笑い出した。
「ハハハ! 驚く必要はねぇよ。レベル60の俺様が直々に教えてるんだ。それに初心者ほどレベルが上がりやすいんだ」
「え、お前そんなにレベル高いのかよ」
「気づいてなかったのか。ハハハ! まぁいい。レベルを2桁まで上げるのは第1段階だ。次は剣術を磨く必要があるな」
「でも、どうするんだよ。力の動きを見る目と体重移動、そんなんで何ができるんだ」
喜んだのもつかの間、リストは再び落ち込んだ。
しかしゴブリンは再び大笑いしながら立ち上がった。鍛錬の再開というところだろう。
「ハハハ! その二つがあれば相手の力を利用できるだろ?」
ゴブリンは、これまでに見せた事がないほど顔をニヤつかせてそう言った。
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